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第二章

8 その温もりに、ふわふわとして。

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 一緒に出かけませんか、とカレンがジョンズワートに言ってしまった日から、数日が経過した頃。
 ジョンズワートが、自分とカレンを共に午後は休暇とした。
 何故って――デートするためである。

「カレン。今日の午後は、一緒に出かけよう」

 デュライト公爵邸のダイニングにて。
 揃って食事を取っていたとき、急にそんなことを言われたカレンは食べ物を喉に詰まらせそうになって。
 慌てたジョンズワートにとんとんと背中を叩いてもらい、ことなきを得た。
 夫婦でなくてもできる、軽い触れ合いだったが……。それだけでも、カレンの心に明かりが灯った。そんな気分だった。

「大丈夫かい? ごめんね、僕が驚かせるようなことを言ったから」
「いえ……。ありがとうございます、ジョンズワート様」

 まだ少し苦しかったが、カレンはジョンズワートに笑顔を見せた。
 だって、誘ってくれたことと、こうして心配してくれたこと、触れてくれたことが、とても嬉しかったから。
 ジョンズワートもカレンの背に触れたまま、笑みを返す。
 背中から伝わる温もりが、手のひらから伝わる体温が。二人の気持ちを高揚させた。

「それで、ええと……。一緒にでかけよう、というのは」
「ほら、この前、一緒にどうかと誘ってくれたよね? 実は僕は、きみと一緒に出かけていいのかどうか、ずっと迷っていてね。でも、きみがああ言ってくれたから、誘う勇気が出たんだ。どうかな、カレン。……僕と、デートしてくれませんか?」

 カレンの背に置かれていたジョンズワートの手は、今度はカレンの手を取って。
 少し恥ずかしそうにはにかんで、そんなことを言うものだから。

「はい。……喜んで!」

 カレンもまた、自分の気持ちに素直になって、そう答えた。
 迷っていた、勇気が出た、デート。そんな言葉が聞けた喜びで、声が弾んでしまう。
 普段のカレンなら、彼が気を遣ってるだけだと思い、誘いを断っていたかもしれない。
 けれど、今は彼に触れられているから。なんだかふわふわとした心地で、快くジョンズワートを受け入れた。

 そのあとは、二人で食事を取りながら、今日の「デート」についての話をした。
 今までにない楽しさと嬉しさで、自然とカレンの表情も明るくなる。
 デュライト邸に来てからの彼女は、いつもどこか苦しげで、笑顔も少なかった。
 そんな彼女が楽しそうに自分と話してくれるものだから、当然、ジョンズワートの気持ちも上昇する。

 ああ、彼女をデートに誘ってみてよかった。
 自分も一緒に行ってよかったんだ。
 これからは、もっと一緒に過ごしたい。
 8年の間に離れてしまった距離を、少しずつ縮めていきたい。
 
 食事と身支度を終えたジョンズワートは、そんな思いとともに、カレンの手を取って馬車に乗りこんだ。
 
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