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2 お孫さんに、みんなメロメロ。

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 アーネスト領の雪まつりへ行く日がやってきた。
 1週間ほどかけて行われる盛大なものだから、その日の催しとジョンズワートの予定の両方を考慮して、日程を決めた。
 気兼ねなく過ごすため、今日は丸一日休みにしてある。

 まずは、カレンの実家でもあるアーネスト家へ。

「じーじ! ばーば!」

 アーネスト伯爵家の玄関にて。
 祖父母を見つけたショーンが満面の笑みで手を振れば、屋敷のどこかから「んんっ……」となにかを堪えるような声が聞こえてくる。
 可愛い可愛いお孫様の登場に、アーネスト家一同、幸せいっぱいである。
 もちろんそれは、ショーンの祖父母であるアーネスト伯爵夫妻も同じで。

「ショーン! いらっしゃい」
「ショーンは本当に可愛いなあ」

 祖父母に順にハグをされ、ショーンはきゃっきゃとはしゃいでいる。
 ジョンズワートはまだ「お父さん」と呼ばれていないが、ショーンがじーじ、ばーば呼びを始めるのは、早かった。
 祖父母の席は元々空いていたから、その呼び方に慣れるのもすぐだった、というだけの話なのだが……。
 実父のジョンズワート、ショーンが家族に馴染めた嬉しさと、自分だけ置いていかれた感で、なんとも言えない気持ちである。

「そうそう。話してあった、ショーンのコートなんだけど」

 カレンの母がそう言えば、コートを持ったアーネスト家の使用人たちがさっと並んだ。
 娘夫婦が孫を連れて雪まつりに来ると聞き、じいじとばあばは大喜び。
 雪まつり用に、三人揃いの防寒具を用意すると言い出したのである。
 だから、ショーンだけでなくカレンとジョンズワートの分もあるのだが……。
 先ほど、はっきりと「ショーンのコート」と言っていた。孫のショーンがメインなのである。
 もちろん、娘とその夫も大事な存在だ。
 しかし、「ばあば」の気持ちの相当な割合が、孫に向いていた。


「まあ~! やっぱり可愛いわあ! 用意してよかった!」

 アーネスト夫妻に贈られた防寒着を、それぞれ身に着ける。
 青を基調とし、白も取り入れたコートと帽子。
 帽子は耳を守れるよう、一部が垂れ下がったデザインになっている。
 手袋は、カレンとジョンズワートは黒。ショーンには水色のものが用意された。
 性別や体型に合わせて形は変えてあるが、色や素材はほとんど同じだ。
 用意した当人たちは当然のこと、この贈り物にはカレンたちの気分も高揚し。

「素敵……! ありがとうございます。お父様、お母様!」

 カレンに続いて、ジョンズワートも礼を言う。
 ジョンズワートの父は既に亡くなっており、母ももう隠居状態だから。
 義理であっても、まだまだ現役の両親にこうして贈り物をされたこと、自分たち三人という家族の形を歓迎してもらえることが、本当に嬉しかった。

「ほら、ショーンも」

 お揃いが嬉しくて、両親の周りをぐるぐるしていたショーンも、母の言葉にぴっと立ち止まり。

「じいじ、ばあば、ありがと!」

 母の足元でそう言えば、その場が温かさで包まれた。
 耐えきれず、ショーン様可愛い……と小さくこぼすメイドまで現れる状態である。
 ここは室内、それもアーネスト伯爵家であるから、雪国の冬であっても寒くはないのだが……。
 それとはまた違った種類の温もりを、ショーンはみなに届けた。



「それでは、いってきます」
「ああ、気を付けて」

 アーネスト夫妻に見送られ、カレンたちは雪まつりへと向かう。
 公爵様とその妻子が人混みに行くわけであるから、もちろん護衛も数名ついている。
 ただし、なるべく家族三人で楽しみたいため、観光客にまぎれてもらう形だ。
 三人お揃いの服を着てお祭り、というシチュエーションにはしゃいだショーンが駆けだそうとするものだから、ジョンズワートは息子を抱き上げてそれを制した。
 活発な息子を捕まえて、夫婦は顏を合わせて苦笑した。

「さあ、行こうか」
「はい」
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