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春
3 あなたが、触れてくれるから。
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ショーンとともにホーネージュに戻ったカレン。
彼女は、今。4年ぶりの貴族としての生活と、奥様としての仕事に慣れるために奮闘していた。
カレンは伯爵家の生まれだが、4年も農村にいた。そのうちに、すっかり村での暮らしに馴染んでしまったのである。
奥様としては新米のままホーネージュを離れてしまったこともあり、覚えることも思い出すこともたくさんある。
ジョンズワートの計らいで、しっかり補佐もついているし、戻ってきたばかりのカレンにあまり負担がかからないよう調整もしてもらえているのだが……。
それでも、公爵夫人に戻るには、それなりに苦労しそうだった。
「奥様、髪が伸びてきましたね」
「ええ。このまま伸ばしていこうと思うの」
「きっと、旦那様もお喜びになられます」
「やっぱり、サラもそう思う?」
「はい。よく触っておられますもの」
カレンの髪を丁寧にくしでときながらそう言うのは、今もカレンの侍女をつとめるサラだ。
ラントシャフトでは、村に住む普通の女として暮らしていたから、貴族だった頃のように髪の手入れをするのは難しかった。
だから腰まで届く髪を切り落とし、肩につくかどうかの長さにしていた。
しかし、ジョンズワートに再会してからのカレンは、また髪を伸ばし始めていた。
今なら手入れが行き届くから、というのも、理由の1つであるのだが……。
それよりも大きな理由があった。ジョンズワートである。
ジョンズワートは、カレンの髪を触るのが好きだ。
4年前は最低限の接触しかしなかったのに、今ではよく髪に触れてくる。
優しく撫でたり、ひと房とってキスを落としたり。
あんなにも愛おしそうに、嬉しそうに触られたら、彼が好いてくれるこの髪を、伸ばし直したいと思うのも無理はないだろう。
カレンがジョンズワートのために髪を伸ばそうとしていることを、サラもわかっているようで。
「旦那様が病みつきになるぐらい、つやつやさらさらにしてみせます!」
と意気込んでいる。
「もう、サラったら」
思わず、カレンはくすくすと笑ってしまった。
ラントシャフトからホーネージュに戻るあいだ、ジョンズワートから聞いたことだが、サラは昔から世話焼きだとかで。
父を亡くしたジョンズワートを支えた、というのも本当だそうだ。
その時期、あまりの多忙さや悲しみから、外部の女性と親しくする機会は少なかったから。
そんな中でもジョンズワートの近くにいられるサラとの噂が発生してしまったのだろうと、ジョンズワートは話していた。
カレンも知っていることだが、恋仲であるなど事実無根。本当に、ただの噂にすぎず。
サラはそういう性格なだけで、相手がジョンズワートじゃなくたって、こうして親切にしてくれるのだ。
「……サラ。ありがとう」
「そんな、奥様! 私は奥様の侍女なのですから、当然のことです!」
恐縮するサラを見て、ふふ、と笑みをこぼしながら。カレンは、そっと自分の髪に触れた。
今では、自分でそうするよりも、ジョンズワートに触られることが多い、亜麻色の髪に。
サラが丁寧に手入れしてくれるから、今だって十分に綺麗で、指通りもいい。
このまま、前のような腰まで届くほどの長さになったら。
ジョンズワートはもっと喜んでくれるだろうか。もっともっと触ってくれるのだろうか。
そんなことを考えてから、ジョンズワートがそばに居ること、触れてもらえることが当たり前になっていることに気が付き、頬を色づかせた。
彼女は、今。4年ぶりの貴族としての生活と、奥様としての仕事に慣れるために奮闘していた。
カレンは伯爵家の生まれだが、4年も農村にいた。そのうちに、すっかり村での暮らしに馴染んでしまったのである。
奥様としては新米のままホーネージュを離れてしまったこともあり、覚えることも思い出すこともたくさんある。
ジョンズワートの計らいで、しっかり補佐もついているし、戻ってきたばかりのカレンにあまり負担がかからないよう調整もしてもらえているのだが……。
それでも、公爵夫人に戻るには、それなりに苦労しそうだった。
「奥様、髪が伸びてきましたね」
「ええ。このまま伸ばしていこうと思うの」
「きっと、旦那様もお喜びになられます」
「やっぱり、サラもそう思う?」
「はい。よく触っておられますもの」
カレンの髪を丁寧にくしでときながらそう言うのは、今もカレンの侍女をつとめるサラだ。
ラントシャフトでは、村に住む普通の女として暮らしていたから、貴族だった頃のように髪の手入れをするのは難しかった。
だから腰まで届く髪を切り落とし、肩につくかどうかの長さにしていた。
しかし、ジョンズワートに再会してからのカレンは、また髪を伸ばし始めていた。
今なら手入れが行き届くから、というのも、理由の1つであるのだが……。
それよりも大きな理由があった。ジョンズワートである。
ジョンズワートは、カレンの髪を触るのが好きだ。
4年前は最低限の接触しかしなかったのに、今ではよく髪に触れてくる。
優しく撫でたり、ひと房とってキスを落としたり。
あんなにも愛おしそうに、嬉しそうに触られたら、彼が好いてくれるこの髪を、伸ばし直したいと思うのも無理はないだろう。
カレンがジョンズワートのために髪を伸ばそうとしていることを、サラもわかっているようで。
「旦那様が病みつきになるぐらい、つやつやさらさらにしてみせます!」
と意気込んでいる。
「もう、サラったら」
思わず、カレンはくすくすと笑ってしまった。
ラントシャフトからホーネージュに戻るあいだ、ジョンズワートから聞いたことだが、サラは昔から世話焼きだとかで。
父を亡くしたジョンズワートを支えた、というのも本当だそうだ。
その時期、あまりの多忙さや悲しみから、外部の女性と親しくする機会は少なかったから。
そんな中でもジョンズワートの近くにいられるサラとの噂が発生してしまったのだろうと、ジョンズワートは話していた。
カレンも知っていることだが、恋仲であるなど事実無根。本当に、ただの噂にすぎず。
サラはそういう性格なだけで、相手がジョンズワートじゃなくたって、こうして親切にしてくれるのだ。
「……サラ。ありがとう」
「そんな、奥様! 私は奥様の侍女なのですから、当然のことです!」
恐縮するサラを見て、ふふ、と笑みをこぼしながら。カレンは、そっと自分の髪に触れた。
今では、自分でそうするよりも、ジョンズワートに触られることが多い、亜麻色の髪に。
サラが丁寧に手入れしてくれるから、今だって十分に綺麗で、指通りもいい。
このまま、前のような腰まで届くほどの長さになったら。
ジョンズワートはもっと喜んでくれるだろうか。もっともっと触ってくれるのだろうか。
そんなことを考えてから、ジョンズワートがそばに居ること、触れてもらえることが当たり前になっていることに気が付き、頬を色づかせた。
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