魔法少年の君

智美龍

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魔法少年

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『俺、魔法が使えるんだ』

 静かな病院で響いた少年の声。年齢は、私と同じくらいなのかもしれない。
「そう。では魔法使い君」
 ちゃんと彼の方に顔を向けられたのだろうか。
『だからさ。願いなんでも叶えてやるよ。』
 私の話なんて微塵もきいてない。
「ここから出てって貰えますか。人を呼びますよ。」

 結局少年は私の部屋から追い出された。

彼の名前は稲垣いながき暖夏はつひ。私のクラスメートであるとお母さんから聞いた。
 お見舞いに来たのだと。
「そんなのいらない。」
「え、ゆき……そんなに言わなくてもいいのに」
「お母さん話遮ってごめん、でも、」
 話が喉につまってしまった。お母さんの表情が見たい。
 今どんな顔をしてるんだろう。

 そうだった、もう、……見ることなんてできないんだ,
 今も、これからも。もう、……もう、、
「ゆき...大丈夫大丈夫」
 お母さんの暖かい手。お母さんだって、悲しいはずなのに。
 いや、もしかしたら私が見えないだけでお母さんも泣いてるのかもしれない。


ふと、あの少年。いや、稲垣くんが言ってたことを思い出ししまった。
 もし本当に魔法があるのなら、事故で失った光を、もう見ることのできないこの世界を返してくれませんか....
 
 
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