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番外編(side健)
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「健ちゃんって意外と堅い頭してたのね。」
「ケンカ売ってるのか?」
「そうじゃなくてさ。さっき、言ってたじゃん。彼女としかしないって。男ってさ、性欲とか強いじゃない?なのに、そういう風に言い切るってすごいなぁと思って。今まで雰囲気に流されてしたこととかないの?」
「ないね。そもそも俺は奈緒や亮みたいにモテないしな。俺にそういう関係を持ちかけて来るのはおまえくらいだ。」
「でもさ、性欲は人並みにあるんでしょ?それ、どうしてるの?自分で処理してるの?」
「おまえ・・・普通、そんなこと聞くか?ホントに女捨ててるよな、俺の前では。」
なんか男と話してる気分だ。
本当に奈緒は明け透けな質問ばかりしてくる。
これが知り合った頃から続いてるんだから、もう笑うしかないよな。
そう思っていると奈緒がふいに嫌な事を言ってきた。
「ところでさぁ・・・さっきからどうしてこっちを見ないの?」
「へ?」
声が思わず上擦ってしまった。
気付かれていた。
顔を見ない事を。
「そりゃ・・・気のせいだろ。」
「ふーん・・・。」
明らかに疑いを持った声質だ。
「だいたいおまえが横に座るからだろ。横向いて飲むのも体勢がキツイんだよ。普通、正面に座らないか?そしたら・・・。」
俺が言い終わる前に、奈緒は立ち上がり、俺の真正面に座った。
しかも本当に俺の目の前。
テーブルをわざわざ横にずらして。
そして俺を仰ぎ見ていた。
「これでいいんでしょ?」
そう言ってにっこりと笑ってきた。
それを思いっきりまともに見てしまった。
うわぁ・・・反則だって。
奈緒であって奈緒でない顔。
ずっと見られずに目が泳いでしまった。
「ちょっとぉー、なんで目を逸らすのよぉ!」
「いや・・・それはだなぁ・・・。」
「なによぉー。」
そう言って、ただでさえ近い距離をさらに縮めてくる。
「うわっ、バカ!近寄るなって!」
思わず、そう漏らしてしまった。
決して悪い意味ではない。
むしろ・・・・いやいや、そんなはずはない。
これは奈緒、これは奈緒、これは奈緒。
何度も繰り返し、言い聞かせる。
すると奈緒が立ち上がり、俺の鞄を掴むと俺にそれを投げてきた。
「帰れ!そんなに嫌ならさっさと帰れ!もう2度と来るな!」
そう言って、走って自分の部屋に入っていった。
おいおい・・・なんなんだ?
今日の奈緒はやけにヒステリックだな。
いつもだったら、にっこり笑って軽く流すのに。
近寄るなって言ったのだって別に嫌いで言ったわけじゃない。
それにここに来たのも俺の意思ではなく、おまえに無理矢理連れて来られたわけで。
だぁー、奈緒はホントに迷惑な奴だ。
手がかかるっつーか、世話が焼けるっつーか。
はぁ・・・。
気だるげに立ち上がり、奈緒の消えていった部屋へと向かった。
ドアが少しだけ開いていて、それをゆっくりとさらに開く。
部屋の中は、真っ暗。
電気も点いていない。
ただ奈緒の気配だけは奥にある。
「奈緒・・・なにやってんだよ。」
「勝手に入ってこないでよ!それに・・・まだ帰ってなかったの!さっさと帰って。」
口調は刺々しくて強気だったが、声は震えていた。
泣いてる?
暗くて確認ができない。
「奈緒、電気つけるぞ。」
「ダメ!!」
ダメって・・・。
駄々っ子じゃないんだから。
彼女の言葉を無視して、入口にあったスイッチをぱちっと押した。
一気に部屋の中が明るくなる。
その瞬間、奈緒は横にあったベッドに顔を伏せて俺から顔を隠した。
「おーい、奈緒。何イジけてんだよ。いい加減、機嫌直せよ。」
「・・・・・・別にイジけてなんか・・・。」
布団で声がくぐもってよく聞こえない。
奈緒の傍まで近付き、彼女の横へと腰を下ろした。
そして奈緒の頭を軽くぽんぽんと叩き、ベッドを背もたれにして座りなおした。
「いつまでそうやってるつもりだ?」
「健ちゃんには関係ないでしょ。」
「そりゃそうだ。」
頭を後ろに反らすとちょうどベッドが上手い具合に枕代わりになった。
天井を見上げながら奈緒の機嫌をどうやって取ろうか、考えていた。
部屋の中に響くのは、奈緒が鼻をすする音と二人の呼吸。
そういや奈緒って、泣き癖あったっけ?
いやそれよりも奈緒の泣く姿見るのって初めてじゃねぇか?
つーか、なんで泣いてんだ?
俺、泣くようなひどい事したか?
だんだんと頭の中が混乱してきた。
奈緒の家に来てから、全てが変。
俺を筆頭に、奈緒もこの雰囲気も。
ちらっと横目で奈緒を捉える。
相変わらず顔をベッドに埋めて、表情が見えない。
「奈緒、なんで泣いてるか俺にはわからんが、とにかく元気出せよ。いつもの調子でさ。」
すると奈緒はガバッと顔を上げ、思いっきり俺を睨んできた。
そこで初めて奈緒の泣き顔というものを見た。
かわいい顔で睨まれても痛くも痒くもない。
あぁ、また見てしまったよ・・・顔を。
妙な動悸が俺を襲う。
やべぇ・・・マジで好みだわ。
しかも涙目で見られてるし・・・。
「何で泣いてるかですって!?失恋したからに決まってるでしょ!!」
奈緒は体全体で食って掛かってきた。
そこでようやく目の前の人物が奈緒であると再認識させられる。
この容姿で口を開かなければもろタイプなんだけどなぁ。
っつーか、胸倉掴んで、失恋のはけ口にされても困るんだけど。
「失恋なんて今まで何度もしてきただろ?いつもは泣かねーのに、なんで今日、泣いてんだよ。」
「泣くに決まってるでしょ!!初めて私から告ったのよ!?それなのに俺の好みじゃないとか、正反対だとか、挙句に私を拒絶するのよ!?こんなにひどいことってある?もっと他に言い方とかあるでしょ!もう泣かなきゃやってらんないわよ!」
知るかよ、愚痴なら振った奴に言え。
それにしても初めて奈緒から告白したって・・・意外だな。
コイツならがんがん攻めて行きそうなのに。
両手でごしごしと涙を拭いながら、俺を睨んでくる。
だからその涙目がダメなんだって。
「ケンカ売ってるのか?」
「そうじゃなくてさ。さっき、言ってたじゃん。彼女としかしないって。男ってさ、性欲とか強いじゃない?なのに、そういう風に言い切るってすごいなぁと思って。今まで雰囲気に流されてしたこととかないの?」
「ないね。そもそも俺は奈緒や亮みたいにモテないしな。俺にそういう関係を持ちかけて来るのはおまえくらいだ。」
「でもさ、性欲は人並みにあるんでしょ?それ、どうしてるの?自分で処理してるの?」
「おまえ・・・普通、そんなこと聞くか?ホントに女捨ててるよな、俺の前では。」
なんか男と話してる気分だ。
本当に奈緒は明け透けな質問ばかりしてくる。
これが知り合った頃から続いてるんだから、もう笑うしかないよな。
そう思っていると奈緒がふいに嫌な事を言ってきた。
「ところでさぁ・・・さっきからどうしてこっちを見ないの?」
「へ?」
声が思わず上擦ってしまった。
気付かれていた。
顔を見ない事を。
「そりゃ・・・気のせいだろ。」
「ふーん・・・。」
明らかに疑いを持った声質だ。
「だいたいおまえが横に座るからだろ。横向いて飲むのも体勢がキツイんだよ。普通、正面に座らないか?そしたら・・・。」
俺が言い終わる前に、奈緒は立ち上がり、俺の真正面に座った。
しかも本当に俺の目の前。
テーブルをわざわざ横にずらして。
そして俺を仰ぎ見ていた。
「これでいいんでしょ?」
そう言ってにっこりと笑ってきた。
それを思いっきりまともに見てしまった。
うわぁ・・・反則だって。
奈緒であって奈緒でない顔。
ずっと見られずに目が泳いでしまった。
「ちょっとぉー、なんで目を逸らすのよぉ!」
「いや・・・それはだなぁ・・・。」
「なによぉー。」
そう言って、ただでさえ近い距離をさらに縮めてくる。
「うわっ、バカ!近寄るなって!」
思わず、そう漏らしてしまった。
決して悪い意味ではない。
むしろ・・・・いやいや、そんなはずはない。
これは奈緒、これは奈緒、これは奈緒。
何度も繰り返し、言い聞かせる。
すると奈緒が立ち上がり、俺の鞄を掴むと俺にそれを投げてきた。
「帰れ!そんなに嫌ならさっさと帰れ!もう2度と来るな!」
そう言って、走って自分の部屋に入っていった。
おいおい・・・なんなんだ?
今日の奈緒はやけにヒステリックだな。
いつもだったら、にっこり笑って軽く流すのに。
近寄るなって言ったのだって別に嫌いで言ったわけじゃない。
それにここに来たのも俺の意思ではなく、おまえに無理矢理連れて来られたわけで。
だぁー、奈緒はホントに迷惑な奴だ。
手がかかるっつーか、世話が焼けるっつーか。
はぁ・・・。
気だるげに立ち上がり、奈緒の消えていった部屋へと向かった。
ドアが少しだけ開いていて、それをゆっくりとさらに開く。
部屋の中は、真っ暗。
電気も点いていない。
ただ奈緒の気配だけは奥にある。
「奈緒・・・なにやってんだよ。」
「勝手に入ってこないでよ!それに・・・まだ帰ってなかったの!さっさと帰って。」
口調は刺々しくて強気だったが、声は震えていた。
泣いてる?
暗くて確認ができない。
「奈緒、電気つけるぞ。」
「ダメ!!」
ダメって・・・。
駄々っ子じゃないんだから。
彼女の言葉を無視して、入口にあったスイッチをぱちっと押した。
一気に部屋の中が明るくなる。
その瞬間、奈緒は横にあったベッドに顔を伏せて俺から顔を隠した。
「おーい、奈緒。何イジけてんだよ。いい加減、機嫌直せよ。」
「・・・・・・別にイジけてなんか・・・。」
布団で声がくぐもってよく聞こえない。
奈緒の傍まで近付き、彼女の横へと腰を下ろした。
そして奈緒の頭を軽くぽんぽんと叩き、ベッドを背もたれにして座りなおした。
「いつまでそうやってるつもりだ?」
「健ちゃんには関係ないでしょ。」
「そりゃそうだ。」
頭を後ろに反らすとちょうどベッドが上手い具合に枕代わりになった。
天井を見上げながら奈緒の機嫌をどうやって取ろうか、考えていた。
部屋の中に響くのは、奈緒が鼻をすする音と二人の呼吸。
そういや奈緒って、泣き癖あったっけ?
いやそれよりも奈緒の泣く姿見るのって初めてじゃねぇか?
つーか、なんで泣いてんだ?
俺、泣くようなひどい事したか?
だんだんと頭の中が混乱してきた。
奈緒の家に来てから、全てが変。
俺を筆頭に、奈緒もこの雰囲気も。
ちらっと横目で奈緒を捉える。
相変わらず顔をベッドに埋めて、表情が見えない。
「奈緒、なんで泣いてるか俺にはわからんが、とにかく元気出せよ。いつもの調子でさ。」
すると奈緒はガバッと顔を上げ、思いっきり俺を睨んできた。
そこで初めて奈緒の泣き顔というものを見た。
かわいい顔で睨まれても痛くも痒くもない。
あぁ、また見てしまったよ・・・顔を。
妙な動悸が俺を襲う。
やべぇ・・・マジで好みだわ。
しかも涙目で見られてるし・・・。
「何で泣いてるかですって!?失恋したからに決まってるでしょ!!」
奈緒は体全体で食って掛かってきた。
そこでようやく目の前の人物が奈緒であると再認識させられる。
この容姿で口を開かなければもろタイプなんだけどなぁ。
っつーか、胸倉掴んで、失恋のはけ口にされても困るんだけど。
「失恋なんて今まで何度もしてきただろ?いつもは泣かねーのに、なんで今日、泣いてんだよ。」
「泣くに決まってるでしょ!!初めて私から告ったのよ!?それなのに俺の好みじゃないとか、正反対だとか、挙句に私を拒絶するのよ!?こんなにひどいことってある?もっと他に言い方とかあるでしょ!もう泣かなきゃやってらんないわよ!」
知るかよ、愚痴なら振った奴に言え。
それにしても初めて奈緒から告白したって・・・意外だな。
コイツならがんがん攻めて行きそうなのに。
両手でごしごしと涙を拭いながら、俺を睨んでくる。
だからその涙目がダメなんだって。
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