2 / 27
2
しおりを挟む結局、遅くなってしまった・・・
もう皆、きてるんだろうなぁ。
3年前かぁ、皆、変わってるのかねぇ。
そんなことをぼんやりと考えながら、教えられた店の扉を開ける。
「らっしゃい!」
店員の活力のある声が響く。
バイトらしき若い男が近づいてきた。
「お一人様ですか?」
「いや、連れが来てる筈なんだが・・・今日、予約入れてるって言われて」
そういや、予約って誰の名前で入れてるんだ?
そんなことも聞いてねぇし・・・
ホントに使えない。
「あ、携帯に掛けてみるから大丈夫」
バイト君にそう伝えて、奈緒の携帯番号を探す。
呼び出しの音が数回、鳴った後、変わらない大声が。
「は~い!奈緒よ~。」
「五月蝿いし、わかってるって。おい、今どこだ?店の前にいるんだけど?」
「え?今、来てるの?ちょっと待っててね!」
そう言って、近くにいるらしきメンバーに大声で「「楓、来たって!!」」と叫んでいる。
その声は、携帯からと店の中からと2つ同時に聞こえてきた。
本人が来る前に行くか・・・
声のした方へ歩いていく。
奥の個室らしき所の扉が開いて、懐かしい顔が現れた。
「やっほ~、楓ぇ!待ってたよぉ~!」
そう言って奈緒は抱きついてくる。
「離せ、人妻だろ?少しは考えろ」
もっともらしい事をいいながら、実際はウザイと心で呟く。
3年前と比べると・・・やはりというか、外見は変わっていた。
一言でいうと・・・ケバい(死語?)
奈緒はほっといて・・・
彼女が出てきた部屋の中へ一歩進む。
すると、昔の面影を残すメンバー達が、テンション高く、迎え入れてくれる。
「おぉ!楓じゃん!元気だったかぁ?相変わらずだなぁ、おまえは」
「きゃ~、楓君だ。懐かしい!3年ぶりだね!」
そういった内容の言葉が一声に飛び交った。
無論、全部に応えられるわけでもなく、空いてる席に何気なく座る。
「とりあえず、生。おーい、奈緒頼んでくれ!」
入り口で盛り上がっている奈緒に、容赦なく命令する。
彼女も片手をあげ、「りょ~かい!」と叫び、呼び出しのベルも鳴らさず、いきなり扉の外に向かって
「生、ちょ~だ~い!」と叫んでいる。
いいのか?と思いつつ、他人の振り・・・
そして、周りを改めて見回す・・・と。
一人の人間と目が合った。
しかも左隣。
「「あ・・・」」
同時に驚きの言葉が混ざり合う。
「え~っと・・・舞・・・だよな?」
「うん。そうだよ・・・なんで?変わった?私。」
「いや、てっきり来ないかと思ってたからさ」
「え?奈緒に聞いてなかったの?」
「あ~、アイツは使えない。聞く前にウザイから電話切った」
そう言った瞬間、彼女は噴き出す。
「それは奈緒に失礼だよ・・・でも楓は変わってないね。3年前のまんまだ」
「それは褒めてるのか?それとも成長してないってケなしてるのか?」
わざと眉間に皺をよせ、笑いながら聞いてみる。
「褒めてるんだよ。うん、安心した」
「なんだよ、俺が変わったら悪いのか?」
「そんなんじゃなくて、話掛けづらくなってたらやだな~と思って」
そう言って、舞は手元のグラスを口につけ、一口飲む。
彼女、相良 舞とは同期の中でも一、二位を争うくらい仲がよかったメンバー。
そして、俺がずっと心に引っかかっていた存在。
「でも舞は・・・ちょっと変わったな、やっぱり」
「え?そう?どのへん?」
「う~ん、やっぱり化粧のせいかな。大人になったなぁと」
「それって、大学の頃は子供みたいだったって言いたいの?」
軽く睨みながら、上半身ごと俺の方に向けてくる。
まともにそれを見ることも出来ず、ちょうど頼んでいたジョッキがきたので、舞と乾杯をする。
「舞は、スッピンでもイケてたけど、化粧したらぐっと大人びた感じに仕上がってるよ」
「仕上がってるってなんだかモノみたいで、嫌なんだけど?」
「まぁ、ある意味、モノじゃねぇの?」
「ひっど~」
そう言ってお互いに笑い合った。
だけど心の中は、外見とは違って穏やかではなかった。
今の心境を一言で言うと・・・『複雑』。
最後に会話をしたあの瞬間が甦る。
俺と舞は、あの日を境に『親友』という関係が崩れたから。
だから今、舞に対して、どういう顔をすればいいのか・・・
そして今、舞に対して、どういう反応をすればいいのか・・・
しばらく舞の反応を伺っていた。
だが、話し始めてあまり時間が経たない内に、そんな悩みはアホらしいと思うくらいどこかに吹き飛んでいた。
話のテンポもノリもオチも、全てが3年前に戻ったみたいに意気が合っていた。
舞も3年も前のことを気にしてないかのように、普通に俺に話し掛ける。
だから俺もそんな舞に、以前と変わらない態度で返事をする。
あれは夢だったんじゃないか?と思えるくらい普通に。
白地に薄いピンクの柄の入ったワンピースに軽く肩にカーディガンを引っ掛けた舞は、3年前と変わらずよく似合っていた。
やっぱり舞は白が似合うな・・・
改めてそう感じた
20
お気に入りに追加
172
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
『番外編』イケメン彼氏は警察官!初めてのお酒に私の記憶はどこに!?
すずなり。
恋愛
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の身は持たない!?の番外編です。
ある日、美都の元に届いた『同窓会』のご案内。もう目が治ってる美都は参加することに決めた。
要「これ・・・酒が出ると思うけど飲むなよ?」
そう要に言われてたけど、渡されたグラスに口をつける美都。それが『酒』だと気づいたころにはもうだいぶ廻っていて・・・。
要「今日はやたら素直だな・・・。」
美都「早くっ・・入れて欲しいっ・・!あぁっ・・!」
いつもとは違う、乱れた夜に・・・・・。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんら関係ありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる