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樫野 珠代

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結局、遅くなってしまった・・・
もう皆、きてるんだろうなぁ。
3年前かぁ、皆、変わってるのかねぇ。
そんなことをぼんやりと考えながら、教えられた店の扉を開ける。
「らっしゃい!」
店員の活力のある声が響く。
バイトらしき若い男が近づいてきた。
「お一人様ですか?」
「いや、連れが来てる筈なんだが・・・今日、予約入れてるって言われて」
そういや、予約って誰の名前で入れてるんだ?
そんなことも聞いてねぇし・・・
ホントに使えない。
「あ、携帯に掛けてみるから大丈夫」
バイト君にそう伝えて、奈緒の携帯番号を探す。
呼び出しの音が数回、鳴った後、変わらない大声が。
「は~い!奈緒よ~。」
「五月蝿いし、わかってるって。おい、今どこだ?店の前にいるんだけど?」
「え?今、来てるの?ちょっと待っててね!」
そう言って、近くにいるらしきメンバーに大声で「「楓、来たって!!」」と叫んでいる。
その声は、携帯からと店の中からと2つ同時に聞こえてきた。
本人が来る前に行くか・・・
声のした方へ歩いていく。
奥の個室らしき所の扉が開いて、懐かしい顔が現れた。
「やっほ~、楓ぇ!待ってたよぉ~!」
そう言って奈緒は抱きついてくる。
「離せ、人妻だろ?少しは考えろ」
もっともらしい事をいいながら、実際はウザイと心で呟く。
3年前と比べると・・・やはりというか、外見は変わっていた。
一言でいうと・・・ケバい(死語?)
奈緒はほっといて・・・
彼女が出てきた部屋の中へ一歩進む。
すると、昔の面影を残すメンバー達が、テンション高く、迎え入れてくれる。
「おぉ!楓じゃん!元気だったかぁ?相変わらずだなぁ、おまえは」
「きゃ~、楓君だ。懐かしい!3年ぶりだね!」
そういった内容の言葉が一声に飛び交った。
無論、全部に応えられるわけでもなく、空いてる席に何気なく座る。
「とりあえず、生。おーい、奈緒頼んでくれ!」
入り口で盛り上がっている奈緒に、容赦なく命令する。
彼女も片手をあげ、「りょ~かい!」と叫び、呼び出しのベルも鳴らさず、いきなり扉の外に向かって
「生、ちょ~だ~い!」と叫んでいる。
いいのか?と思いつつ、他人の振り・・・
そして、周りを改めて見回す・・・と。
一人の人間と目が合った。
しかも左隣。
「「あ・・・」」
同時に驚きの言葉が混ざり合う。
「え~っと・・・舞・・・だよな?」
「うん。そうだよ・・・なんで?変わった?私。」
「いや、てっきり来ないかと思ってたからさ」
「え?奈緒に聞いてなかったの?」
「あ~、アイツは使えない。聞く前にウザイから電話切った」
そう言った瞬間、彼女は噴き出す。
「それは奈緒に失礼だよ・・・でも楓は変わってないね。3年前のまんまだ」
「それは褒めてるのか?それとも成長してないってケなしてるのか?」
わざと眉間に皺をよせ、笑いながら聞いてみる。
「褒めてるんだよ。うん、安心した」
「なんだよ、俺が変わったら悪いのか?」
「そんなんじゃなくて、話掛けづらくなってたらやだな~と思って」
そう言って、舞は手元のグラスを口につけ、一口飲む。
彼女、相良 舞とは同期の中でも一、二位を争うくらい仲がよかったメンバー。
そして、俺がずっと心に引っかかっていた存在。
「でも舞は・・・ちょっと変わったな、やっぱり」
「え?そう?どのへん?」
「う~ん、やっぱり化粧のせいかな。大人になったなぁと」
「それって、大学の頃は子供みたいだったって言いたいの?」
軽く睨みながら、上半身ごと俺の方に向けてくる。
まともにそれを見ることも出来ず、ちょうど頼んでいたジョッキがきたので、舞と乾杯をする。
「舞は、スッピンでもイケてたけど、化粧したらぐっと大人びた感じに仕上がってるよ」
「仕上がってるってなんだかモノみたいで、嫌なんだけど?」
「まぁ、ある意味、モノじゃねぇの?」
「ひっど~」
そう言ってお互いに笑い合った。
だけど心の中は、外見とは違って穏やかではなかった。
今の心境を一言で言うと・・・『複雑』。
最後に会話をしたあの瞬間が甦る。
俺と舞は、あの日を境に『親友』という関係が崩れたから。
だから今、舞に対して、どういう顔をすればいいのか・・・
そして今、舞に対して、どういう反応をすればいいのか・・・
しばらく舞の反応を伺っていた。
だが、話し始めてあまり時間が経たない内に、そんな悩みはアホらしいと思うくらいどこかに吹き飛んでいた。
話のテンポもノリもオチも、全てが3年前に戻ったみたいに意気が合っていた。
舞も3年も前のことを気にしてないかのように、普通に俺に話し掛ける。
だから俺もそんな舞に、以前と変わらない態度で返事をする。
あれは夢だったんじゃないか?と思えるくらい普通に。
白地に薄いピンクの柄の入ったワンピースに軽く肩にカーディガンを引っ掛けた舞は、3年前と変わらずよく似合っていた。
やっぱり舞は白が似合うな・・・
改めてそう感じた
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