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魔法闘技祭編
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しおりを挟む魔法闘技祭。四年に一度行われるこの聖レイテリアの名物的な大会は観客の熱狂と共に終盤に近づいている。
決勝戦。
本戦を勝ち抜いてきた強者達がその頂点を決める。
三回戦を勝ち抜いたレオン、小柄な少女ティマ。そして観客からの一番人気でシード勝ちとなったボーラー国の宮廷魔術師テリー・ミラーの三人が決勝戦へと進んだ。
決勝戦はそれまでの一対一の戦いではなく、三人が同時に舞台の上に上がった三つ巴戦になる。
「本当に戦えるとは思わなかったよ。本当に強いんだね」
舞台の上でニコニコと笑う少女ティマ。
レオンに各選手のことを教えてくれたあの少女だ。
同じく舞台上に立つテリーは手に身の丈ほどもある大きな杖を握っている。
彼は寡黙で、老齢ゆえの佇まいと雰囲気から只者ではないことが伝わる。
観客の歓声が一際大きくなり、決勝戦が始まった。
特別席でそれを見守るのはルイズとシミエール。それから後方で立つマークである。
試合は拮抗した状態だった。
三人とも相手の出方を見極めるために牽制程度の魔法で様子を見ている。
踏み込み過ぎれば、すぐに反撃を喰らうとわかっているのだ。
一対一の戦いよりも三つ巴の戦いは相手の出方と仕掛けるタイミングが重要だった。
ルイズ達の隣に教皇の姿はなくなっている。
決勝戦が始まる直前、彼は
「失礼」
と一声かけてから席を外した。
明らかに「何かを企んでいる」様子だったが、表向きその行動を静止する術をルイズ達は持ち合わせていなかった。
何もできないもどかしさを抱えながらレオンの戦いを見ているだけだ。
「あの中に暗殺者が……でも、心配はいらなさそうね」
ルイズは戦うレオンの背中を見ながらそう言った。
もう大丈夫だと安心したわけではない。
ただ、十中八九は大丈夫だろうと思っていた。
その理由はシミエールにはよくわからなかったが、その後ろで同じくレオンを見守るマークにはよくわかった。
決勝戦に参加した三人のうち、レオンの実力が飛び抜けて高いのだ。
手強さでいえば三回戦目で戦っていた民族衣装のユーランという男の方が上だ、とマークは対戦相手の二人を見て思った。
まず、ティマという少女。
確かに才能は十分で戦いにセンスが光る。
ただ、その幼さ故か攻撃の手段が短調で傍目から見ても随分と戦いやすい相手のようにマークには思えた。
レオンが今まで戦ってきた敵に比べると工夫が少なく、攻撃を読みやすいのだ。
もちろん彼女が手の内を隠している可能性もあったが、レオンとは違ってマーク達は全ての選手の試合を見ていた。
その結果、彼女が決勝戦まで勝ち抜いた理由は高い技術というよりもくじ運に恵まれていたということの方が大きそうだった。
もう一人の対戦者、テリー。
彼に対しては正直万全な状態だったならばレオンにも勝ち目はないかもしれないというのがマークとルイズ二人の共通した見解だった。
歳を重ねるというのはそれだけ経験を重ねるということ。
その経験に基づく彼の戦い方は多角的で読みづらく、魔法の種類も方はな上に防ぐのも難しそうである。
ただ、それは万全な状態だったらの話だ。
テリーが何歳なのかレオンも含めマーク達は誰も知らない。
ただ、六十年も前からこの魔法闘技祭に参加していることからかなりの老齢であることはわかる。
魔法の技術は年齢と共に修練を重ねればその分だけ積み重ねられていくだろう。
しかし、魔力量の方はそうはいかない。
身体機能に起因する魔力量は幼少時の魔法訓練で大きく上昇するが、一定の年齢を超えるとそれ以上は増加しない。
むしろ、歳を重ねれば重ねるほど減少していく。
それは体力と同じようなもので、高齢のテリーには何戦も試合を重ねるほどの体力も魔力も残っていなかったのだ。
一回戦の頃に比べ、明らかに動きが鈍くなり息切れし始めているテリー。
その様子を見る限り、レオンを倒せるほどの余力はなさそうだった。
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