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聖レイテリア神聖国編
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しおりを挟む翌日、エレオノアールからの来賓であるレオン達のために聖レイテリア神聖国では歓迎の式典が開かれた。
「……で、あるからして今日この日に新名を掲げたエレオノアールから使者が来たことを我ら一同、神の名の下に歓迎致す」
国民が集まる広場でレオン達に向けそう語ったのはこの国の教皇である。
終始にこやかに発せられたその言葉に国民からは拍手が送られる。
続いてレオンとシミエールが壇上に上がり、歓迎の式典に対する礼を述べた後で教皇と握手をする。
その間、レオンはずっと嫌な汗を書いていた。
教皇に対して「この人怖い」という率直な気持ちを持ってしまったのだ。
教皇は終始にこやかで、一見するとそれはレオン達のことを本当に歓迎しているようにも見える。
しかし、ただの一度も教皇と目が合わないのである。
面と向かって対峙して握手を交わした時でさえ、教皇はレオンのことを見てはいなかった。
まるで、そこに何もいないかのように。
無視されているわけではないのに、なんとも言えぬ敵意を向けられているような気がしたのだ。
「なるほど、レオン君に暗殺の命令を出したのはどうやらあいつだな」
式典が終わり、教皇達が退場していくのを眺めながらシミエールが言った。
レオンはどきりとする。確信があったわけではないのだが、レオンも同じことを考えていたからだ。
「やっぱり、そう思いますか?」
「ああ、ほぼ間違いないよ。あのお爺さん、式典の間ずっと殺意が漏れていた。国民には取り繕うきはあっても、俺たちに隠すつもりはないらしい」
二人がそんな話をしていると、その背後にライラが立った。
「お待たせ致しました。ライナス卿の準備ができましたのでご案内します」
昨日、ライラがレオン達に話した「この先の流れ」とは今日、この歓迎の式典が行われるということと、その式典の後でレオン達をライナスに会わせるという計画の話だった。
レオン達が直接ライナスの屋敷を訪ねては、誰に見られるかもわからず何かと勘繰る者達も出てくる。
しかし、この式典の後であればライナスは公務で式典に参加することになっているし、人目を避けて引き合わせることも可能だというライラの判断だった。
ライラに案内されてレオン達は国民の集まっている広場から離れ、その裏手にある教会のようなところに入った。
「ここはこの国にいくつもある教会のうちの一つです。レイテリア教を信仰するこの国にとっての象徴であり、その管理はライナス卿が任されております。なので、ここに来賓であるあなた達を案内することはなんら不自然ではありません」
ライラは歩きながらそう説明した。
教会の中を進み、ライナスの私室まで来るとライラはレオン達に部屋の中に入るように促した。
どうやら、彼女は中に入るつもりはないらしく扉の横に背をつき腕組みをして待っている。
シミエールがノックしてから扉を開く。
レオンも後に続いて中に入るとライナス卿が二人を出迎えた。
「初めましてシミエール殿。聖レイテリア神聖国の副神官長を務めているライナス・リードアと申します」
ライナスはそう言ってシミエールに握手を求めた後、今度はレオンに
「久しぶりだな。今回の件、色々と説明はしたいところだが一先ず無事について何よりだ」
と言いながら同じように握手を求めた。
レオンはその手を握り返しながら、少しホッとする。
ライナスがレオンの目をまっすぐに見つめていたからだ。
先程の教皇との握手とは明らかに違う。
レオンの主観でしかないが、やはりライナスのことは信じてもいいのではないかと思うのだった。
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