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聖レイテリア神聖国編
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しおりを挟むレオン達が案内されたのはとある屋敷だった。
そこは見るからに豪勢で、高貴な人物が住むために造られたのがわかる。
屋敷を前にしてレオンの後ろに控えるように後をついてきていたイリファがこっそりとレオンに耳打ちをする。
「レオン様、これを」
そう言ってイリファが手渡したのは一枚の地図であった。
聖レイテリア神聖国の首都、イラリアの地図でその地図の上には赤いインクでばつ印がつけられている。
それはイリファがクエンティンから渡されたものであり、クエンティンはヒースクリフから。
そして、ヒースクリフは聖レイテリアから送付された来賓を迎えるための宿泊場所が記されたものだった。
レオンは地図に記されたイラリアの正門の位置と実際にライラに案内されて通ってきた道を確認する。
すると、赤いばつ印はどうやら今レオン達が目の前に立っている屋敷のあたりを表していることがわかった。
「ここは……僕たちが宿泊させていただくところですか? 一体なぜここに」
昨晩、ライラは「自分はライナス卿の命令でレオン達を案内しにきた」と告げた。
その言葉からイラリアに着いた後、まず向かうのはライナス卿の元だろうと考えていたのだ。
「申し訳ありませんが、ライナス卿の元へ直接ご案内することはできません。ライナス卿は今回のことをできるだけ秘密裏に、自国の者に知られずに済ませたいとお考えなのです」
他国からの使者というだけでも目立つレオン達が町に入ってすぐにライナスの住む屋敷に向かってはあまりにも目立ちすぎる。
そのため、まずは国が用意したレオン達が泊まるための屋敷へと案内したのである。
「心配はありません。屋敷の中はすでにライナス卿の手のものが隅々まで調べ、潜伏者や不審な魔法具の類がないことを確認しております。また、これはライナス卿の公的な仕事ですので変に目立つ心配もありません」
ライナスは聖レイテリア教会の副神官長である。
この国では聖レイテリア教会が実験を握っており、国王は存在しない。
つまり、ライナスがこの国で実権を握る二番手であり、その彼が来賓であるレオン達の屋敷に最大限の警戒を示すのは当然だろうという理屈になるらしい。
レオンはライラが「公的な」という言葉を使ったのが気になった。
それはつまり、ライナスがレオン達と直接会うことは「公的」ではないと言っているようなものだった。
一体今何が起きているのか、昨晩襲ってきた者達は誰の差金だったのか、聞きたいとは山ほどあったが一先ずライラの案内にしたがい、屋敷の中に入っていく。
「中もすごいな。お前ら、念の為各部屋と全ての出入り口の確認を頼む」
屋敷の中に入り、大広間に荷物を下ろすとマークが魔法騎士団の部下達に指示を出す。
イリファはすでに屋敷のキッチンへと向かい持ってきた食器類や食材の類を並べ始めている。
レオン達はライラに案内されるままに大広間から客間らしきところに進み、そこで座るように促されて席についた。
席について少しすると全員分の紅茶をお盆にのせたイリファが入ってきて、それぞれの机の上に置いていく。
来て数分とかかっていないが、その姿は堂々としていてこの屋敷の元からの使用人のように振る舞っている。
「さて、皆様にこれからの流れを簡単にご説明させていただきます」
イリファの淹れた紅茶に口をつけることもなく、坦々とライラが説明を始める。
レオン達を屋敷まで案内し終えたことで、襲撃のリスクがいくらか薄まったと判断し話を次に進めたのである。
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