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聖レイテリア神聖国編
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しおりを挟むレオン達の前に現れた四人の男達がそれぞれ杖を振り上げる。
レオン達は攻撃に備えて杖を構え、いつでも防御の魔法を展開できるように準備していた。
しかし、男達の魔法が届くよりも前に闇夜に青白い閃光が走った。
それは雷だった。
空の上から雷鳴と共に降り注いだそれは四人の男を的確に捉える。
焼け焦げる匂いと共に黒く焦げた男達は悲鳴を上げることもできずにその場に倒れた。
「なんだ?」
マークが警戒した声をあげて、剣を構えたままに周囲を見渡した。
雷は明らかに魔法である。
男達を襲ったことから彼らの仲間ではないことはわかるが、新たな侵入者は敵なのか味方なのか。
警戒を強めたレオン達が沈黙していると、闇に紛れ音も立てずに一人の魔法使いが姿を現した。
両手にそれぞれ意識を失った男を一人ずつ引きずっている。
黒いフードに白と黒で着色された仮面をつけ、マントと装束も全て黒。
闇に紛れるのに適した服装の魔法使いが焼け焦げた男達の横に引きずっていた二人の男を放り投げる。
どうやら茂みに潜んでいた侵入者達の仲間らしい。
それからレオン達の方へ向き直り、近づいてきた。
「待て。それ以上近づけば敵とみなす」
マークが剣を突き立てて言う。
侵入者を倒してくれたことから味方である可能性もあったが、簡単に信用するにはその魔法使いの格好は怪しすぎた。
「失礼、敵意はありません。ライナス卿の命によりあなた方をお守りするために馳せ参じました。ライラと申します」
女性の声だった。
ライラと名乗る魔法使いはつけていた仮面とフードを外し素顔を見せる。
まずレオンの目を引いたのは闇夜に生える彼女の透き通るように白い肌であった。
それから、鷹のように鋭い目。真っ直ぐにこちらを見ている青い瞳。
赤みのある髪の毛を後ろで一つに結び、凛とした表情を見せる彼女は間違いなく「美しい」と称される容貌であった。
ライナスという名前をレオンは知っていた。
以前、聖レイテリア神聖国からエレオノアールのレオンの領地、クルザナシュを視察にきた教会の副司祭の名前である。
レオン達が聖レイテリアを訪問することは当然レイテリア国にも伝えられており、ライナスがそのことを知っているのはおかしくはない。
ただ、なぜ襲撃されたのか。そして目の前のライラという魔法使いがなぜ護衛に来たのかはわからなかった。
「ここではあまり多くのことは話せませんが、とある人物がレオン様に抹殺の指令を下しました。それを受け、ライナス様は私にあなたの護衛を命じたのです」
ライラはそう言ってレオンに向けてかしずく。
それから
「本日より明日の午後、聖レイテリア到着までの間の同行をお許しいただきたい」
と言った。
レオンはそれに二つ返事で了承しようとした。
理由は不明瞭だが、なぜか自分は狙われる身になっていてライナスがその身を案じて彼女をよこしたのだ。
断る理由はない。
しかし、レオンが答えるよりも前にマークがレオンの前に立ち、ライラとの間に割って入る。
「悪いが、あんたを信用する根拠がない。助けてくれたことには感謝するが、それもこちらを油断させる作戦でないとは言い切れないしな。あんたがライナス卿から派遣されてきたという証拠とこちらに敵意がないという確証を得るまではこの一行の護衛任務を請け負った者として同行を許可できない」
マークはそう言ってライラの申し出を断った。
マークとて、本気で彼女のことを疑っているわけではない。
ただ、言葉にして見せた通り護衛を任された魔法騎士団の一部隊長として簡単に人を信じるわけにはいかなかったのだ。
マークの言葉にライラは気を悪くしたような素振りを見せず、むしろその返答を予想していたかのように自らのローブの内側にそっと手を入れて何かを取り出した。
それは杖のようであったが、先端に赤い魔石が埋め込まれた変わった形状をしていた。
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