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聖レイテリア神聖国編
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レオン達の旅は大旨順調に進んでいた。
その理由の一つしてレオンが事前に用意していた結界の魔法陣と住居を建てる魔法陣の活躍がある。
結界の魔法は本来であれば大変な魔法騎士団達の見張りという仕事を緩和し、各々に割り振れられた個室という野営に似合わない休息の場所は馬車に揺られていたレオン達だけでなく魔法騎士団達の体力の消耗を最小に抑えたのである。
もう一つ、この旅で重要な役目を担っていたのはイリファであった。
彼女は旅の行程を事前にしっかりと下調べし、綿密な計画を立てていた。
そのおかげで初めての旅だというのに大きなトラブルを招くことなく進むことができたのだ。
さらに、彼女が最も力を入れていたのは「食事」であった。
本来の雇人であるクエンティンを伝に彼女はこの度にいくつかの魔法具を持ち込んでいた。
それは、食材の鮮度を保つ魔法がかけられた「箱」であったり、火を使わずとも調理を可能にする「鍋」であったりとほとんどが「食事」に関するものだった。
それらの魔法具と旅の道中で立ち寄った村々で安く入手した特産品を使って彼女は魔法騎士団を含めた十数人分の食事を作っていたのである。
その腕は立場上、高級な料理に慣れ親しんだシミエールすらも認めるほどで、さらには栄養までしっかりと配慮されたものであった。
その温かい食事は毎日歩き同士だった魔法騎士団達の健康と心を支え、陰で「食の女神様」と呼ばれるほどになったという。
とにかく、事前の準備が功を奏して順調な旅路を送っていたレオン達一行。
ただ、それも四日目の夜までであった。
目的地である聖レイテリア神聖国まであと一日。
翌日の昼頃には到着するであろうという頃合いに、レオン達は襲撃を受けてのである。
最初にそれに気がついたのはやはりレオンであった。
自らが施した結界に何者かが侵入したことを感知したのである。
それから寸分遅れずにルイズとマークも侵入者の存在に気がついた。
ルイズとレオンは杖を、マークは剣を手に持ってそれぞれの個室を飛び出した。
まず、レオンが杖を前に突き出して攻撃の魔法を唱える。
迷うことなく攻撃に出たのはその侵入者から明らかな敵意を感じていたからである。
レオンの杖から飛び出した衝撃波の魔法が、目の前の茂みの中に飛び込んで行き、何者かに当たる。
「ギャッ」
という男の悲鳴がした後にしばしの沈黙。
レオンは魔法が確かに当たったと確信していたが、侵入者の気配は消えてはいなかった。
侵入者は一人ではないようだった。
次に、今度は茂みの中から炎の魔法が飛んでくる。
それも一つではなく、無数に。
これをルイズは杖を振って水の壁を作り出して防いだ。
そしてその後すぐにマークが剣を構えてレオンとルイズの前に立ち、声を張り上げてこう言った。
「何者だ。姿を見せろ! 見せなければ森ごと薙ぎ払う」
森に響く大きな声。ほんの少しの沈黙の後に茂みの中からガサガサと音がして侵入者達が姿を現した。
現れたのは四人。
皆同じような格好で、顔を隠すためか黒いフードとマスクをしている。
「レオン・ハートフィリア。そしてシミエール・デュエンの一行とお見受けする」
四人のうちの一人の男が低い声でそう言った。
それに答えたのはレオンである。
「違う……と言っても信じてはくれないよね」
レオンのその言葉を肯定するかのように目の前の男達は再び杖を構える。
レオンは視線から男達を外さないようにしつつも、意識を周囲の茂みに向けた。
マークの言葉にわざわざ素直に従い、姿を見せたのは正々堂々と勝負するという騎士道精神のようなものをこの侵入者達が持っているからか。
それとも、従ったように見せて油断させ茂みの中に潜ませた他の仲間に奇襲させるためか。
考えるまでもなく後者だろう。
レオンは茂みの中に潜んでいるだろう敵に注意していたのである。
その理由の一つしてレオンが事前に用意していた結界の魔法陣と住居を建てる魔法陣の活躍がある。
結界の魔法は本来であれば大変な魔法騎士団達の見張りという仕事を緩和し、各々に割り振れられた個室という野営に似合わない休息の場所は馬車に揺られていたレオン達だけでなく魔法騎士団達の体力の消耗を最小に抑えたのである。
もう一つ、この旅で重要な役目を担っていたのはイリファであった。
彼女は旅の行程を事前にしっかりと下調べし、綿密な計画を立てていた。
そのおかげで初めての旅だというのに大きなトラブルを招くことなく進むことができたのだ。
さらに、彼女が最も力を入れていたのは「食事」であった。
本来の雇人であるクエンティンを伝に彼女はこの度にいくつかの魔法具を持ち込んでいた。
それは、食材の鮮度を保つ魔法がかけられた「箱」であったり、火を使わずとも調理を可能にする「鍋」であったりとほとんどが「食事」に関するものだった。
それらの魔法具と旅の道中で立ち寄った村々で安く入手した特産品を使って彼女は魔法騎士団を含めた十数人分の食事を作っていたのである。
その腕は立場上、高級な料理に慣れ親しんだシミエールすらも認めるほどで、さらには栄養までしっかりと配慮されたものであった。
その温かい食事は毎日歩き同士だった魔法騎士団達の健康と心を支え、陰で「食の女神様」と呼ばれるほどになったという。
とにかく、事前の準備が功を奏して順調な旅路を送っていたレオン達一行。
ただ、それも四日目の夜までであった。
目的地である聖レイテリア神聖国まであと一日。
翌日の昼頃には到着するであろうという頃合いに、レオン達は襲撃を受けてのである。
最初にそれに気がついたのはやはりレオンであった。
自らが施した結界に何者かが侵入したことを感知したのである。
それから寸分遅れずにルイズとマークも侵入者の存在に気がついた。
ルイズとレオンは杖を、マークは剣を手に持ってそれぞれの個室を飛び出した。
まず、レオンが杖を前に突き出して攻撃の魔法を唱える。
迷うことなく攻撃に出たのはその侵入者から明らかな敵意を感じていたからである。
レオンの杖から飛び出した衝撃波の魔法が、目の前の茂みの中に飛び込んで行き、何者かに当たる。
「ギャッ」
という男の悲鳴がした後にしばしの沈黙。
レオンは魔法が確かに当たったと確信していたが、侵入者の気配は消えてはいなかった。
侵入者は一人ではないようだった。
次に、今度は茂みの中から炎の魔法が飛んでくる。
それも一つではなく、無数に。
これをルイズは杖を振って水の壁を作り出して防いだ。
そしてその後すぐにマークが剣を構えてレオンとルイズの前に立ち、声を張り上げてこう言った。
「何者だ。姿を見せろ! 見せなければ森ごと薙ぎ払う」
森に響く大きな声。ほんの少しの沈黙の後に茂みの中からガサガサと音がして侵入者達が姿を現した。
現れたのは四人。
皆同じような格好で、顔を隠すためか黒いフードとマスクをしている。
「レオン・ハートフィリア。そしてシミエール・デュエンの一行とお見受けする」
四人のうちの一人の男が低い声でそう言った。
それに答えたのはレオンである。
「違う……と言っても信じてはくれないよね」
レオンのその言葉を肯定するかのように目の前の男達は再び杖を構える。
レオンは視線から男達を外さないようにしつつも、意識を周囲の茂みに向けた。
マークの言葉にわざわざ素直に従い、姿を見せたのは正々堂々と勝負するという騎士道精神のようなものをこの侵入者達が持っているからか。
それとも、従ったように見せて油断させ茂みの中に潜ませた他の仲間に奇襲させるためか。
考えるまでもなく後者だろう。
レオンは茂みの中に潜んでいるだろう敵に注意していたのである。
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