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消えた盗賊達編
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しおりを挟むテトの変化した黒い球体に包まれたシュレンガー。
その中は空気をできる限り排除した低酸素状態である。
その中に閉じ込められたシュレンガーは程なくして呆気なく意識を失った。
いくら街を破壊されたことに腹を立てているとはいえ、相手の命を奪うつもりなどレオンには毛頭ない。
テトを通して中にいるシュレンガーが気を失ったのを確認したレオンはテトの変化を解除した。
テトはまたいつものように猫の姿に戻り、一声なくとレオンの影に戻っていく。
それからレオンはシュレンガーを魔力の糸で拘束した後で倒れた団員達の方へ歩いていく。
こちらも息はしっかりとしているし、意識を失っているだけのようだ。
シュレンガーの謎の変化をする魔弾の解明はレオンにはまだはっきりとはできていなかったが、おそらくその効果のせいなのだろう。
レオンは団員達を綺麗に並べた後、忘れずにシュレンガーの持っていた魔銃を回収しておく。
魔法使いにも大きなダメージを与える武器というだけでなく、未知の能力についても知っておく必要がある。
ことが全て済んだらヒースクリフに許可を取り直接自分で調べてみるつもりだった。
それから今度は古城の中を見る。
中に入っていったというマーク達のことを思い出したのだ。
倒したシュレンガーは確かに実力者だった。
魔法を使えないという部分を強力な魔道具とそれを活かした戦い方で補っていた。
しかし、正直今までに戦ってきた敵と比べても強敵かと言われればそこまでではない。
マークやルイズにそれに悪魔達ならば中にいる盗賊達を倒すくらいわけないだろうとレオンは考えていた。
そろそろ盗賊達を捕らえたマーク達が古城から出てきてもいい頃合いであろう。
レオンがそう思った時である。
古城が大きく割れた。
いや、爆発した。
もともとボロボロだった古城はその天井部分が瓦解して中心から崩壊していく。
レオンは目を丸くする。
何かがその中心部から飛び出してきて、自分の方へ飛んでくるのが見えた。
それが悪魔の一人、ア・ダルブであると分かったのはダルブが落下して着地に失敗し、地面に突き刺さった後である。
首から上は地面の中で顔は見えないが、突き刺さったその筋骨隆々な肉体と服装は間違いなくダルブである。
ダルブは両手を地面について力任せに頭を引き抜くと、ブルブルと水を払う犬のように首を振った。
「おお、レオンか。来てたのか」
ダルブはすぐ横に立つレオンに気づくとニカッと笑う。
「ダルブ! これはなにごとだい? 古城を壊したのは君なのか?」
レオンがダルブに尋ねるとダルブは首を横に振り、それから「あそこを見ろ」と言わんばかりに顎で指し示す。
レオンはそれに従い視線を古城の真上に向けた。
「新手だ」
ダルブが言う。
レオンの視線の先にはマークがいた。
それからルイズも。
マークは剣に炎を纏い、空中でうまく姿勢を制御しながら斬りつけている。
ルイズはそのマークの戦いを邪魔しないように離れたところから水と氷の魔法でうまく援護しているようだ。
その戦っている相手は、レオンの知らない相手であった。
頭には奇妙な光の輪が浮かんでおり、それから古代文字の書かれたお札のようなものを額に貼っていて顔を隠している。
見に纏った白い服は神官服のようにも見えた。
一目で、盗賊の類でないことはわかる。
「何者なの?」
レオンはダルブに再び尋ねるが、ダルブはがはははと豪快に笑い。
「強者だ!」
と楽しそうに言うと地面を強く蹴って空中に飛んでいってしまう。
「二人ともどけい! 俺の出番だ!」
天に響く豪快な声と共にダルブは右の拳を突き出す。
ただの拳ではない。
悪魔の魔力で強化された渾身の一撃である。
しかし、奇妙な見た目の新手はその拳を最も容易く受け止めてみせると今度はその勢いを利用してくるりとダルブを回転させ、投げてみせたのだった。
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