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盗まれた魔道具編
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しおりを挟む「へぇ、よく避けたな。こいつは魔銃って代物だ。魔力を飛ばす武器でな、当たれば魔法使いといえどひとたまりもないぜ」
空に浮かんだシュレンガーは初見で魔銃の脅威に気付き避けたレオンに感心したようだ。
レオンは地面の抉られた穴と倒れた団員を見比べる。
さっきの不意打ちもその魔銃によるものだとすれば、団員が気を失ったことにも頷けるが、団員はその前にもがき苦しんでいたように見えた。
地面の穴を見れば魔銃の攻撃が直接的な威力を持つことはわかる。
団員を襲ったのとはまた別の攻撃なのだろうか。だとすれば、シュレンガーはまだ別の武器を隠し持っていることになる。
レオンは用心しつつ、再び魔銃で攻撃される前に今度はこちらから攻撃をしかけた。
まず炎の魔法を目の前に展開した。
それは大して威力はないが、マントのようにひらめいて、閃光の役割としてシュレンガーの目を眩ませる。
その一瞬の不意をつき、レオンは地面を蹴って飛び上がると使い魔であるテトを呼び出した。
テトはいつものように二本の剣に姿を変えて、レオンはそれを持ちシュレンガーに切り掛かる。
一瞬炎の魔法に気を取られたシュレンガーだが、すぐに飛び上がったレオンに気付き両手に持った魔銃をレオンに向けた。
しかし、レオンはそれよりも早かった。
切りつけた剣はシュレンガーが魔銃を撃つよりも早くシュレンガーの懐に入り込み、仕方なくシュレンガーは銃身で剣を受け止めるしかなかった。
ガギンという金属音がして、レオンの剣は弾かれる。
岩ですら両断できるほどの切れ味を持つ剣だったが、魔銃はその銃身にも特別な細工がしてあるらしい。
「なるほどな、魔法使いっていっても接近戦も得意な奴もいるわけだ」
シュレンガーは再び感心したように言った。
ユルミルと同じくシュレンガーも魔法使いと一対一で戦った経験は少ない。
しかし、全くないわけでもなかった。
盗みがバレた時、仲間を逃すために囮を務めるのは大抵シュレンガーだったしそう言った時には魔法使いとの戦いも余儀なくされた。
大抵の魔法使いはシュレンガーの魔銃の威力を見誤り、魔法を唱えている間に魔銃に撃ち抜かれてかたがついてしまう。
初見で魔銃を避けたのも、その後接近戦で斬りかかってきたのもレオンが初めてだった。
「あなたの目的はいったいなんだ? なぜ、街を襲ったんです。盗んだ魔道具はそんなに価値があるものですか」
剣を弾かれてレオンは地面に着地した。
同じようにシュレンガーも浮かぶのを止める。接近戦になるのなら空中よりも下の方がいいと判断したのだ。
レオンの問いかけは純粋な疑問だった。
クルザナシュの街が襲われた時、盗賊達はわざわざ街に火をつけて、さらには襲撃という陽動までして魔道具を盗んでいった。
ただ盗みを働くよりも当然目立つし、追ってもかかって然るべき行動だ。
魔道具があるから逃げ切れると踏んだのか、それともそうまでして盗み出さなければいけない物があったのか。
「俺に勝てたなら、教えてやってもいいぜ」
シュレンガーは不敵に笑い、それから魔銃をレオンに向けた。
二丁の魔銃から交互に打ち出される魔力の弾がレオンめがけて飛ぶ。
レオンは魔力障壁を目の前に展開して弾を防いだ。
「タネさえわかれば防ぐのは容易い。あなたに勝ち目はないですよ」
レオンの言葉にシュレンガーはニヤリと笑った。含みのある笑い方だった。
「それはどうだろうな」
シュレンガーがそう言うのと同時にレオンは自分の展開した魔力障壁に異変があることに気がついた。
障壁が凍り始めているのだ。
「なんだ……?」
レオンが疑問に思った時、シュレンガーが撃った魔力の弾が障壁を打ち砕いた。
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