没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵

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盗まれた魔道具編

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盗賊団達の拠点、エレオノアール西方の古城跡は大混乱だった。

何しろ、盗賊達はまさか自分たちが後を追われているとは考えてもいなかったのだ。


シュレンガーが調達してきた魔道具「空を飛ぶ箒」はその名の通り、魔法使いでなくても跨るだけで空を飛ぶことができる代物だった。

さらに魔法と違い不用意に魔力の痕跡を残さず、地面を歩くわけでもないので足跡などもつかない。

シュレンガー達は今までこの箒のおかげで遠方まで略奪をしに行き、逃亡先を発見されることもなく逃げ延びてきたのだ。


マークが精霊に跡を追わせていたなんて知る由もない盗賊達は古城につくなり酒を飲み始めて宴会を始めたのだ。


「噂で聞くよりも大したことなかったなあの街」


「シュレンガーさんが領主の化け物魔法使いを倒してくれたしな、戦利品もかなり多いぜ」


酒を一口飲んではやれ「自分は何人倒した」だの「あの戦利品は俺が盗ってきた」だのと自慢を始めた盗賊達はすぐに酔っ払い始めた。


魔法騎士団が奇襲を仕掛けたのはそんなタイミングであった。


古城の入り口は外から見てわかる限りでは三箇所。


マークはそのうちの二箇所に団員を三名ずつ配置し、中から出てくる盗賊を一人も逃さない様に指示を出す。

それから残った一つの入り口からルイズ、ダルブ、ドリスの三人を連れて潜入した。


中にいる盗賊達は酒に夢中で魔道具の類は全て外しており、完全に油断していた。

マークはその不意をついたのである。


まず、ファルトスと力を合わせて炎魔法「業火」を発動し古城の内部を炎で取り囲んだ。


突然現れた炎に盗賊達は面を喰らう。

酒に酔っていても、襲撃されたのだと理解することはできたらしい。


逃げ惑う者、武器を取ろうとする者に分かれる。

ルイズが、魔法の糸を操って武器を拾おうとする者達よりも先に武器を取り上げてしまう。


残りの仕事はほとんどダルブが片付けてしまった。


身体強化魔法で肉体を強化したダルブは盗賊達に向けて突進し、次々と投げ飛ばしていったのだ。


魔道具を持たない盗賊達はただの人間である。

悪魔のダルブに敵うはずもなく、なす術なく一網打尽にされてしまう。

投げ飛ばされて気を失った盗賊達をマークは縄で縛り上げた。


「呆気ないわね、さっさとこの人達をクルザナシュに連れて帰りましょ」


ルイズは準備してきたにも関わらず一瞬で片付いてしまったことに拍子抜けしたようだ。

そのルイズの隣でさらに不機嫌そうにしている少女がいた。


「おい! アタシの仕事はどこだ!」


と怒っているのはドリスである。
実年齢は定かではないが、ドリスが依代としているのはシドルト族の少女の体である。

そんな見た目のドリスが頬を膨らませて怒っていると、子供が拗ねている様にしか見えない。


「仕方ないだろ。お前の魔法じゃこの古城ごと吹き飛ばしちまうじゃねぇか。俺たちも巻き添えになる」


とマークはドリスに言う。

ドリスの魔法は燃える岩を生み出し、落とす魔法だ。


攻撃範囲が広く、威力も大きい為に室内では使えなかった。


「何のためにアタシは来たんだよ! これなら街で待ってればよかったじゃんか」


今にも癇癪を起こしそうな様子のドリスにマークは「落ち着け」と宥める。


「安心しろ、まだ終わってねぇよ。街を襲った奴らの人数よりも明らかに少ないからな。それに、レオンを倒した奴の姿もない。まだ、残ってるぞ」



マークの声は三人に「警戒しろ」と促していた。


ダルブが打ちのめした盗賊達の人数は十数人程度。

クルザナシュが襲われた時にはこの倍以上の人数がいた。


古城はところどころ崩れかけていて、天井も崩落しているような有様だったが一応建物としての原型は留めている。

部屋の数も多い様だ。


騒ぎを聞きつけて既に古城の中に身を隠した者達がいるはずだとマークは考えていた。
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