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盗まれた魔道具編
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しおりを挟むレオンと悪魔達が集まったところに魔法騎士団の団員の一人が駆けつける。
「大変です! すぐに来てください!」
焦ったようにそう言う団員を前にレオンとマークはお互いに顔を見合わせた。
そして、二人は団員の後について広場を出て行った。
「まだ何か起こってるみたいだな」
広場を後にする二人を目にしてそう呟いたのは悪魔の一人、ア・ダルブである。
その横にいたア・ドリスが不思議そうにダルブのことを見上げている。
「ダルちゃんなんでわかるの?」
ダルブは「ダルちゃん」と呼ばれたことに一瞬のイラッとしたが、まぁいつものことかとすぐに考えを改める。
「あの襲撃者の人間達と戦っててお前何も気が付かなかったのか? あいつら、動きがおかしかっただろう」
ダルブの言葉にドルマは再び頭に疑問符を浮かべる。思い当たる節はないようだ。
「そうかなぁ? 人間なんてあんなものじゃない? そりゃ、マー君やオドドは別にしても……あの人達、魔法を使えない人間だったんでしょ? その割にはよく動けてた方だと思うけどな」
ドルマの言うマー君はマーク。そして、オドドはオードのことである。
悪魔の中でも一風変わった雰囲気を纏うドルマは親しみを込めて不思議なあだ名で人のことを呼ぶ癖があった。
その癖を知っているダルブはドルマの口から不思議な名前が出ても特に気にしない。何事もなかったかのように話を進める。
「そこだよ。あれだけ動ける奴らだ。俺たちを相手にしてももっと戦えただろ。それなのに、アイツらは潔く引き上げていった。それが気になるんだよな」
それはダルブの勘のようなものではあったが、戦闘的なことに関しては本能的に頭の回る男である。
その違和感は決して間違ってはいなかった。
襲って来た襲撃者達には別の狙いがあったのだ。
団員の後について馬車の停留所までやってきたレオンとマークの二人は襲撃者達の狙いを知ることになる。
「これは……」
「なるほど、やられたな」
レオンとマークが目にしたのは載せていた荷物がすべて無くなり、空になった荷馬車の姿である。
載っていたのは国中で捕えられた盗賊達が持っていたとされる盗品の類だった。魔道具が全てが無くなっている。
「狙いはこっちだったのか。街の火災も大人数での襲撃もここの人手を少なくさせるための陽動だったわけだ」
マークが頭を抱えながら言う。
護衛部隊を率いる隊長としてまんまとしてやられたことを悔いているようだった。
「林の奥で眠らされている団員を発見しました。怪我はないようですが、不意に襲われたようで相手の顔は見ていないと言っています」
二人を連れていた団員が説明する。
念のためこの馬車の停留所にも護衛の団員が何人かいたのだが、街で騒ぎが起こった時に一人を残して避難や迎撃に出払ってしまったのである。
襲撃者は数人の隠密部隊を作り、忍び込んでその残った一人を眠らせた後、馬車の荷物を全て盗んで行ったのだろう。
「敵は盗賊か何かだな。押収した魔道具の中によっぽど大切なものでもあったか? とにかく、俺たちは準備が出来次第奴らの足取りを追う。レオン、街のことは任せるけどいいか?」
マークにそう聞かれてレオンは頷くしかなかった。
本音を言えば、街を荒らした相手をこのまま見過ごすわけにもいかず、マークについて行きたかった。
しかし、今のレオンにはそれよりもやらなければならないことがあった。
街の住人達の不安を取り除いてあげることだ。
街に移住して来てもらい、その身は自分が守ると約束したのだ。
まんまと侵入を許しただけでなく、事実上レオンは敗北したことになる。
このままでは街の住人達に示しがつかない。
街を襲われ、不安を抱えているであろう住人達を残して街を離れるわけにはいかなかった。
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