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魔法学院生徒受入編
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しおりを挟むレオンはルイズの表情をまじまじと見つめる。
他の教員達ほど露骨ではないが、少し疲れの色があり目の下にも隈ができている。
「大変みたいだね」
レオンはいつの間にやら街の中で鬼ごっこを始めている子ども達を遠くに見ながらルイズに言った。
ルイズも同じように子ども達を見ながら「ええ、まぁ」と苦笑いをしている。
「でも、楽しいわ。疲れるけど、いい気分転換にもなるし」
そう言うルイズの言葉に嘘はなかった。
まだ若いうちから魔法を学びたいと学院に来ただけあって、子ども達の学習意欲は驚くほどに高い。
目に見るもの、手で触れるもの、なんでも吸収しようと知りたがり質問してくるためにやはり大変ではあるが、それだけ魔法に興味を持ってくれているのが嬉しくもあった。
それに関してはレオンも同じ気持ちである。
「今日のところはゆっくり休んでよ。温かい家も作ったからさ」
子供達と引率の教員達が泊まるためのクルザナシュの宿は前回二国の使者が来た時に建てられた家の使い回しである。
二国の使者だけでなく、その従者や護衛の騎士団のためにも造られているため、部屋は十分に事足りる。
豪華な建物はそれに見合うだけ頑丈で、過ごしやすい造りになっているために疲れも癒せるだろう。
「ありがとう、それにしても……本当に短期間で、よくこれだけの街を作り上げたわね」
ルイズは子ども達を目で追ううちに自然と視線に入った街並みを見て感心したように言った。
北方の自分が自治する村と比べてみても、遜色ないというよりも村の方が見劣りするレベルである。
環境としては北の地域よりも厳しい面もあるだろうに、これだけの街を作り上げたことに素直に驚いている。
「いろんな人が力を貸してくれるからね。ルイズの村はどう?」
レオンは鼻高々に言った。
決して自分の自慢をしているわけではないが、街を褒められるとその街を作り上げた悪魔達の力を褒められた気がして嬉しくなるのだ。
「私の村も順調よ。今年は収穫量も見込めるし……ただ、少し心配もあるの」
ルイズの表情が少し曇る。
大きな問題ではなかったが、村を離れることに少し心残りができる程度の問題があった。
「心配?」
レオンの問いにルイズは「盗賊よ」と答えた。
北方の地域だけでなく、今エレオノアールの全土で度々問題になるのがこの盗賊被害であった。
元々、盗賊自体は存在していたのだが、最近になってその数が増しているようなのである。
国王であるヒースクリフがわざわざ魔法騎士団に調査を命じるほどに被害の声は増え、それに伴って捕まる盗賊達の人数も多くなっている。
しかし、中には中々足取りの負えない盗賊達も複数いて、魔法騎士団長代理のダレンはそっちにかかりきりになっているのだった。
「北の地域でも最近近くの街が襲われたばかりでね……私がいれば村は絶対に襲わせないんだけど、離れてる間だけ少し心配なの」
とはいえ、ルイズはそれほど大きな問題だとは考えていない。
順調に実りが増えて来たとはいえ、村にはまだ盗るような物などほとんどないからだ。
それに、魔法を使えるものがほとんどいないだろうと予測される盗賊達。
今はなんとか上手くやっているようだが、捕まるのも時間の問題だろうと思っていた。
「盗賊か、そういえば僕もこの間捕まえたよ。山の中に潜んでいるのを」
レオンは山中に建てた砦を奪われかけたことは濁しながら、捕まえた山賊達のことをルイズに話す。
すると、ルイズは思い出したように言った。
「そういえば、王都で預かって来た物があるんだった。ヒースクリフとクエンティン先輩からね」
ルイズはレオンの腕を取り、荷馬車の置かれている方へと引っ張っていくのだった。
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