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新たな時代編
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しおりを挟むレオンとマークが王宮の衛兵に案内されて中を進んでいくと、連れて行かれたのはヒースクリフの執務用の部屋だった。
衛兵が扉をノックし、二人を中へ入れる。
部屋の中には執務用の机に座っているヒースクリフとその横で立つダレンの姿があった。
マークが予想した通り、二人はレオン達が余りにも早く着いたので驚いた様子だった。
レオンがマークにしたのと同じような説明を二人にすると、二人とも驚愕しつつもどこか納得したような表情で頷いていた。
「それで、俺たちを呼んだ理由はなんなんだ」
驚き続ける二人を見てらちが明かないと痺れを切らしたマークが話を切り出す。
ヒースクリフは我に帰った後、一つ咳払いをしてから
「重要な話が二つある。君達にも大きく関係する話だ」
と言って、レオン達に紙の書類を手渡した。
「これは?」
レオンはその紙にさっと目を通してから、少し顔をしかめてヒースクリフに問い返した。
紙には悪魔についての文言が並べられている。
さっと流し読みしただけのレオンにもその内容が悪魔達の行動を制限するための契約書であることがわかった。
「すまない。色々と手を尽くしたんだが、悪魔達を危険視する連中の言及を止められない。彼らが危険ではないとわかるまで彼らの行動を制限する規約を作り、契約を結んでもらうことになった」
ヒースクリフが本当に申し訳なさそうに言うので、レオンにはそれがヒースクリフの本意ではないことは十分に伝わった。
「彼らを国を救った英雄だと言う声もあるが、一方で全てが悪魔達の計略なのではと疑う声も大きい。……苦肉の策だが、こうするしかない」
ヒースクリフの言葉を補足するようにダレンが言う。
王国内では悪魔達を民として認めることに懐疑的な意見が集まっていた。
それは決して貴族達からだけではなく、平民達からも寄せられている。
民衆の意見を最大限に取り入れるという方針のヒースクリフにとってそれは無視できないほどの数だったのだ。
「具体的にはいつまで? 彼らはどうしたら安心して暮らせるんだい」
レオンも領主として引き下がるわけにはいかなかった。
クルザナシュという土地に悪魔達を受け入れると決めた時から悪魔達の行動の一切を受け持つ覚悟を持っていた。
契約の中には「人間に対して魔法を使わない」や「行動を定期的に報告する」という内容のものまであり、悪魔達の自由を奪う可能性があったのだ。
「何も永遠に閉じ込めておくというわけじゃない。クルザナシュでの彼らの行動はレオンに一任する。その契約書はクルザナシュの外に悪魔達を出さないようにするためのものだ」
ダレンは淡々と説明する。
ダレンとて悪魔達に恨みがあるわけではない。
ヒースクリフやマークがそうであるようにレオンのことを信頼している。
ただ、魔法騎士団の団長代理として、国王ヒースクリフの補佐として伝えなければならないことはハッキリと伝えなければならない。
レオンにもそれがわかっているため、話は平行線のままだった。
結局、レオンがそれを許可したとしても従うかどうかは悪魔達の判断になるという方向に話は向かっていき
「一度クルザナシュに帰ってディーレイン達にも聞いてみる」
とレオンが言ったところでその話は一度終わりになった。
「それではもう一つの方の話だ」
とヒースクリフが切り出したのは昼を少し過ぎた頃合いだった。
「これもまた悪魔達に関係する話だが」
とヒースクリフが切り出したのでレオンはごくりと唾を飲み込んだ。
ヒースクリフは神妙な面持ちで、
「他国の人間がこの国やってくる」
とレオンとマークの二人に告げた。
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