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勇者、異世界に降り立つ
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しおりを挟む本を開いて見ると、ほとんどは空白のページだったが、最初の二ページには何かが書かれていた。
最初のページには「ハル」というこの世界での俺の名前と、その下にゲームなどでよく見るステータスのような文字が並んでいる。
攻撃力や防御力、装備品、スキルといった具合で項目ごとにわかれていて、それらの能力値をステータス化して表しているらしい。
次のページには「小鬼 レベル2」と書かれていた。
こちらはどうやら倒した魔物を記録しているようで、先ほど倒した小鬼のステータスが前のページのものよりも少し簡略化されて載っていた。
二つのページを見比べてみると、俺のレベルは1で、小鬼よりも低かったが小鬼の攻撃力よりも俺の防御力の方が高かった。
ダメージを喰らわなかったのはそういう理由らしい。
俺の防御力が高くなっている理由は着ている勇者の装備品のおかげらしい。
さすが以前の勇者が使っていだけあって、防御力と性能はかなり高いようだ。
まだ一体しかゴブリンを倒していないため、一概にはいえないがゴブリン程度ならば出会っても大丈夫だろうという自信にはなった。
気になるのは俺の装備品の欄に「小鬼の棍棒」という武器が書かれていたことだろう。
試しに使ってみただけなのだが、それで装備したことになるらしい。
小鬼の棍棒の攻撃力よりもおれの総攻撃力の方が高い。そのことから察するに俺は棍棒がなくても相当強いような気がした。
とはいえ、今まで人を殴ったことない俺にとっては棍棒があった方が幾分戦いやすいだろう。
初めて倒した敵の戦利品でもあるし、俺は棍棒を持っていくことにした。
小鬼を倒したことで少しばかり不安はなくなり、俺は再び森を進んでいくことにした。
とはいっても、どこをどういけば森を抜けられるかもわからず、地図もない。
ただまっすぐ進んでいくだけだ。
その道中何匹かの小鬼たちに見つかり、すぐに取り囲まれることが何回かあったがダメージを喰らうようなことはなかった。
最初の一匹を倒した時のように小鬼が疲れ果てるまで待ってから棍棒でとどめを刺し、倒した小鬼たちのステータスを本で確認してみると出会った小鬼たちのレベルは大体が1から3で、たまにレベル5という少し高い個体もいたがその全ての攻撃力は俺の防御力を上回ってはいなかった。
もう一つわかったことは俺は防御力ほどは攻撃力が高くないということである。
装備しているのが聖剣ではなく小鬼の棍棒だからだろうが、小鬼が疲れ果てる前に棍棒で殴っても一撃では倒せないことがわかったのだ。
どうやら、防御力というのはスタミナに依存しているようで余力が残っている状態では防御力がしっかりと反映されるが、疲れてくると反映されづらくなるらしい。
戦ってる最中に小鬼たちのステータスを確認できたわけではなく、すべて戦いが終わってからの情報に基づく予測なのが少し煩わしいが、俺のこの考えは概ね間違っていないだろう。
突然異世界に飛ばされたというのに、強すぎる勇者の防具と恐らくそんなに強くない小鬼という敵たちのおかげで俺はかなり冷静に、そしてまるでゲームの攻略をしているかのように楽しみながら森の中を散策できていた。
お爺さんが修復した勇者の肉体とやらもレベルは1にリセットされたようだが、それでも強い。
地球では電車通学で部活にも入らず、運動不足だった俺だけどこの世界では体感で数時間歩き続けてもあまり疲れを感じなかった。
ただ、疲れないといっても喉は乾くし腹も減る。
森の木々の隙間から見える空がだんだんと赤く染まってきたのでもうすぐ日が沈むのだろう。
俺なんとかその前に今夜眠る場所と水の確保、そしてなにか食べ物を見つけないとなと考えていた。
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