生活日記 月

おかゆ

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仮面

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「生きている限り、みなピエロ」と言ったのは、三島由紀夫である。

シェイクスピアに言わせれば「この世は舞台、男も女もみな役者」だ。

人間は生きている間に、誰しもがいくつもの役割を背負うからである。家に帰れば、娘でも、学校にいけば先生から見た自分は生徒であるし、友達からみたら自分も友達で、クラスメイトだったりするものでもある。家に帰れば、友達や生徒から、家族の一員となるが、猫や犬から見たら、飼い主、もしくは、仲間...?か兄弟か。うちには猫がいるけれど、猫に関しては、おそらく私のことを少なくとも飼い主という風には捉えていない気がするが...

大人になり仕事をするようになると、社員、上司、部下、同僚になりうる。働いている時は、ワーカー(Woker)であるが、仕事を終えて、レストランで食事をしている間はお客さんになる。会社でふんぞり返ってる偉い人も、ひとたび会社の外へ出てしまえば、くびれたおっさんでしかないのだ。誰かから見たら、優しい人でも、ほかの誰かから見たら、意地悪な人、怖い人かもしれない。つまり、どんな人間も確実に複数の仮面を持っており、それを使い分けているわけである。われわれは、役者でもありピエロでもある。違う言葉を使って表現しているだけで、役者だろうがピエロだろうがつまるところ本質は同じである。

さて、仮面をいくつも持ち、そしてそれを場面・場面で使い分けているみなさま。あなたは、いったい、いつ自分になっているのだろうか。誰かから見た自分ではなく、何者でもない“わたし”という、純粋に自分自身という生き物でいられるのは、実は、ひとりっきりでいる時だけなのではないだろうか。



2020年という年は、ひとりでいる時間が今までにないくらい増えた年であった。
むろん、それはウィルスの影響が大きい。

わたしは、ひとりっきりになって、静かな部屋で、ひとりで過ごす時間が増えて、前よりも確実にあれこれ思考することが増え、たまに寂しくなって友達にLINEで通話しては、8時間ほど通話をするという頭のおかしなことをする時もあるが、ひとりっきりでいることにはだんだん慣れてきた。そして、それが心地よく感じる頃には、もはやひとりで過ごす時間が多いことの方が普通のことになってきた。

それで、去年は本を執筆してみたり、昔好きだった絵を描いてみるようになったし、投資の勉強や、歴史の勉強、哲学やアートについて学びだした。それで、ついに今日ヴァイオリンを買った。

真っ白いヴァイオリンだ。ピアノやギターは過去にやっていたことがあるけれど、ヴァイオリンには触ったことすらなかった。でも、息抜きに、1日に2時間(くらいが理想だが)いや、1時間でも、30分でもいいから触って、演奏して、学んでいけば十年後には簡単な曲のひとつやふたつくらいは弾けるようになるだろう。
そんなゆるゆるな算段から買ったのであるが、わたしは正直とてもわくわくしている。

新しいことを始めるというのは、どうしてこんなにもわくわくして楽しいのだろうか。わたしは、前に一度かなりひどい鬱状態になったことがあるのだけれど、その頃は何かに対して興味を持つということもなかった気がする。

誰かと接する時は、仮面をかぶらなくてはならない。というか、相手というフィルターを通してわたしが存在するのだから、どうしてもある意味では仮面を被った存在にしかなり得ないのだけれど。

だから、ひとりでいる、何者でもないただひとりの人間、ただの、弱くて無力で大したことのない生き物である自分が自分らしくいられるひとりの時間をもっと大切にしつつ、それでいて、楽しいものにしてやろうと思う。
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