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第5章
ダブルデート・スクランブル⑤ ~慌てる二郎、パニクる三佳を悩ます~
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剛が席を離れて1分経ったか経たないうちに、三佳は隣の席に剛が戻った気配を感じて視線を向けた。
「ごめんよ。何度も邪魔してしまって。あれからどうなった?」
剛らしき人物はよく分からない謝罪の言葉の後に、つい1分程前まで一緒に見て居たはずの映画の内容を確認するような問いかけをしてきた。
「あれ、随分早い戻りだね。えっと全然時間も経ってないし特に話は進んでないけど・・」
(剛君、何を言っているのかな。さっきまでの記憶がなくなったみたいなこと言っているけど、どうかしたのかな)
三佳が疑問と不信を感じて小声で返事をしながら、チラリと剛の顔を覗くとそこには全く予想だにしない顔があった。
「さすがに30分近く経っているしそんなこと無いでしょ。俺が見ていたときは町中でドンパチやっていたシーンだけど、これどう見ても宝の山とかあるし、骸骨の海賊みたい連中もいるし、大分話が進んだんじゃないの?」
そんなことを言いながら座席においてあるポップコーンを口に放りこみ、手元の飲み物が見当たらずあちこち視線を動かす二郎がいた。
(え?ど、ど、どういうこと?なんで二郎君が私の隣に座って映画を見ているの?さっきまで剛君と映画を見ていたんだよね、私。これはもしかして幻覚。そう、そうよ。朝二郎君の後ろ姿が見えたのも、今隣に二郎君が座っているのも全部幻覚で私の勘違いよ。きっと変に二郎君の事を考えないようにしていたから、逆に意識して剛君が二郎君に見えただけよ。だから、もう一度落ち着いて確認したらそこには剛君がいるはずよ。今日私は剛君とデートに来た。今日私は剛君とデートに来た。よし!)
三佳は顔を伏せ自分の思い違いだと言い聞かせるように頭の中で言葉を繰り返し、満を持して改めて隣に座る男の顔をのぞき込んだ。
二郎がいた。
「どうして???」
三佳は息を止めるような小さな声でつぶやき、再び頭を抱え込んで顔を伏した。
(一体どういうこと?何が起きているの?剛君がいるはずの席でどうして二郎君がポップコーンを食べているの?)
「おーい、どうした?大丈夫か?」
何だか様子のおかしい動きを見せる四葉であるはずの人物を心配し声を掛けるも、反応が無いためしばらくそっとして置いた方が良いのかと思いやっと一息ついたところで、二郎は自分の席から3列程前に座る客に暗い上映室の中でも分かる明るい金髪の女性がいることに気がついた。
(随分明るい金髪の人だな。まるでレベッカみたいだな)
そんなことをふと思い2つ隣の席に座っているはずのレベッカに視線を向けると、そこにはレベッカの倍くらい大きな頭と豊満なボディーを持った中年のおっさんがポップコーンをボリボリと食べながら、スクリーンを食い入るように見つめていた。
(うん?)
二郎は頭の上に大きな?マークを浮かべながら、ゆっくりと正面に視線を戻し、再び先程見つけた3列前に座る金髪の女性を見ると、タイミング良くその女性が隣の黒髪の女性の方を向き横顔が露わになったところで、目をパッとを大きく見開いて凝視した。
その金髪の女性は紛れもなくレベッカであった。
(ふぁ!?どうしてレベッカがそこに?・・・じゃこの隣の女は誰だ?)
二郎は何度も2つ隣に座る中年のおっさん、3列前に座るレベッカ、そして隣で頭を抱えてうずくまる女性を見渡し、ようやく一つの回答を導き出していた。
(そういうことか。つまり、慌てて戻ってきたせいで座る席を間違えたのか。俺以外に上映中に中座する人間なんていないと思っていたから、つい空いている席が自分の席だと勘違いして座ってしまったんだ。あぁ何やってんだ、俺は!とにかく隣の女性が気付かない内にとんずらするしかない。本当にお騒がせしてすいません。それと勝手にポップコーン食べてごめんなさい)
一瞬頭が真っ白になるも、とにかくこの状況を急いで脱しなくてはいけないと結論を下した二郎は心の中で隣の女性に深く謝罪をしつつも、素早く足音を立てないように上映室から出て、もう一方の忍の待つ上映室へ逃げ帰って行くのであった。
そんな二郎の逃走にも気付かずしばらく頭を抱えていた三佳の元に、万全の状態になって戻ってきた剛が三佳に声を掛けて言った。
「三佳ちゃん、どうかしたの?大丈夫?」
剛の声に意識を取り戻した三佳が顔を上げると、そこには間違えなく二郎ではなく剛の姿を確認してホッと息を吐いて返事をした。
「え?本当に、剛君、だよね?」
「あぁ俺だけど。大丈夫?ごめんね。集中しているところ気を削いでしまって。もう大丈夫だから」
「え、あぁうん」
三佳はなんとか正気を取り戻して剛に返事を返すも、先程目撃した二郎の姿をした何かの正体が気になり、それ以降映画に全く集中できずに残りの時間を過ごすのであった。
(さっきの二郎君は一体どこから現れたの?と言うか、本当にあれは二郎君だったのかな。私変な夢でも見ていたのかな。とにかく剛君が戻ってきてくれて良かったわ。あー、私どうかしちゃったのかな。いるわけがない二郎君の姿が見えるなんて、部活もしてないのに疲れているのかな。は~)
何度も二つの上映室を行き来していることで忍と四葉に要らぬ心配を掛けていた二郎は、遂には戻る席を間違え、この日、偶然同じ場所、同じ時間、同じ映画を見ていた全くダブルデートに関係のない三佳にまで迷惑を掛けるという罪深い失態を犯してながら、二郎のダブルデートは終盤を迎えるのであった。
「ごめんよ。何度も邪魔してしまって。あれからどうなった?」
剛らしき人物はよく分からない謝罪の言葉の後に、つい1分程前まで一緒に見て居たはずの映画の内容を確認するような問いかけをしてきた。
「あれ、随分早い戻りだね。えっと全然時間も経ってないし特に話は進んでないけど・・」
(剛君、何を言っているのかな。さっきまでの記憶がなくなったみたいなこと言っているけど、どうかしたのかな)
三佳が疑問と不信を感じて小声で返事をしながら、チラリと剛の顔を覗くとそこには全く予想だにしない顔があった。
「さすがに30分近く経っているしそんなこと無いでしょ。俺が見ていたときは町中でドンパチやっていたシーンだけど、これどう見ても宝の山とかあるし、骸骨の海賊みたい連中もいるし、大分話が進んだんじゃないの?」
そんなことを言いながら座席においてあるポップコーンを口に放りこみ、手元の飲み物が見当たらずあちこち視線を動かす二郎がいた。
(え?ど、ど、どういうこと?なんで二郎君が私の隣に座って映画を見ているの?さっきまで剛君と映画を見ていたんだよね、私。これはもしかして幻覚。そう、そうよ。朝二郎君の後ろ姿が見えたのも、今隣に二郎君が座っているのも全部幻覚で私の勘違いよ。きっと変に二郎君の事を考えないようにしていたから、逆に意識して剛君が二郎君に見えただけよ。だから、もう一度落ち着いて確認したらそこには剛君がいるはずよ。今日私は剛君とデートに来た。今日私は剛君とデートに来た。よし!)
三佳は顔を伏せ自分の思い違いだと言い聞かせるように頭の中で言葉を繰り返し、満を持して改めて隣に座る男の顔をのぞき込んだ。
二郎がいた。
「どうして???」
三佳は息を止めるような小さな声でつぶやき、再び頭を抱え込んで顔を伏した。
(一体どういうこと?何が起きているの?剛君がいるはずの席でどうして二郎君がポップコーンを食べているの?)
「おーい、どうした?大丈夫か?」
何だか様子のおかしい動きを見せる四葉であるはずの人物を心配し声を掛けるも、反応が無いためしばらくそっとして置いた方が良いのかと思いやっと一息ついたところで、二郎は自分の席から3列程前に座る客に暗い上映室の中でも分かる明るい金髪の女性がいることに気がついた。
(随分明るい金髪の人だな。まるでレベッカみたいだな)
そんなことをふと思い2つ隣の席に座っているはずのレベッカに視線を向けると、そこにはレベッカの倍くらい大きな頭と豊満なボディーを持った中年のおっさんがポップコーンをボリボリと食べながら、スクリーンを食い入るように見つめていた。
(うん?)
二郎は頭の上に大きな?マークを浮かべながら、ゆっくりと正面に視線を戻し、再び先程見つけた3列前に座る金髪の女性を見ると、タイミング良くその女性が隣の黒髪の女性の方を向き横顔が露わになったところで、目をパッとを大きく見開いて凝視した。
その金髪の女性は紛れもなくレベッカであった。
(ふぁ!?どうしてレベッカがそこに?・・・じゃこの隣の女は誰だ?)
二郎は何度も2つ隣に座る中年のおっさん、3列前に座るレベッカ、そして隣で頭を抱えてうずくまる女性を見渡し、ようやく一つの回答を導き出していた。
(そういうことか。つまり、慌てて戻ってきたせいで座る席を間違えたのか。俺以外に上映中に中座する人間なんていないと思っていたから、つい空いている席が自分の席だと勘違いして座ってしまったんだ。あぁ何やってんだ、俺は!とにかく隣の女性が気付かない内にとんずらするしかない。本当にお騒がせしてすいません。それと勝手にポップコーン食べてごめんなさい)
一瞬頭が真っ白になるも、とにかくこの状況を急いで脱しなくてはいけないと結論を下した二郎は心の中で隣の女性に深く謝罪をしつつも、素早く足音を立てないように上映室から出て、もう一方の忍の待つ上映室へ逃げ帰って行くのであった。
そんな二郎の逃走にも気付かずしばらく頭を抱えていた三佳の元に、万全の状態になって戻ってきた剛が三佳に声を掛けて言った。
「三佳ちゃん、どうかしたの?大丈夫?」
剛の声に意識を取り戻した三佳が顔を上げると、そこには間違えなく二郎ではなく剛の姿を確認してホッと息を吐いて返事をした。
「え?本当に、剛君、だよね?」
「あぁ俺だけど。大丈夫?ごめんね。集中しているところ気を削いでしまって。もう大丈夫だから」
「え、あぁうん」
三佳はなんとか正気を取り戻して剛に返事を返すも、先程目撃した二郎の姿をした何かの正体が気になり、それ以降映画に全く集中できずに残りの時間を過ごすのであった。
(さっきの二郎君は一体どこから現れたの?と言うか、本当にあれは二郎君だったのかな。私変な夢でも見ていたのかな。とにかく剛君が戻ってきてくれて良かったわ。あー、私どうかしちゃったのかな。いるわけがない二郎君の姿が見えるなんて、部活もしてないのに疲れているのかな。は~)
何度も二つの上映室を行き来していることで忍と四葉に要らぬ心配を掛けていた二郎は、遂には戻る席を間違え、この日、偶然同じ場所、同じ時間、同じ映画を見ていた全くダブルデートに関係のない三佳にまで迷惑を掛けるという罪深い失態を犯してながら、二郎のダブルデートは終盤を迎えるのであった。
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