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第5章
二郎の散歩③ ~波乱の予感~
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3年4組から隣の5組に移動した二郎は適当な席に座るとすみれを一瞥して話を促すように声を掛けた。
「それで話って言うのは、つまり忍の事なんだよな」
二郎の言葉に小さく頷きながら、表情を曇らせながらすみれが話し始めた。
「その通りだよ。この前騒動の解決したことの報告も兼ねて忍と二人でカフェに行ってね。その時色々と話をしたから、是非二郎君には話して置いた方が良いと思ってね」
「はぁー、まだあいつ怒っているのか?俺としては悪気があったわけじゃないし、俺はアイツのことを避けているわけじゃないし、これ以上どうしようもないんだがな」
二郎が諦めたようにつぶやくとすみれがそれを否定するように言った。
「二郎君、違うのよ。忍は二郎君の事を怒っているわけじゃなくて、むしろ悪いと思っているのよ。だけど、その、なんというか、引っ込みが付かなくなってどうやって二郎君と接して良いのかわからなくなっちゃったみたいで、忍も参っているのよ」
「なんだそりゃ、別に俺は怒っているわけでもないし、前と変わらず声かけてくれれば良いのに、何をそんなに躊躇しているんだよ、アイツは」
二郎はすみれの言葉を呆れたよう返答するとすみれが少し不満そうに睨み付けた。
「二郎君さぁ、どうでも良いことには鋭いくせにどうしてこういうことには鈍感な訳?忍に聞いたよ。忍が二郎君に恥ずかしい所を見られたって。それで恥ずかしくて二郎君と顔を合わせられないって。忍だって乙女な女子なんだから、普通男子の方から気を遣って仲直りしてあげるのが当然でしょ」
「え!すみれお前、忍からあの日の事を聞いたのかよ。よく自分から話したな」
「いや、その詳しくは知らないよ。ただ話の流れで忍が自分から話してくれて概要だけは聞いたんだ」
「マジか、言っておくが俺は本当に何も悪気があったわけじゃなく偶然アイツがいきなり下着姿で現れて自爆しただけで俺は何も悪くないんだぞ。そこんところを勘違いしないでくれよ」
二郎は改めて身の潔白を主張するようにすみれに食い下がって言った。
「それはわかっているから、それに関しては忍も自分の非を認めているから安心してってば」
「そうか、それならいいんだが。まぁ何だ、そういうわけで俺がわざわざ謝る必要なんて全くないんだよ。不幸な事故だったけど、俺も気にしてないしアイツにも気にせず普段のように接して大丈夫だと伝えてくれよ」
二郎はほとほとうんざりだと言った様子で忍との間を取り持つようにすみれに懇願した。
「でも、二郎君、見たんだよね。忍のあられもない姿を。それはそれとしてちゃんと慰謝料は払わなければダメだんじゃないかな。私だって忍と同じ境遇だったら落ち込むし、相手が仲の良い男子だったら優しく声を掛けて欲しいって思うけどな。二郎君だって忍の事を大切な相手だと思っているでしょ」
すみれは二郎の弱みにつけ込むように、また感情を揺さぶるように二郎を説得した。
「別に大切な相手なんてそんな風には思ってないが、まぁ数少ない仲の良い友人とは思っているけどさ。慰謝料って言うのはちょっとなぁ。むしろ俺が被害者みたいなモノだと思うけど」
「二郎君、ここでごちゃごちゃ言うのは男らしくないぞ。一君なら何も言わずに了解するはずだし、親友の二郎君にもそう言って欲しいよ、私は。それにどうして二郎君は全然関わりもなかった亜美菜っちに優しくしたり、いつだかほぼ初対面の四葉さんを五十嵐君から守ったりして男気を見せるのに、一番付き合いが長くて関係の深い忍にはこんなに冷たくするのよ。そんなの忍がかわいそうじゃん。もっと忍に優しくしてあげてよ。ああ見えて忍って凄い乙女で傷つきやすくて、純粋でそれで凄く可愛いんだよ。もうあの時の忍の顔を二郎くんにも見せたかったよ。絶対に放っておけなくなるくらい可愛かったんだから。本当に二郎君って朴念仁というか人でなしというか、とにかく人間関係についてもっと真剣に向き合わなきゃダメだぞ」
すみれはカフェで二郎への想いを告白する忍の乙女100%の様子を思い出し、一人テンションを上げて熱弁していたが、二郎は冷めた目つきでそれを見守っていた。
「まぁ落ち着け、すみれよ。お前がアイツのことをいかに好きなのかはよく分かったから。はぁー、全く分かったよ。つまり、お前は落ち込む忍を元気づけたいから、俺からアイツに声をかけて仲直りしてほしいってことだな。俺の事なんて大して気にしているわけじゃなくて、自分の失態を悔いているだけだと思うけど、すみれがそこまで言うならとりあえず声掛けてみれば良いんだな。これで満足か」
「はー、もうそれで良いからとりあいずそうしてあげてよ」
(この鈍感野郎、自分が忍に惚れられているなんてこれっぽっちも考えてないわね、こりゃ。本当にどうすりゃ良いのよ、この恋愛遭難者は。もうムカついたから、この際もっとお節介焼いてやるわ。忍のためにも二郎君にはもっと色々やってもらって気付いてもらうしかないわね)
「いや待って、大事なことを伝えるのを忘れていたわ。実はこの前忍が言っていたことがあってね。今気になる映画があって気晴らしにそれを見に行けたら良いなって言っていたのよ。だから、二郎君には今回の仲直りの証として忍を映画に誘ってあげて欲しいのよ」
すみれの突拍子もない提案にさすがの二郎も何を言ってんだこいつはと言った表情を見せた。
「はぁ、突然何を言うかと思えば、映画だぁ?アイツが俺とわざわざ映画を見に行きたがるわけ無いだろう。映画が見たいならすみれや三佳、エリカでも誘ってゆっくり見に行ってこいよ」
「何を言っているのよ。二郎君が行かないでどうするのよ。これは忍に対する二郎君の仲直りの証なのだから、私ら女子と行っても意味ないでしょ。それに二人じゃないから安心して。さすがにいきなり二人でデートは難易度が高すぎると思うから私と一君も入れて4人でダブルデートって言う形でいけば万事解決だわ。そのときに忍と仲直り出来るように私らが時間を作るから二郎君からちゃんと忍に優しくしてあげてよ、わかった。もういい加減諦めて、私の言うことを聞きなさい。これでもダメなら今度こそ私が忍を説得して仲直りするように言うから今回は私の計画に付き合って、お願い」
すみれは半ば強引に二郎と忍の間を取り持つと宣言し、四の五の言う二郎を黙らせるように押し切ろうとした。
「あー、もう、わかったよ。勝手にしろ。その代わり責任持ってくれよ。俺だってアイツに恨まれたくないし、強引な事がしたいわけじゃないんだぞ。これ以上関係がおかしくなったら恨むぞ、すみれ」
「安心して大丈夫だから。忍は絶対に喜ぶし、きっと二郎君だって色々気付くこともあると思うし、なによりも忍の可愛い姿を見られると思うから楽しみにしておくようにね。よーし、そうと決まれば私に任せて!私だって一君との休日デートは初めてなんだからテンション上がってきたわ。忍と一緒に服でも買いに行こうかな。でも、お小遣いも少なし節約しなきゃダメだけど、でも初めてのデートには可愛い服着たいし、忍と相談しなきゃだめかな、二郎君は一君の好みとか知っている?今度ゆっくり教えて欲しいのだけどいいかな。ていうか、学校の帰りに服屋に一緒に行って、それで一君を驚かせる可愛い服を選んでよ。そのためにも二郎君は一君の服の好みを調査しておいて、お願いね。あー楽しみだな~♪」
すみれは以前から計画していたダブルデート作戦に二郎を参加させることに成功した事に上機嫌となり、途中から本来の目的を忘れて自分と一のデートの心配を始めていた。
「そうですか・・・そりゃ楽しみにしておきます」
(すみれのこの自信は一体どこから湧いて出てくるんだろうな。それにしても本当に見ていて飽きない奴だな。性格も素直で良い子だとは思うが、一はどうしてこんな愉快な女子と付き合うなんて面白い決断をしたんだろうな。やっぱり一はある意味天才だわな)
一人盛り上がるすみれをどこか達観した表情で見つめる二郎は、なんだかんだですみれと一を含めた忍とのダブルデートの計画に組み込まれることとなり、これまた二郎達の周囲を巻き込む一波乱を呼び込む青春の1ページとなるのであった。
「それで話って言うのは、つまり忍の事なんだよな」
二郎の言葉に小さく頷きながら、表情を曇らせながらすみれが話し始めた。
「その通りだよ。この前騒動の解決したことの報告も兼ねて忍と二人でカフェに行ってね。その時色々と話をしたから、是非二郎君には話して置いた方が良いと思ってね」
「はぁー、まだあいつ怒っているのか?俺としては悪気があったわけじゃないし、俺はアイツのことを避けているわけじゃないし、これ以上どうしようもないんだがな」
二郎が諦めたようにつぶやくとすみれがそれを否定するように言った。
「二郎君、違うのよ。忍は二郎君の事を怒っているわけじゃなくて、むしろ悪いと思っているのよ。だけど、その、なんというか、引っ込みが付かなくなってどうやって二郎君と接して良いのかわからなくなっちゃったみたいで、忍も参っているのよ」
「なんだそりゃ、別に俺は怒っているわけでもないし、前と変わらず声かけてくれれば良いのに、何をそんなに躊躇しているんだよ、アイツは」
二郎はすみれの言葉を呆れたよう返答するとすみれが少し不満そうに睨み付けた。
「二郎君さぁ、どうでも良いことには鋭いくせにどうしてこういうことには鈍感な訳?忍に聞いたよ。忍が二郎君に恥ずかしい所を見られたって。それで恥ずかしくて二郎君と顔を合わせられないって。忍だって乙女な女子なんだから、普通男子の方から気を遣って仲直りしてあげるのが当然でしょ」
「え!すみれお前、忍からあの日の事を聞いたのかよ。よく自分から話したな」
「いや、その詳しくは知らないよ。ただ話の流れで忍が自分から話してくれて概要だけは聞いたんだ」
「マジか、言っておくが俺は本当に何も悪気があったわけじゃなく偶然アイツがいきなり下着姿で現れて自爆しただけで俺は何も悪くないんだぞ。そこんところを勘違いしないでくれよ」
二郎は改めて身の潔白を主張するようにすみれに食い下がって言った。
「それはわかっているから、それに関しては忍も自分の非を認めているから安心してってば」
「そうか、それならいいんだが。まぁ何だ、そういうわけで俺がわざわざ謝る必要なんて全くないんだよ。不幸な事故だったけど、俺も気にしてないしアイツにも気にせず普段のように接して大丈夫だと伝えてくれよ」
二郎はほとほとうんざりだと言った様子で忍との間を取り持つようにすみれに懇願した。
「でも、二郎君、見たんだよね。忍のあられもない姿を。それはそれとしてちゃんと慰謝料は払わなければダメだんじゃないかな。私だって忍と同じ境遇だったら落ち込むし、相手が仲の良い男子だったら優しく声を掛けて欲しいって思うけどな。二郎君だって忍の事を大切な相手だと思っているでしょ」
すみれは二郎の弱みにつけ込むように、また感情を揺さぶるように二郎を説得した。
「別に大切な相手なんてそんな風には思ってないが、まぁ数少ない仲の良い友人とは思っているけどさ。慰謝料って言うのはちょっとなぁ。むしろ俺が被害者みたいなモノだと思うけど」
「二郎君、ここでごちゃごちゃ言うのは男らしくないぞ。一君なら何も言わずに了解するはずだし、親友の二郎君にもそう言って欲しいよ、私は。それにどうして二郎君は全然関わりもなかった亜美菜っちに優しくしたり、いつだかほぼ初対面の四葉さんを五十嵐君から守ったりして男気を見せるのに、一番付き合いが長くて関係の深い忍にはこんなに冷たくするのよ。そんなの忍がかわいそうじゃん。もっと忍に優しくしてあげてよ。ああ見えて忍って凄い乙女で傷つきやすくて、純粋でそれで凄く可愛いんだよ。もうあの時の忍の顔を二郎くんにも見せたかったよ。絶対に放っておけなくなるくらい可愛かったんだから。本当に二郎君って朴念仁というか人でなしというか、とにかく人間関係についてもっと真剣に向き合わなきゃダメだぞ」
すみれはカフェで二郎への想いを告白する忍の乙女100%の様子を思い出し、一人テンションを上げて熱弁していたが、二郎は冷めた目つきでそれを見守っていた。
「まぁ落ち着け、すみれよ。お前がアイツのことをいかに好きなのかはよく分かったから。はぁー、全く分かったよ。つまり、お前は落ち込む忍を元気づけたいから、俺からアイツに声をかけて仲直りしてほしいってことだな。俺の事なんて大して気にしているわけじゃなくて、自分の失態を悔いているだけだと思うけど、すみれがそこまで言うならとりあえず声掛けてみれば良いんだな。これで満足か」
「はー、もうそれで良いからとりあいずそうしてあげてよ」
(この鈍感野郎、自分が忍に惚れられているなんてこれっぽっちも考えてないわね、こりゃ。本当にどうすりゃ良いのよ、この恋愛遭難者は。もうムカついたから、この際もっとお節介焼いてやるわ。忍のためにも二郎君にはもっと色々やってもらって気付いてもらうしかないわね)
「いや待って、大事なことを伝えるのを忘れていたわ。実はこの前忍が言っていたことがあってね。今気になる映画があって気晴らしにそれを見に行けたら良いなって言っていたのよ。だから、二郎君には今回の仲直りの証として忍を映画に誘ってあげて欲しいのよ」
すみれの突拍子もない提案にさすがの二郎も何を言ってんだこいつはと言った表情を見せた。
「はぁ、突然何を言うかと思えば、映画だぁ?アイツが俺とわざわざ映画を見に行きたがるわけ無いだろう。映画が見たいならすみれや三佳、エリカでも誘ってゆっくり見に行ってこいよ」
「何を言っているのよ。二郎君が行かないでどうするのよ。これは忍に対する二郎君の仲直りの証なのだから、私ら女子と行っても意味ないでしょ。それに二人じゃないから安心して。さすがにいきなり二人でデートは難易度が高すぎると思うから私と一君も入れて4人でダブルデートって言う形でいけば万事解決だわ。そのときに忍と仲直り出来るように私らが時間を作るから二郎君からちゃんと忍に優しくしてあげてよ、わかった。もういい加減諦めて、私の言うことを聞きなさい。これでもダメなら今度こそ私が忍を説得して仲直りするように言うから今回は私の計画に付き合って、お願い」
すみれは半ば強引に二郎と忍の間を取り持つと宣言し、四の五の言う二郎を黙らせるように押し切ろうとした。
「あー、もう、わかったよ。勝手にしろ。その代わり責任持ってくれよ。俺だってアイツに恨まれたくないし、強引な事がしたいわけじゃないんだぞ。これ以上関係がおかしくなったら恨むぞ、すみれ」
「安心して大丈夫だから。忍は絶対に喜ぶし、きっと二郎君だって色々気付くこともあると思うし、なによりも忍の可愛い姿を見られると思うから楽しみにしておくようにね。よーし、そうと決まれば私に任せて!私だって一君との休日デートは初めてなんだからテンション上がってきたわ。忍と一緒に服でも買いに行こうかな。でも、お小遣いも少なし節約しなきゃダメだけど、でも初めてのデートには可愛い服着たいし、忍と相談しなきゃだめかな、二郎君は一君の好みとか知っている?今度ゆっくり教えて欲しいのだけどいいかな。ていうか、学校の帰りに服屋に一緒に行って、それで一君を驚かせる可愛い服を選んでよ。そのためにも二郎君は一君の服の好みを調査しておいて、お願いね。あー楽しみだな~♪」
すみれは以前から計画していたダブルデート作戦に二郎を参加させることに成功した事に上機嫌となり、途中から本来の目的を忘れて自分と一のデートの心配を始めていた。
「そうですか・・・そりゃ楽しみにしておきます」
(すみれのこの自信は一体どこから湧いて出てくるんだろうな。それにしても本当に見ていて飽きない奴だな。性格も素直で良い子だとは思うが、一はどうしてこんな愉快な女子と付き合うなんて面白い決断をしたんだろうな。やっぱり一はある意味天才だわな)
一人盛り上がるすみれをどこか達観した表情で見つめる二郎は、なんだかんだですみれと一を含めた忍とのダブルデートの計画に組み込まれることとなり、これまた二郎達の周囲を巻き込む一波乱を呼び込む青春の1ページとなるのであった。
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