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第5章

成田忍の憂鬱③ ~辛子マヨネーズの女達~

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 放課後、エリカと三佳が仲良く二人で教室を出るのを見送ると、すみれと忍も部活後に落ち合う約束をして一端部活のために別れた。

 しばらくして夕方6時過ぎ忍が部活を終えて部室で着替えていると携帯が鳴った。

「もしもし、すみれ。今あたしも終わって着替えているところだよ。あと5分くらいで準備できるよ。うん、わかった。それじゃすぐ行くから待っててね」

 同じタイミングで部活を終えたすみれからの連絡で待ち合わせをした忍は、急いで身支度を調えてすみれと校門前で落ち合った。

 学校から目的地のカフェがある府中駅周辺に向かう道すがらすみれは忍にさりげなく話し掛けた。

「そういえば二人でこうして時間作って話をするのって初めてじゃない」

「そうかもしれないね。何かするときは大体エリカか三佳がいたから、二人きりって言うのは初めてかもね」

「今だから言うけど、2年になっていきなり私が声をかけた時は驚いたでしょ。あの時は私も正直忍がこんな風に友達になってくれるとは思ってなかったから、誘った私の方もビックリだったんだよね、実は」

「そうなの、そんな感じしなかったけど。それよりもあたしはクラスが替わって早々に三佳とエリカと仲良くしていたすみれの事をどんだけコミュニケーション能力が高い子なのかって感心していたよ。まぁ馴れ馴れしい子だなとも思ったけどさ。それでまた3人の雰囲気がなんともいびつというかデコボコしていて変な集まりだと思ったんだけど、それが上手くはまっているというか言葉では言い表せない絶妙な組み合わせでさ、まぁ面白そうというか退屈しないかなと思って、それでグループに加わろうと思ったんだよ」

「なにそれ、そんな風に思っていたの。そんなに私達のグループって変だった?」

「いやだってさ、方やクラスの委員長で真面目でいかにも大人しそうな文科系女子に、学校で一番の有名人で脳天気な美少女、それに加えてちょっと我の強そうな今どきのイケイケギャルだよ。どう考えても相容れない水と油、いや、酢と油と卵黄だったでしょ」

「ちょっと我の強そうなイケイケギャルって私の事だよね、ギャルなのは認めるけど、そんなに我が強そうに見えたの。それに酢と油と卵黄って一体何よ」

「まぁ初めて会ったときはすみれの性格とか知らないし、若干ギャルへの偏見はあったけど、まぁ当たらずとも遠からずでしょ。それにその3つはよく混ぜるとマヨネーズになる材料の事で、まぁ要するに合わせてみたら相性は良かったって事よ」

「もうなにそれ、それじゃ私ら3人がマヨネーズなら、忍はマヨネーズと相性抜群の辛子ってところかな。私ら3人にピリッとスパイスをくれる辛子は忍ぽくって良いでしょ」

「ハハハ、上手いこと言うね。それじゃ、存在感の強い酢はすみれで、元気の塊で幸福の象徴の黄色い卵黄は三佳、グループの潤滑油の油はエリカだね。本当に4人ともほとんど共通点もないし、性格もバラバラなのによく仲良くなれたものだよ。その事に関してはこのグループを作ってくれたすみれに感謝だね」

 忍は改め自分一人ではおそらく友人関係を作ることがなかったであろう3人と引き合わせてくれたすみれに感謝しつつも、本当に不思議な関係だと実感していた。

 そんな久しぶりに見せた忍の笑顔に一安心をしたすみれは、この調子で忍の悩みも解消できるように頑張ろうと一に頼まれた忍の元気づけ作戦を実行しようと気合いを入れるのであった。
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