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第4章
人の噂も七十五日㉟ ~舌戦、舌戦、また舌戦~
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亜美菜と瞬を犯人と断定したエリカは一呼吸の後、その推理を話し始めた。
「鈴木さん、あなたあの日現場にいたわね。一君の騒動があった現場の近くであなたを目撃した人がいるのよ。それと噂の出所についてはあなたのクラスの男子達から聞いたわ。噂の出所を教えてもらえるように何とか説得したら、忍と三佳の噂に関してあなたの名前を皆が挙げたわ」
エリカはまず主犯と考える亜美菜に向かって推理をぶつけた。
「それはどうだかね。大人数が居るお祭りの会場でちょっと見かけたくらいで確実に私だってどうやって確認するのよ。余程知り合いの人間じゃなければ普通無理でしょそんなこと。それに噂だって私も他の人から聞いた事を話しただけで、私が情報源って言う証拠にはならないでしょ。こんなことだけで私を犯人扱いするのはやめてもらいたいのだけれども」
亜美菜は冷静にそしてエリカを睨み付けながら反論した。
「確かにそうかもしれないわね。でもあなたを見かけた子が間違えるわけないわ、だってそれはあなたがよく知る同じクラスの人だからよ」
「ふん、そんな嘘で私を陥れようとする友達甲斐のない子がウチのクラスにいるとは思えないけど」
亜美菜は内心で苛立ちながらも余裕を装ってエリカに答えを求めた。なぜなら、亜美菜はクラスの女子の多くを派閥に引き入れており、また派閥外の女子も亜美菜の報復を恐れて極力関わりを持たないようにしているため、自分を裏切ってまで、エリカ達に協力をして喧嘩を売るような生徒が居るとは思えなかったからだった。
「それはね、宮森さんよ。あなたと宮森さんは何かとクラスでも言い合いになることがあるみたいね。仲が良い友達以上に彼女はあなたをよく見ているし、それこそ他の誰かと見間違えるって事はないでしょ」
巴の名前を聞いた亜美菜がそこで初めて顔をしかめて舌打ちして当日の記憶を思い出していた。
あの日祭りに来ていた亜美菜は訳あって会場内を散策していた。そこで場所取りシートが並ぶ一部で何やらざわめきが起こっていることに気がつき野次馬を確認しようと、人々の中を入って行った。すると運良く探し人の一人である一を発見したのであった。そこでは一に謎の女が詰め寄り泣き叫ぶシーンが繰り広げられており、その様子を周囲の人が好奇の目で見守る状況だった。そして、それを見て居た亜美菜は一瞬その対角線上の野次馬の中にいる水色の浴衣を着た女と目が合った気がしてすぐに目をそらした。亜美菜は直感で知り合いの人間に見られたような気がしていた。しかも、それは自分にとって学校生活においてのすみれと並んで最も嫌う天敵である巴のような気がしていた。しかし、普段の巴の姿から想像できない浴衣を纏った様子から確信を持てなかったため再びその姿を確認しようとするも、どうにも落ち着かない亜美菜はその場をすぐさま離れることにした。出来れば一に泣きつく女の正体が誰なのか知りたい思いもあったが、この場では誰かに見られたくないと言う思いが勝り渋々群衆の中に身を隠すことにしたのであった。
「宮森の奴、やっぱりあの時・・・・はぁ、そう、あの女か。まぁ宮森なら仕方がないか。あぁそうよ。私は当日お祭りにいたわよ。でも、だからなんだって言うのよ。私はただ地元のお祭りに遊びに来ていただけなのよ。知らなかったの。私の地元は武蔵村山で私が地元で毎年やっているお祭りに居ても何もおかしくないでしょ。その程度で推理なんて言っているわけ。だったら笑わせないでよ」
亜美菜は会場に居たことを渋々ながら認めつつも、自分が会場にいたことの自然さを自分の無罪を主張するように言った。
「地元のお祭り・・・。そう確かに地元が武蔵村山ならあなたが会場に居ることはなにも不自然ではないわ。でも、一君の騒動の現場にはいたことを認めるのね。それはあなたがその出来事を知って、今回の噂を流すことが出来たことを認めることよ」
エリカは一瞬とまどいを見せるもこれまでの自分の考えが間違っていないことを確信するように言った。
「確かに可能性についてはその通りね。でも、偶然会場を歩いていたら何だかざわつく様子に気がついて少し様子が気になって近づいただけよ。そんなの普通でしょ。私はあの騒動の当事者が一ノ瀬君だったなんて今知ったわ。それがなんだって言うのよ。そもそも何で私が馬場さんや成田さんの噂話を言いふらす理由がある訳よ。ハッキリ言ってその二人とはクラスも部活も違うし、全く関わりがないのだから普通に考えればそんな相手の興味も湧かないでしょ。さっきからあなたの妄想話が酷すぎてついてイケないわ」
亜美菜は呆れたようにエリカの話が全くの的外れだと言わんばかりに反論した。
その言葉に待っていましたと言った表情でエリカが切り込んだ。
「それはどうかしらね、鈴木さん。確かに三佳や忍、それに一君や二郎君とは関わりがないかもしれないけど、そこに居るすみれとは少なくない因縁みたいなモノがあるんじゃないの」
その指摘に亜美菜はすぐさまごまかすように言った。
「べ、別に私は橋本さんに対して何も思う事なんてないわよ。ただの元クラスメイトで同じ部活の同級生よ。それに今も仲良く文化際に向けて一緒に演奏のグループを組んでいるくらいなのにそんな相手に何をするって言うのよ」
そのしらを切ったような言葉に、これまで我慢していたすみれが1歩前に出て一言物申そうとしたところでエリカが止めに入った。
「ちょっとあなた!」
「待ってすみれ。当事者のあなたが入ってくると色々と整理がつかなくなると思うから、先に私が話をして、その後に必要あらばすみれが話をして、お願い」
「ふー、分かったわ。とりあえずここはエリカに任せるわ」
二人のやり取りに亜美菜が不機嫌そうに顔を振った。
「ふん、急になんなのよ」
「鈴木さん、あなたは一年の時からすみれを目の敵にしてきた。それはなかなか自分のグループにすみれが入らない事と、もう一つは自分が片思いしている剛に対して、同じく恋心を抱くすみれを恋敵として嫌っていた。しかも、2年になってからは同じ部活の佐々木君を巡って同じような状況になっているのよね、すみれ」
「まぁ状況はちょっと違うけど、大方そんな感じだと思うわ」
エリカの問いかけにウンザリしたようにすみれが答えた。
「あなたは剛を諦めるやいなや同じ部活の佐々木君に好意を持つようになった。だけどここでも一年の時と同じような問題が起きた。すみれの存在よ。すみれと佐々木君は一年の頃からクラスも部活も同じく仲が良かった。すみれは佐々木君に恋心を持つような事はなかったけれど、それを見ていたあなたは違う風に二人の関係を受け取った。あなたにとっては剛の時と同じようにすみれは恋敵であり、さらには剛の時と違って1歩も2歩もすみれにリードされていると考えた。そんなこともあって今年に入ってからは異常なほど佐々木君にアプローチを敢行するもなかなか自分に靡いてくれないことに苛ついていた」
エリカの言葉にこれまで黙って静観していた勇次は参ったような口ぶりで一言言った。
「まぁ確かに鈴木さんとは今年になってから急に仲良くなったかもね」
その勇次の言葉を聞いてエリカが確信を持って話を続けた。
「そんなこんなであなたはすみれに対して悪感情を抱いていた。あなたは何かしらの方法ですみれをギャフンと言わせたいと思っていた。そんな時に今回の夏祭りが行われたのよ。どういった流れかは分からないけど、事前に知っていたのか、偶然会場で知ったのか、あなたはすみれたちが会場にいることを知り、三佳や忍の告白現場を目撃した。おそらく会場に偶然来ていた五十嵐君にも協力してもらったのか、もしくはあなたの友達と共同してすみれたちの行動を見張っていたのね。それで何かすみれやその友達の三佳や忍の弱みでも握ろうと考えていたところで実際に告白が起こったのよ。それに味をしめたあなたは他にも会場に来ている一君や二郎君の後をつけて同じように現場を押さえたところで、学校ですみれの友人達の噂を流して間接的にすみれに嫌がらせをしようと計画を実行した。五十嵐君の動機は私には分からないけども、さっきの二郎君とのやり取りを見る限り二人には何かしらの因縁があって、それを理由に協力をお願いして二人で今回の噂話の騒動を巻き起こした。これが私の推理よ」
エリカの推理を聞いたすみれは大きく納得した様に頷いた。その横で二郎が無言で対面する亜美菜、瞬、勇次の反応を伺った。勇次はいまいち話が飲み込めないと言った様子で首を傾げた。亜美菜は苛つくようにエリカを睨んでいた。
そんな各々がそれぞれの反応を見せたところで、瞬が急に腹を抱えながら笑い出し、これまで溜め込んでいたモノをぶちまけるように大きく呼吸をして話し始めた。
「鈴木さん、あなたあの日現場にいたわね。一君の騒動があった現場の近くであなたを目撃した人がいるのよ。それと噂の出所についてはあなたのクラスの男子達から聞いたわ。噂の出所を教えてもらえるように何とか説得したら、忍と三佳の噂に関してあなたの名前を皆が挙げたわ」
エリカはまず主犯と考える亜美菜に向かって推理をぶつけた。
「それはどうだかね。大人数が居るお祭りの会場でちょっと見かけたくらいで確実に私だってどうやって確認するのよ。余程知り合いの人間じゃなければ普通無理でしょそんなこと。それに噂だって私も他の人から聞いた事を話しただけで、私が情報源って言う証拠にはならないでしょ。こんなことだけで私を犯人扱いするのはやめてもらいたいのだけれども」
亜美菜は冷静にそしてエリカを睨み付けながら反論した。
「確かにそうかもしれないわね。でもあなたを見かけた子が間違えるわけないわ、だってそれはあなたがよく知る同じクラスの人だからよ」
「ふん、そんな嘘で私を陥れようとする友達甲斐のない子がウチのクラスにいるとは思えないけど」
亜美菜は内心で苛立ちながらも余裕を装ってエリカに答えを求めた。なぜなら、亜美菜はクラスの女子の多くを派閥に引き入れており、また派閥外の女子も亜美菜の報復を恐れて極力関わりを持たないようにしているため、自分を裏切ってまで、エリカ達に協力をして喧嘩を売るような生徒が居るとは思えなかったからだった。
「それはね、宮森さんよ。あなたと宮森さんは何かとクラスでも言い合いになることがあるみたいね。仲が良い友達以上に彼女はあなたをよく見ているし、それこそ他の誰かと見間違えるって事はないでしょ」
巴の名前を聞いた亜美菜がそこで初めて顔をしかめて舌打ちして当日の記憶を思い出していた。
あの日祭りに来ていた亜美菜は訳あって会場内を散策していた。そこで場所取りシートが並ぶ一部で何やらざわめきが起こっていることに気がつき野次馬を確認しようと、人々の中を入って行った。すると運良く探し人の一人である一を発見したのであった。そこでは一に謎の女が詰め寄り泣き叫ぶシーンが繰り広げられており、その様子を周囲の人が好奇の目で見守る状況だった。そして、それを見て居た亜美菜は一瞬その対角線上の野次馬の中にいる水色の浴衣を着た女と目が合った気がしてすぐに目をそらした。亜美菜は直感で知り合いの人間に見られたような気がしていた。しかも、それは自分にとって学校生活においてのすみれと並んで最も嫌う天敵である巴のような気がしていた。しかし、普段の巴の姿から想像できない浴衣を纏った様子から確信を持てなかったため再びその姿を確認しようとするも、どうにも落ち着かない亜美菜はその場をすぐさま離れることにした。出来れば一に泣きつく女の正体が誰なのか知りたい思いもあったが、この場では誰かに見られたくないと言う思いが勝り渋々群衆の中に身を隠すことにしたのであった。
「宮森の奴、やっぱりあの時・・・・はぁ、そう、あの女か。まぁ宮森なら仕方がないか。あぁそうよ。私は当日お祭りにいたわよ。でも、だからなんだって言うのよ。私はただ地元のお祭りに遊びに来ていただけなのよ。知らなかったの。私の地元は武蔵村山で私が地元で毎年やっているお祭りに居ても何もおかしくないでしょ。その程度で推理なんて言っているわけ。だったら笑わせないでよ」
亜美菜は会場に居たことを渋々ながら認めつつも、自分が会場にいたことの自然さを自分の無罪を主張するように言った。
「地元のお祭り・・・。そう確かに地元が武蔵村山ならあなたが会場に居ることはなにも不自然ではないわ。でも、一君の騒動の現場にはいたことを認めるのね。それはあなたがその出来事を知って、今回の噂を流すことが出来たことを認めることよ」
エリカは一瞬とまどいを見せるもこれまでの自分の考えが間違っていないことを確信するように言った。
「確かに可能性についてはその通りね。でも、偶然会場を歩いていたら何だかざわつく様子に気がついて少し様子が気になって近づいただけよ。そんなの普通でしょ。私はあの騒動の当事者が一ノ瀬君だったなんて今知ったわ。それがなんだって言うのよ。そもそも何で私が馬場さんや成田さんの噂話を言いふらす理由がある訳よ。ハッキリ言ってその二人とはクラスも部活も違うし、全く関わりがないのだから普通に考えればそんな相手の興味も湧かないでしょ。さっきからあなたの妄想話が酷すぎてついてイケないわ」
亜美菜は呆れたようにエリカの話が全くの的外れだと言わんばかりに反論した。
その言葉に待っていましたと言った表情でエリカが切り込んだ。
「それはどうかしらね、鈴木さん。確かに三佳や忍、それに一君や二郎君とは関わりがないかもしれないけど、そこに居るすみれとは少なくない因縁みたいなモノがあるんじゃないの」
その指摘に亜美菜はすぐさまごまかすように言った。
「べ、別に私は橋本さんに対して何も思う事なんてないわよ。ただの元クラスメイトで同じ部活の同級生よ。それに今も仲良く文化際に向けて一緒に演奏のグループを組んでいるくらいなのにそんな相手に何をするって言うのよ」
そのしらを切ったような言葉に、これまで我慢していたすみれが1歩前に出て一言物申そうとしたところでエリカが止めに入った。
「ちょっとあなた!」
「待ってすみれ。当事者のあなたが入ってくると色々と整理がつかなくなると思うから、先に私が話をして、その後に必要あらばすみれが話をして、お願い」
「ふー、分かったわ。とりあえずここはエリカに任せるわ」
二人のやり取りに亜美菜が不機嫌そうに顔を振った。
「ふん、急になんなのよ」
「鈴木さん、あなたは一年の時からすみれを目の敵にしてきた。それはなかなか自分のグループにすみれが入らない事と、もう一つは自分が片思いしている剛に対して、同じく恋心を抱くすみれを恋敵として嫌っていた。しかも、2年になってからは同じ部活の佐々木君を巡って同じような状況になっているのよね、すみれ」
「まぁ状況はちょっと違うけど、大方そんな感じだと思うわ」
エリカの問いかけにウンザリしたようにすみれが答えた。
「あなたは剛を諦めるやいなや同じ部活の佐々木君に好意を持つようになった。だけどここでも一年の時と同じような問題が起きた。すみれの存在よ。すみれと佐々木君は一年の頃からクラスも部活も同じく仲が良かった。すみれは佐々木君に恋心を持つような事はなかったけれど、それを見ていたあなたは違う風に二人の関係を受け取った。あなたにとっては剛の時と同じようにすみれは恋敵であり、さらには剛の時と違って1歩も2歩もすみれにリードされていると考えた。そんなこともあって今年に入ってからは異常なほど佐々木君にアプローチを敢行するもなかなか自分に靡いてくれないことに苛ついていた」
エリカの言葉にこれまで黙って静観していた勇次は参ったような口ぶりで一言言った。
「まぁ確かに鈴木さんとは今年になってから急に仲良くなったかもね」
その勇次の言葉を聞いてエリカが確信を持って話を続けた。
「そんなこんなであなたはすみれに対して悪感情を抱いていた。あなたは何かしらの方法ですみれをギャフンと言わせたいと思っていた。そんな時に今回の夏祭りが行われたのよ。どういった流れかは分からないけど、事前に知っていたのか、偶然会場で知ったのか、あなたはすみれたちが会場にいることを知り、三佳や忍の告白現場を目撃した。おそらく会場に偶然来ていた五十嵐君にも協力してもらったのか、もしくはあなたの友達と共同してすみれたちの行動を見張っていたのね。それで何かすみれやその友達の三佳や忍の弱みでも握ろうと考えていたところで実際に告白が起こったのよ。それに味をしめたあなたは他にも会場に来ている一君や二郎君の後をつけて同じように現場を押さえたところで、学校ですみれの友人達の噂を流して間接的にすみれに嫌がらせをしようと計画を実行した。五十嵐君の動機は私には分からないけども、さっきの二郎君とのやり取りを見る限り二人には何かしらの因縁があって、それを理由に協力をお願いして二人で今回の噂話の騒動を巻き起こした。これが私の推理よ」
エリカの推理を聞いたすみれは大きく納得した様に頷いた。その横で二郎が無言で対面する亜美菜、瞬、勇次の反応を伺った。勇次はいまいち話が飲み込めないと言った様子で首を傾げた。亜美菜は苛つくようにエリカを睨んでいた。
そんな各々がそれぞれの反応を見せたところで、瞬が急に腹を抱えながら笑い出し、これまで溜め込んでいたモノをぶちまけるように大きく呼吸をして話し始めた。
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