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第4章
人の噂も七十五日㉝ ~巻き込まれた男~
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すみれが亜美菜を説得していた同時刻、エリカは2週間にわたり校内を騒がせた噂話の一件に決着をつけるため、ゆるりと日が落ち始めた夕方の2年3組の教室である人物の到着を待っていた。
時刻は夕方6時から5分程過ぎた頃。廊下から小さな足音が聞こえてくると、それが徐々に大きくなりエリカの待つ2年3組の教室前に止まり、ゆっくりとドアが開かれた。
エリカが振り向いたドアの先から顔を出したのは部活を終えて急いでこの場所へやって来たからなのか、それとも緊張のせいなのか、肩を揺らしながら息をする2年3組、野球部所属の五十嵐瞬だった。
瞬は右手で手紙のような紙切れを大事そうに持ちながら、期待していた人物とは違うエリカの顔を確認して驚きつつも苛立った口調で言った。
「お、お前は5組の飯田か、どうしてお前がここにいるんだよ!」
「五十嵐君、ごめんね。君の本当に会いたかったレベッカちゃんはもう家に帰って二郎君にもらったおやつのハッピータウンでも食べている頃よ」
エリカは申し訳なさそうに二郎から聞いていたレベッカとのやり取りを引き合いに出し、瞬に現状を理解してもらおうと説明した。
「はぁ、意味わかんねー事を言ってんじゃねーぞ。二郎って誰だよ、そいつは」
瞬は何が起きているのか訳が分からずも、目の前の女子が自分を馬鹿にしてると理解し、語気を強めてエリカを問い詰めるように言った。
その瞬の剣幕にエリカがビクッとして、はぁとため息をつきながら瞬とは別の人間に向けて言った。
「ほら、やっぱりこうなるじゃない。むやみに怒らせても意味がないって私言ったじゃないの、全くもう」
エリカの明らかに自分とは違う人物に向けて話す言葉で後方に気配を感じた瞬が後ろを振り返るとそこには目つきの悪い因縁の相手が立っていた。
「悪いな、エリカ。あんまり堅い話だとあいつらが来るまで場が持たないから、少し小ネタを挟んだ方が良いと思って言ったんだけどな。どうやら好みの話ではなかったみたいだな。なぁ五十嵐よ」
二郎の完全に喧嘩を売るような言葉に胸ぐらを掴みそうな勢いで早くもブチ切れ寸前の瞬が二郎を睨み付けながら言った。
「あぁてめぇ、誰かと思ったら最下層民の山田じゃねーかよ。一体何だってんだこら、喧嘩売ってんのか、お前ら」
二郎の挑発に早くもファイティングポーズを取る瞬を制止するように二郎は言った。
「まぁ待てや、五十嵐。まだ役者が揃ってないんでな。言いたいことがあるなら後で聞くから、とりあえず落ち着け。そうだな、時間つぶしにお前が大事そうに持っているその手紙の真実について話でもしようか」
二郎は自分で挑発しておいて、いきり立つ瞬をどうどうと制止しつつ、再び瞬を怒らせる爆弾を投下するように言った。
「はぁ、手紙の真実だと、どういうことだ、山田!」
「だからその手紙に何が書かれているか俺が当ててやると言ってんだよ」
「なんだと・・・」
その言葉を聞いた瞬は怒りよりも驚きと恥ずかしさが勝り、それ以上の言葉を言えなくなったところで、二郎が手紙の文面をそらんじて言い始めた。
『瞬君へ
瞬君、久しぶりデース。私は2年4組のレベッカ・ファーガソンデース。一年生の時に同じクラスだったことを覚えていますカ。実はあの頃から私は瞬君の事をカッコイイと思っていマシタ。今日の放課後、部活が終わった後で良いノデ、会って話したいことがありマース。夕方6時、2年3組の教室で待っていますノデ、絶対に来て下さい。アイ ラブ ハッピータウン! イエー!
みんなのアイドルレベッカより』
「まぁこんな感じだろ。全くそんなものでノコノコやって来るとは相変わらず自信過剰みたいでご苦労さんなこった。でも残念、お前みたいなクソッタレにレベッカが惚れるわけがないだろ、馬鹿野郎が」
二郎はレベッカの話し方を真似しながら、瞬の持つレベッカからのラブレターの内容を見事に言い当て、それが瞬をこの場に誘うためのフェイクだったことを白状した。
それを聞いた瞬は全てを悟って手紙を持つ右手を強く握りしめた。
「ふざけんなよ。こんなことまでして一体何がしてーんだよ、お前は」
「何がしたいだと、お前の胸に聞いてみろや。この2週間、随分と面白い噂を学校中にばらまいてくれたもんだわ。この俺が友人を傷つけられるのを黙って見ているわけがねーだろが、コラ」
これまで余裕ありげに瞬をおちょくっていた二郎が瞬のとぼけた態度にブチ切れて声を荒立てたところに、今回の話の主役が到着した。
「遅くなってごめんね、ってどうしたのよ、いきなり」
その声に素早くエリカが反応した。
「すみれ!待っていたわよ。早く教室に入って。もう少し遅かったら取っ組み合いでも始めそうな勢いだったんだからもう」
何かしら因縁めいた二郎と瞬のやり取りをハラハラして見ていたエリカがすみれにすがるように言った。
そんなやり取りを聞いていまいち状況がつかめていない亜美菜と勇次がすみれの後を追うように教室に入ると、五十嵐の顔を確認して亜美菜が目を大きく見開いて言った。
「五十嵐君、どうしてここに・・・それにあなたたちは」
亜美菜の言葉に我に返った二郎と瞬はお互いに距離を取って、大きな深呼吸をすると舌打ちをしながら瞬が口を開いた。
「ちっクソが。・・。はー、鈴木?・・それと佐々木か!お前らこそどうしてここにいる」
思いもしなかった登場人物にうろたえている瞬を尻目に二郎がその問いに答えた。
「俺が呼んだんだ。これでようやく話が進められる」
二郎が教室内に集まった瞬、亜美菜、勇次、すみれ、エリカの顔を順々に見渡しながら言うと、亜美菜が落ち着かない様子で言った。
「話って一体なの事よ」
「分かるだろ、当然噂話を流した犯人捜しの話だよ」
二郎がハッキリと全員が聞こえる声で言うと、それに勇次が食い付くように言った。
「犯人捜しって一体どういうことだい、山田君。僕には何のことだかさっぱりわからないよ」
実際にこの場に呼ばれて狼狽える様子の瞬や亜美菜とは異なり、とまどいの様子を見せる勇次が二郎に説明を求めるように言った。
「確かにお前を巻き込んでしまって済まないな、佐々木。悪いがお前には第三者としてこれから俺らがする話の証人になってもらいたいんだ。さっきも言ったが俺らは二学期が始まってから今日まで広まっている噂話の犯人捜しをしていて、今日ここで突きとめるつもりなんだ。出来ればお前にもそれを聞いてもらって俺たちの推理が正しいかを判断して欲しいんだ」
二郎は偶然亜美菜とすみれの付き添いでこの場に居合わせた佐々木に事情を説明して、この場の証人としての役目をお願いした。
ややあって勇次は頷くと一つだけ二郎に注文を出した。
「分かったよ、山田君。だけど約束して欲しい。君たちの話を聞いて、それでも明確は理由や証拠がないと僕が判断したときは大人しく争いはやめて、今後この犯人捜しをしないことを約束して欲しい。僕は同級生同士がこんなことで相手を疑って争うのを見てられないんだ。それでいいかい」
二郎はエリカやすみれに目配せをして、同意を取れたことを確認にして答えた。
「あぁ、わかったよ。約束する。これで真相がハッキリしなかったら犯人捜しは打ち切るよ」
二郎の言葉に一先ず安堵を得た勇次がその会話の輪から1歩、2歩と身を引くように下がり教室の壁に寄りかかると右手を前にあげて二郎達の話を促すように視線を投げた。
こうして知らぬ間に話に巻き込まれた勇次を第三者の証人として二郎、エリカ、すみれ、瞬、亜美菜による決着の舞台の幕が開かれるのであった。
時刻は夕方6時から5分程過ぎた頃。廊下から小さな足音が聞こえてくると、それが徐々に大きくなりエリカの待つ2年3組の教室前に止まり、ゆっくりとドアが開かれた。
エリカが振り向いたドアの先から顔を出したのは部活を終えて急いでこの場所へやって来たからなのか、それとも緊張のせいなのか、肩を揺らしながら息をする2年3組、野球部所属の五十嵐瞬だった。
瞬は右手で手紙のような紙切れを大事そうに持ちながら、期待していた人物とは違うエリカの顔を確認して驚きつつも苛立った口調で言った。
「お、お前は5組の飯田か、どうしてお前がここにいるんだよ!」
「五十嵐君、ごめんね。君の本当に会いたかったレベッカちゃんはもう家に帰って二郎君にもらったおやつのハッピータウンでも食べている頃よ」
エリカは申し訳なさそうに二郎から聞いていたレベッカとのやり取りを引き合いに出し、瞬に現状を理解してもらおうと説明した。
「はぁ、意味わかんねー事を言ってんじゃねーぞ。二郎って誰だよ、そいつは」
瞬は何が起きているのか訳が分からずも、目の前の女子が自分を馬鹿にしてると理解し、語気を強めてエリカを問い詰めるように言った。
その瞬の剣幕にエリカがビクッとして、はぁとため息をつきながら瞬とは別の人間に向けて言った。
「ほら、やっぱりこうなるじゃない。むやみに怒らせても意味がないって私言ったじゃないの、全くもう」
エリカの明らかに自分とは違う人物に向けて話す言葉で後方に気配を感じた瞬が後ろを振り返るとそこには目つきの悪い因縁の相手が立っていた。
「悪いな、エリカ。あんまり堅い話だとあいつらが来るまで場が持たないから、少し小ネタを挟んだ方が良いと思って言ったんだけどな。どうやら好みの話ではなかったみたいだな。なぁ五十嵐よ」
二郎の完全に喧嘩を売るような言葉に胸ぐらを掴みそうな勢いで早くもブチ切れ寸前の瞬が二郎を睨み付けながら言った。
「あぁてめぇ、誰かと思ったら最下層民の山田じゃねーかよ。一体何だってんだこら、喧嘩売ってんのか、お前ら」
二郎の挑発に早くもファイティングポーズを取る瞬を制止するように二郎は言った。
「まぁ待てや、五十嵐。まだ役者が揃ってないんでな。言いたいことがあるなら後で聞くから、とりあえず落ち着け。そうだな、時間つぶしにお前が大事そうに持っているその手紙の真実について話でもしようか」
二郎は自分で挑発しておいて、いきり立つ瞬をどうどうと制止しつつ、再び瞬を怒らせる爆弾を投下するように言った。
「はぁ、手紙の真実だと、どういうことだ、山田!」
「だからその手紙に何が書かれているか俺が当ててやると言ってんだよ」
「なんだと・・・」
その言葉を聞いた瞬は怒りよりも驚きと恥ずかしさが勝り、それ以上の言葉を言えなくなったところで、二郎が手紙の文面をそらんじて言い始めた。
『瞬君へ
瞬君、久しぶりデース。私は2年4組のレベッカ・ファーガソンデース。一年生の時に同じクラスだったことを覚えていますカ。実はあの頃から私は瞬君の事をカッコイイと思っていマシタ。今日の放課後、部活が終わった後で良いノデ、会って話したいことがありマース。夕方6時、2年3組の教室で待っていますノデ、絶対に来て下さい。アイ ラブ ハッピータウン! イエー!
みんなのアイドルレベッカより』
「まぁこんな感じだろ。全くそんなものでノコノコやって来るとは相変わらず自信過剰みたいでご苦労さんなこった。でも残念、お前みたいなクソッタレにレベッカが惚れるわけがないだろ、馬鹿野郎が」
二郎はレベッカの話し方を真似しながら、瞬の持つレベッカからのラブレターの内容を見事に言い当て、それが瞬をこの場に誘うためのフェイクだったことを白状した。
それを聞いた瞬は全てを悟って手紙を持つ右手を強く握りしめた。
「ふざけんなよ。こんなことまでして一体何がしてーんだよ、お前は」
「何がしたいだと、お前の胸に聞いてみろや。この2週間、随分と面白い噂を学校中にばらまいてくれたもんだわ。この俺が友人を傷つけられるのを黙って見ているわけがねーだろが、コラ」
これまで余裕ありげに瞬をおちょくっていた二郎が瞬のとぼけた態度にブチ切れて声を荒立てたところに、今回の話の主役が到着した。
「遅くなってごめんね、ってどうしたのよ、いきなり」
その声に素早くエリカが反応した。
「すみれ!待っていたわよ。早く教室に入って。もう少し遅かったら取っ組み合いでも始めそうな勢いだったんだからもう」
何かしら因縁めいた二郎と瞬のやり取りをハラハラして見ていたエリカがすみれにすがるように言った。
そんなやり取りを聞いていまいち状況がつかめていない亜美菜と勇次がすみれの後を追うように教室に入ると、五十嵐の顔を確認して亜美菜が目を大きく見開いて言った。
「五十嵐君、どうしてここに・・・それにあなたたちは」
亜美菜の言葉に我に返った二郎と瞬はお互いに距離を取って、大きな深呼吸をすると舌打ちをしながら瞬が口を開いた。
「ちっクソが。・・。はー、鈴木?・・それと佐々木か!お前らこそどうしてここにいる」
思いもしなかった登場人物にうろたえている瞬を尻目に二郎がその問いに答えた。
「俺が呼んだんだ。これでようやく話が進められる」
二郎が教室内に集まった瞬、亜美菜、勇次、すみれ、エリカの顔を順々に見渡しながら言うと、亜美菜が落ち着かない様子で言った。
「話って一体なの事よ」
「分かるだろ、当然噂話を流した犯人捜しの話だよ」
二郎がハッキリと全員が聞こえる声で言うと、それに勇次が食い付くように言った。
「犯人捜しって一体どういうことだい、山田君。僕には何のことだかさっぱりわからないよ」
実際にこの場に呼ばれて狼狽える様子の瞬や亜美菜とは異なり、とまどいの様子を見せる勇次が二郎に説明を求めるように言った。
「確かにお前を巻き込んでしまって済まないな、佐々木。悪いがお前には第三者としてこれから俺らがする話の証人になってもらいたいんだ。さっきも言ったが俺らは二学期が始まってから今日まで広まっている噂話の犯人捜しをしていて、今日ここで突きとめるつもりなんだ。出来ればお前にもそれを聞いてもらって俺たちの推理が正しいかを判断して欲しいんだ」
二郎は偶然亜美菜とすみれの付き添いでこの場に居合わせた佐々木に事情を説明して、この場の証人としての役目をお願いした。
ややあって勇次は頷くと一つだけ二郎に注文を出した。
「分かったよ、山田君。だけど約束して欲しい。君たちの話を聞いて、それでも明確は理由や証拠がないと僕が判断したときは大人しく争いはやめて、今後この犯人捜しをしないことを約束して欲しい。僕は同級生同士がこんなことで相手を疑って争うのを見てられないんだ。それでいいかい」
二郎はエリカやすみれに目配せをして、同意を取れたことを確認にして答えた。
「あぁ、わかったよ。約束する。これで真相がハッキリしなかったら犯人捜しは打ち切るよ」
二郎の言葉に一先ず安堵を得た勇次がその会話の輪から1歩、2歩と身を引くように下がり教室の壁に寄りかかると右手を前にあげて二郎達の話を促すように視線を投げた。
こうして知らぬ間に話に巻き込まれた勇次を第三者の証人として二郎、エリカ、すみれ、瞬、亜美菜による決着の舞台の幕が開かれるのであった。
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