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第4章
人の噂も七十五日㉙ ~新たな証言者~
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エリカ達三人が話し合いをしている頃、二郎も独自で噂を流した犯人捜しをするための証人探しで体育館に居た。
練習が始まる前のバスケコートで二郎は女子バスケ部の副部長である神部歩と待ち合わせをしていた。
「神部、この前お願いしていた件だけど何か分かったか」
「まぁ分かったような、わかんないようなそんな感じだったわよ」
問いかけに煮え切らない表情で歩は答えた。というのも歩は二郎に日曜日の練習中に行った1on1で負けた罰として噂話を流した犯人捜しに協力する事になっており、二郎に従うことをしゃくに思う一方で、親友である忍や想い人の尊に同じバスケ部員である一や二郎が噂の種にされている事を不満に思っていたこともあり、渋々ながらも二郎に協力することになっていたからだった。
そんな事情もあって二郎は噂の情報源の可能性がある3組の調査と女バス部員からの聞き取りを歩にお願いしていた。
「分かったことは二つ。一つは女バスの子達からの話で、やっぱり噂を聞いた相手は3組の子からが多かったみたいよ。もう一つの3組内部の話だけど噂を聞いた相手は皆バラバラだったわ。なんか噂の出所のことを聞くとヤケに黙り込んじゃって、やっと出た名前も皆バラバラで一人にはたどり着かなかったわ。なんか誰かに気を遣っている感じだったわ」
「そうか、まぁある程度予想はしていたけど、そう簡単にはいかないか。でも、これで犯人は3組の誰かって事は間違いなさそうだな。俺も放課後に残っている他のクラスの奴に先週話を聞いたらほとんどの奴が3組の友達から噂を聞いたって奴ばかりだったからな。それと一つ確認だが、3組のリーダー的な奴って誰がいるんだ。他の女子が気を遣って名前を出しにくいような奴はいるか」
二郎は普段知ることもない3組内の勢力図について歩に質問した。
「そうね、まずウチのクラスの女子で力を持っているのは2人かな。1人は生徒会の宮森さんね。真面目で先生受けもいいし、若干口うるさいところもあってブーブー言われることもあるけど、なんだかんだで男女含めて彼女がクラスのリーダーだと思うわ。もう1人は吹奏楽部の鈴木って子かな。彼女は女子内の大派閥のリーダーで女子の半分が彼女のグループにいる感じだし、他の子達も睨まれないように気を遣っているところもあるわね。私は正直ああいう面倒くさい女は嫌いだから関わらないようにしているけどね」
歩は巴に対しては親しみを持って、亜美菜に対しては嫌悪感を隠さずに二郎に説明した。それはちょうど1年の頃にすみれが亜美菜に対して感じていた感情とまるで同じモノだった。
「宮森と鈴木か。男子はどうだ」
「男子はリーダーらしいリーダーは居ないけど、強いて言うなら野球部の五十嵐君が男子の中じゃ目立っているかもね。悪い意味で、だけどね。彼ちょっと痛いところがあるけど運動神経は良いし、黙っていればまぁまぁイケ面だから一部の女子からは人気あるからね。まぁそう言うこともあって凄い高圧的で人を見下すからあまり好かれてないけど、それでもウチのクラスの中じゃ一番目立っているとは思うよ」
「あぁそう言えばあのバカもお前のクラスだったな。俺はこの騒動を聞いたときに一番初めに五十嵐のことを犯人だと思っていたから、あいつが3組だって聞くとあぁやっぱりかって気がするわ」
二郎の意味深の言葉を聞いて歩が問い詰めた。
「それどういうことよ。五十嵐君が犯人かもって、あんた彼と何かあったの」
「いやまぁたいしたことじゃないが、ちょっとな。まぁお前が気にすることないさ。とりあえず今回はご苦労さん。また動いてもらいたいときは言うからそんときはよろしく」
「ちょっとあんた、勝手に話を終わらせないでよ、もう」
歩が二郎に抗議をしているところで、隣のスペースで部活を行う剣道部の部員達が入って来ていた。その中の知った顔を見つけた歩は声を掛けて呼び止めた。
「あ、宮森さん。お疲れ様。今日は生徒会は大丈夫なの」
「神部さん、そうなのよ。今日は一ノ瀬君が仕事を請け負ってくれてるから私は部活に出て大丈夫なのよ」
2人の会話を聞いていた二郎が巴に話し掛けた。
「宮森、ちょっと教えて欲しいことがあるんだけどいいか」
「あなたは山田君じゃない。珍しいわね、あなたがこの時間に体育館にいるなんて。でもどうして制服のままなの」
巴は生徒会によく顔を出す二郎とは顔見知りであり、普段二郎が校内を徘徊して部活に遅刻する常習犯である事を知っていたため、二郎の問いかけを完全に無視するように驚いて言った。
「俺がここに居ることはそんな驚くことなのか。そんなことよりも宮森もあの祭りの日は現場にいたんだよな」
「祭りって武蔵村山の花火大会の日のことかな」
「その通りだ。一が生徒会のメンバーで行くって言ってたから、お前も来ていたんだろ、違うか」
「そうだけど、それがどうしたのよ」
巴は二郎の問いに怪訝そうな様子で返答した。
「宮森、お前も当然知っていると思うが、あの日の色んな事に関する噂が出回っていて、こちとら迷惑しているんだ。俺としては気分が悪いし、友人がコソコソと陰口をたたかれているのは許せないんだわ。だから、その噂を流した奴を突き止めて早いところ収束できるようにしたいから犯人捜しに協力して欲しいんだが」
「いきなりどうしたのよ。それに犯人捜しってそんなこと出来るの」
「出来るかどうかじゃない。やるんだよ。そのためにも何でも良いから知っていることを教えてくれ」
二郎の真剣な表情に巴は一息ついて答えた。
「そう、本気なのね。分かったわ。確かに私も変な噂話は風紀の乱れに影響すると思うからどうにかしたいと思っていたのよ。だから協力してもいいわよ」
「そうか、ありがとう。そんじゃあの日の事を詳しく教えてくれないか」
二郎は巴の好意を受け取り、遠慮せずに質問した。
巴の話はまとめれば以下の様だった。
17:00 生徒会メンバーが会場到着。1時間程会場を散策。
18:00前 3年先輩と別れて一と場所取りをする。その時に尊と大和に会う。
18:10 場所を見つけて2人で待機。
18:15 巴は用事があってその場を移動し、一だけが残る。
19:30 再び生徒会シートに戻るも一の一悶着を目撃し、バスケ部シートへ避難する。その後は花火が終わるまでバスケ部シートにいた。
その話を聞いた二郎が巴に問いかけた。
「なるほどな。何があったかは聞かないけど、一と別れてから生徒会シートに戻るまで一時間以上あるけど、会場の中にはいたのか」
「うん、いたよ。ちょっと考え事をしていて気がついたら結構時間が経っていてビックリしたわ」
「そうか、ちなみにその時に誰かウチの学校の人間を見なかったか」
「うーん、誰も見なかったと思うわ。それに考え事をしていてあまり周囲を見ていなかったから誰かいても気付かなかったと思うわ」
「そりゃそうか。まぁあとは一の事は・・・あいつに直接聞くとするとして、最後に何か気になった事とかはなかったか、何でも良いからさ」
二郎は素直に質問に答えていく巴に手がかりがなさそうに思い最後の確認のつもりで問いかけた。
「気になることか。・・・・そうだ、1人ウチのクラスの子を見かけたのよ。あの一君の騒動の野次馬の中に彼女がいたのよ。一瞬目が合ったんだけど、すぐに姿を消してしまったけど間違いないと思うの」
「彼女って一体誰のこと言っているんだ」
二郎が食い付くように答えを求めると巴が目を見据えて言った。
「それは鈴木さんよ」
その答えに黙って2人の話を聞いていた歩が驚いたように言った。
「それって鈴木亜美菜の事なの、宮森さん」
「そう・・・だけど」
歩の差し迫った反応に巴が驚いている一方で二郎と歩が目を合わせて頷いた。
「どうやら犯人の顔が見えてきたみたいだな」
「そうね」
2人のわかり合ったようなやり取りにいまいち要領を得ない巴が首を傾げていると、この騒動の真相を解明する最後のピースを知る男が3人に声を掛けるのであった。
練習が始まる前のバスケコートで二郎は女子バスケ部の副部長である神部歩と待ち合わせをしていた。
「神部、この前お願いしていた件だけど何か分かったか」
「まぁ分かったような、わかんないようなそんな感じだったわよ」
問いかけに煮え切らない表情で歩は答えた。というのも歩は二郎に日曜日の練習中に行った1on1で負けた罰として噂話を流した犯人捜しに協力する事になっており、二郎に従うことをしゃくに思う一方で、親友である忍や想い人の尊に同じバスケ部員である一や二郎が噂の種にされている事を不満に思っていたこともあり、渋々ながらも二郎に協力することになっていたからだった。
そんな事情もあって二郎は噂の情報源の可能性がある3組の調査と女バス部員からの聞き取りを歩にお願いしていた。
「分かったことは二つ。一つは女バスの子達からの話で、やっぱり噂を聞いた相手は3組の子からが多かったみたいよ。もう一つの3組内部の話だけど噂を聞いた相手は皆バラバラだったわ。なんか噂の出所のことを聞くとヤケに黙り込んじゃって、やっと出た名前も皆バラバラで一人にはたどり着かなかったわ。なんか誰かに気を遣っている感じだったわ」
「そうか、まぁある程度予想はしていたけど、そう簡単にはいかないか。でも、これで犯人は3組の誰かって事は間違いなさそうだな。俺も放課後に残っている他のクラスの奴に先週話を聞いたらほとんどの奴が3組の友達から噂を聞いたって奴ばかりだったからな。それと一つ確認だが、3組のリーダー的な奴って誰がいるんだ。他の女子が気を遣って名前を出しにくいような奴はいるか」
二郎は普段知ることもない3組内の勢力図について歩に質問した。
「そうね、まずウチのクラスの女子で力を持っているのは2人かな。1人は生徒会の宮森さんね。真面目で先生受けもいいし、若干口うるさいところもあってブーブー言われることもあるけど、なんだかんだで男女含めて彼女がクラスのリーダーだと思うわ。もう1人は吹奏楽部の鈴木って子かな。彼女は女子内の大派閥のリーダーで女子の半分が彼女のグループにいる感じだし、他の子達も睨まれないように気を遣っているところもあるわね。私は正直ああいう面倒くさい女は嫌いだから関わらないようにしているけどね」
歩は巴に対しては親しみを持って、亜美菜に対しては嫌悪感を隠さずに二郎に説明した。それはちょうど1年の頃にすみれが亜美菜に対して感じていた感情とまるで同じモノだった。
「宮森と鈴木か。男子はどうだ」
「男子はリーダーらしいリーダーは居ないけど、強いて言うなら野球部の五十嵐君が男子の中じゃ目立っているかもね。悪い意味で、だけどね。彼ちょっと痛いところがあるけど運動神経は良いし、黙っていればまぁまぁイケ面だから一部の女子からは人気あるからね。まぁそう言うこともあって凄い高圧的で人を見下すからあまり好かれてないけど、それでもウチのクラスの中じゃ一番目立っているとは思うよ」
「あぁそう言えばあのバカもお前のクラスだったな。俺はこの騒動を聞いたときに一番初めに五十嵐のことを犯人だと思っていたから、あいつが3組だって聞くとあぁやっぱりかって気がするわ」
二郎の意味深の言葉を聞いて歩が問い詰めた。
「それどういうことよ。五十嵐君が犯人かもって、あんた彼と何かあったの」
「いやまぁたいしたことじゃないが、ちょっとな。まぁお前が気にすることないさ。とりあえず今回はご苦労さん。また動いてもらいたいときは言うからそんときはよろしく」
「ちょっとあんた、勝手に話を終わらせないでよ、もう」
歩が二郎に抗議をしているところで、隣のスペースで部活を行う剣道部の部員達が入って来ていた。その中の知った顔を見つけた歩は声を掛けて呼び止めた。
「あ、宮森さん。お疲れ様。今日は生徒会は大丈夫なの」
「神部さん、そうなのよ。今日は一ノ瀬君が仕事を請け負ってくれてるから私は部活に出て大丈夫なのよ」
2人の会話を聞いていた二郎が巴に話し掛けた。
「宮森、ちょっと教えて欲しいことがあるんだけどいいか」
「あなたは山田君じゃない。珍しいわね、あなたがこの時間に体育館にいるなんて。でもどうして制服のままなの」
巴は生徒会によく顔を出す二郎とは顔見知りであり、普段二郎が校内を徘徊して部活に遅刻する常習犯である事を知っていたため、二郎の問いかけを完全に無視するように驚いて言った。
「俺がここに居ることはそんな驚くことなのか。そんなことよりも宮森もあの祭りの日は現場にいたんだよな」
「祭りって武蔵村山の花火大会の日のことかな」
「その通りだ。一が生徒会のメンバーで行くって言ってたから、お前も来ていたんだろ、違うか」
「そうだけど、それがどうしたのよ」
巴は二郎の問いに怪訝そうな様子で返答した。
「宮森、お前も当然知っていると思うが、あの日の色んな事に関する噂が出回っていて、こちとら迷惑しているんだ。俺としては気分が悪いし、友人がコソコソと陰口をたたかれているのは許せないんだわ。だから、その噂を流した奴を突き止めて早いところ収束できるようにしたいから犯人捜しに協力して欲しいんだが」
「いきなりどうしたのよ。それに犯人捜しってそんなこと出来るの」
「出来るかどうかじゃない。やるんだよ。そのためにも何でも良いから知っていることを教えてくれ」
二郎の真剣な表情に巴は一息ついて答えた。
「そう、本気なのね。分かったわ。確かに私も変な噂話は風紀の乱れに影響すると思うからどうにかしたいと思っていたのよ。だから協力してもいいわよ」
「そうか、ありがとう。そんじゃあの日の事を詳しく教えてくれないか」
二郎は巴の好意を受け取り、遠慮せずに質問した。
巴の話はまとめれば以下の様だった。
17:00 生徒会メンバーが会場到着。1時間程会場を散策。
18:00前 3年先輩と別れて一と場所取りをする。その時に尊と大和に会う。
18:10 場所を見つけて2人で待機。
18:15 巴は用事があってその場を移動し、一だけが残る。
19:30 再び生徒会シートに戻るも一の一悶着を目撃し、バスケ部シートへ避難する。その後は花火が終わるまでバスケ部シートにいた。
その話を聞いた二郎が巴に問いかけた。
「なるほどな。何があったかは聞かないけど、一と別れてから生徒会シートに戻るまで一時間以上あるけど、会場の中にはいたのか」
「うん、いたよ。ちょっと考え事をしていて気がついたら結構時間が経っていてビックリしたわ」
「そうか、ちなみにその時に誰かウチの学校の人間を見なかったか」
「うーん、誰も見なかったと思うわ。それに考え事をしていてあまり周囲を見ていなかったから誰かいても気付かなかったと思うわ」
「そりゃそうか。まぁあとは一の事は・・・あいつに直接聞くとするとして、最後に何か気になった事とかはなかったか、何でも良いからさ」
二郎は素直に質問に答えていく巴に手がかりがなさそうに思い最後の確認のつもりで問いかけた。
「気になることか。・・・・そうだ、1人ウチのクラスの子を見かけたのよ。あの一君の騒動の野次馬の中に彼女がいたのよ。一瞬目が合ったんだけど、すぐに姿を消してしまったけど間違いないと思うの」
「彼女って一体誰のこと言っているんだ」
二郎が食い付くように答えを求めると巴が目を見据えて言った。
「それは鈴木さんよ」
その答えに黙って2人の話を聞いていた歩が驚いたように言った。
「それって鈴木亜美菜の事なの、宮森さん」
「そう・・・だけど」
歩の差し迫った反応に巴が驚いている一方で二郎と歩が目を合わせて頷いた。
「どうやら犯人の顔が見えてきたみたいだな」
「そうね」
2人のわかり合ったようなやり取りにいまいち要領を得ない巴が首を傾げていると、この騒動の真相を解明する最後のピースを知る男が3人に声を掛けるのであった。
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