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第2章
ある梅雨の日 その3 ~すみれの執念~
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2年5組においてクラスリーダーと言えば、ほとんどの生徒が一ノ瀬一と答えるだろう。それは一の真面目さや明るさ、そして誰とでも分け隔てなく接する性格から来る公平性と信頼感、また生徒会の役割をこなす責任感などもあり名実ともにクラスのリーダーであった。
では女子で言えば誰かといえば、それは橋本すみれという事になるだろ。
この2年5組の一学期程度の短い期間で、すみれがクラス内の女子の中でどうやってリーダーになるまでのし上がることが出来たのか、これを知ることがこれから起こる一連の騒ぎの重要な鍵となるはずだ。
橋本すみれは高校一年の頃は今のようにクラスの中心的な存在ではなかった。性格的にはハキハキしっかりしており、物怖じしない性格だったため、クラス内でも存在感がないわけでは無かったが、クラス女子の主流派閥のメンバーとはソリが合わず、若干孤立するような環境下で学校生活を過ごした。
すみれはそれも仕方が無いと思っていたが、ある一つの変化が起きた事で、どうしてもクラス内の、さらには学年内でのカースト順位を上げたいとすみれは思うようになった。
それは恋だった。すみれは同じクラスだった工藤剛に恋をしたのだ。
剛はクラスだけでなく学年内でも人気で複数の女子が剛を狙っていることもすみれは知っていた。しかし女子の世界において下手に人の好きな男子にちょっかいを掛けると、他の女子から締め出されるといった非常に面倒な事が繰り広げられるため、告白する事は別の意味でも気を遣うことがあった。
特にそれがクラスの主流派閥の中心人物の意中の男子だった場合は、迂闊に手を出せばクラス内で村八分が決定的になることも多々あった。
そして、運の悪いことにすみれが恋をした工藤剛は、クラス女子のリーダー格の意中の人だった。
すみれは当時から確実に剛と付き合えるならば、全てを敵に回しても良いと思っていたが、それが叶うような関係性を剛とは築くことは出来ていなかった。幸いにも剛は高一の間に誰かと付き合うことは無かったが、すみれ自身も告白する勇気が出ず、結局、剛とは2年で別々のクラスとなった。
すみれはクラスが替わり、クラス内序列がリセットされる2年の最初のタイミングが最も重要であると考えた。それはクラス内の影響力のある女子を自分の派閥に取り込み、クラス内で主流派閥となり、さらには学年内の女子達に存在感を示すことが、誰にも邪魔されずに自分自身の恋を成就させるために必要な事だと考えたからだ。
なぜなら女子世界には様々な暗黙のルールや縄張りのようなモノが有り、クラス内序列を上げるために他の女子とついたり離れたりして、クラス内の勢力を争い、男子達には到底理解できない芸術的な力関係を保ちながら、表面上、仲の良いクラスメイトを演じるといった複雑怪奇な状況に陥る事があるからだ。そしてそれにはクラス女子のトップの存在が大きく影響し、その面倒な状況を高一の時に痛いほど味わい辟易した結果、すみれは自派閥の立ち上げをするに至ったのであった。
すみれは元々お山の大将を気取り、偉ぶることを良しとする性格では無かったが、少なくとも自分自身を守り、ある程度周りに牽制する事が出来るグループを作ることは女子の世界において平和な高校生活を送るためには必要なモノと考えるようになっていた。
そんなすみれが学年が上がり、クラスが替わって最初に目を付けたのが三佳だった。校内男子から圧倒的な人気を集める馬場三佳の友達というポジションは、校内女子の中では強力な地位であり、嫉妬やひがみを集めるとしても、それ以上に注目や羨望を集めるマウンティングの頂点を目指す女子にとって極めて重要な存在だった。実際に三佳と同じクラスになり友達となった2年からは、すみれは学年女子のカースト上位に上がり、また男子からも注目を集めるようになり、クラス女子のリーダー的存在にもなった。
すみれは三佳の他にも強力な友人を得た。一人は学級委員の飯田エリカで、真面目で面倒見の良い優等生だった。エリカは前に出て皆を引っ張ると言うよりは厳しくも優しくフォローしてくれるタイプだった。そのため、男女ともに好かれておりクラス内でのお母さん的存在だった。もう一人は女子バスケ部の2年エースの成田忍だった。忍はボーイッシュで女子からモテるタイプのイケメン女子だった。
すみれはクラス替えのタイミングでこの二人とも積極的に交流を持ち、早々に友人関係を築くことに成功した。それはすぐにエリカと忍を強力な人材と見抜き、クラス替え3日以内にグループに引き込む計画を実行したすみれの執念が可能としたものだった。
クラス内で人徳のあるエリカと学年内の女子に人気のある忍は、校内男子から圧倒的な支持を受ける三佳に足りない要素を補うことが出来る希有な存在であり、クラス内外で影響力を発揮する事が出来るグループを組み上げる重要なメンバーだった。そしてそれは創設者であるすみれがその中心に君臨できる完璧なカルテットだった。
また三佳と忍はクラス内の派閥争いには基本的に無頓着であり、エリカはクラスの平和な秩序が守られるならば、強力なリーダーが居ることを良しと考えており、すみれが高圧的なタイプでは無いことから、このグループの存在を肯定していた。そういった事情もうまく重なり、すみれはクラス女子内でのリーダー的存在となり、学年内の女子にも影響力を持つ存在にのし上がることになった。それは何もかも剛への恋路を邪魔させないための防御策の一つに過ぎなかったのであった。
では女子で言えば誰かといえば、それは橋本すみれという事になるだろ。
この2年5組の一学期程度の短い期間で、すみれがクラス内の女子の中でどうやってリーダーになるまでのし上がることが出来たのか、これを知ることがこれから起こる一連の騒ぎの重要な鍵となるはずだ。
橋本すみれは高校一年の頃は今のようにクラスの中心的な存在ではなかった。性格的にはハキハキしっかりしており、物怖じしない性格だったため、クラス内でも存在感がないわけでは無かったが、クラス女子の主流派閥のメンバーとはソリが合わず、若干孤立するような環境下で学校生活を過ごした。
すみれはそれも仕方が無いと思っていたが、ある一つの変化が起きた事で、どうしてもクラス内の、さらには学年内でのカースト順位を上げたいとすみれは思うようになった。
それは恋だった。すみれは同じクラスだった工藤剛に恋をしたのだ。
剛はクラスだけでなく学年内でも人気で複数の女子が剛を狙っていることもすみれは知っていた。しかし女子の世界において下手に人の好きな男子にちょっかいを掛けると、他の女子から締め出されるといった非常に面倒な事が繰り広げられるため、告白する事は別の意味でも気を遣うことがあった。
特にそれがクラスの主流派閥の中心人物の意中の男子だった場合は、迂闊に手を出せばクラス内で村八分が決定的になることも多々あった。
そして、運の悪いことにすみれが恋をした工藤剛は、クラス女子のリーダー格の意中の人だった。
すみれは当時から確実に剛と付き合えるならば、全てを敵に回しても良いと思っていたが、それが叶うような関係性を剛とは築くことは出来ていなかった。幸いにも剛は高一の間に誰かと付き合うことは無かったが、すみれ自身も告白する勇気が出ず、結局、剛とは2年で別々のクラスとなった。
すみれはクラスが替わり、クラス内序列がリセットされる2年の最初のタイミングが最も重要であると考えた。それはクラス内の影響力のある女子を自分の派閥に取り込み、クラス内で主流派閥となり、さらには学年内の女子達に存在感を示すことが、誰にも邪魔されずに自分自身の恋を成就させるために必要な事だと考えたからだ。
なぜなら女子世界には様々な暗黙のルールや縄張りのようなモノが有り、クラス内序列を上げるために他の女子とついたり離れたりして、クラス内の勢力を争い、男子達には到底理解できない芸術的な力関係を保ちながら、表面上、仲の良いクラスメイトを演じるといった複雑怪奇な状況に陥る事があるからだ。そしてそれにはクラス女子のトップの存在が大きく影響し、その面倒な状況を高一の時に痛いほど味わい辟易した結果、すみれは自派閥の立ち上げをするに至ったのであった。
すみれは元々お山の大将を気取り、偉ぶることを良しとする性格では無かったが、少なくとも自分自身を守り、ある程度周りに牽制する事が出来るグループを作ることは女子の世界において平和な高校生活を送るためには必要なモノと考えるようになっていた。
そんなすみれが学年が上がり、クラスが替わって最初に目を付けたのが三佳だった。校内男子から圧倒的な人気を集める馬場三佳の友達というポジションは、校内女子の中では強力な地位であり、嫉妬やひがみを集めるとしても、それ以上に注目や羨望を集めるマウンティングの頂点を目指す女子にとって極めて重要な存在だった。実際に三佳と同じクラスになり友達となった2年からは、すみれは学年女子のカースト上位に上がり、また男子からも注目を集めるようになり、クラス女子のリーダー的存在にもなった。
すみれは三佳の他にも強力な友人を得た。一人は学級委員の飯田エリカで、真面目で面倒見の良い優等生だった。エリカは前に出て皆を引っ張ると言うよりは厳しくも優しくフォローしてくれるタイプだった。そのため、男女ともに好かれておりクラス内でのお母さん的存在だった。もう一人は女子バスケ部の2年エースの成田忍だった。忍はボーイッシュで女子からモテるタイプのイケメン女子だった。
すみれはクラス替えのタイミングでこの二人とも積極的に交流を持ち、早々に友人関係を築くことに成功した。それはすぐにエリカと忍を強力な人材と見抜き、クラス替え3日以内にグループに引き込む計画を実行したすみれの執念が可能としたものだった。
クラス内で人徳のあるエリカと学年内の女子に人気のある忍は、校内男子から圧倒的な支持を受ける三佳に足りない要素を補うことが出来る希有な存在であり、クラス内外で影響力を発揮する事が出来るグループを組み上げる重要なメンバーだった。そしてそれは創設者であるすみれがその中心に君臨できる完璧なカルテットだった。
また三佳と忍はクラス内の派閥争いには基本的に無頓着であり、エリカはクラスの平和な秩序が守られるならば、強力なリーダーが居ることを良しと考えており、すみれが高圧的なタイプでは無いことから、このグループの存在を肯定していた。そういった事情もうまく重なり、すみれはクラス女子内でのリーダー的存在となり、学年内の女子にも影響力を持つ存在にのし上がることになった。それは何もかも剛への恋路を邪魔させないための防御策の一つに過ぎなかったのであった。
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