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第五話

お帰りなさい<Ⅱ>

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「聖女様、大変不躾ではありますが急遽お迎えに上がりました次第です」

「こんな街中で戦士団などを出してきて、わたくしは罪人ということなのでしょうか?」

「罪人だなんてとんでもない。私共は聖女様がロンロールで大変危険な目に遭ったと聞き及んでおります。貴女様はアデル教会にとって大変大尊きお方なのですから、今後は我らが身の回りの世話や護衛をさせていただきたく参上致しました」

「その様なご配慮痛み入りますがわたくしは遠慮させていただきます。このような往来で周りを威嚇するようなことをしてそれでも愛を尊ぶ女神の信徒なのですか!」

 まだ一日しか経っていない出来事をもう教会は知っているのかよ!? 何かしらの連絡手段を持っているってことは彼らの連絡網も侮れないな。

「司教様より直々に必ず連れてくるとのお達しですので、あまり強引な手は使いたくは有りませぬ。素直に我らと共に来ていただきたい。ほら、お前達も頼まないか!」

「聖女様、どうか教会にお戻りください!」

 一斉に戦士団が大きな声を張ってそう訴えた。
 メチャクチャ五月蠅いんだけど……。

『主様、これ戦えない』

(さすがに教会勢力と戦ったら大変な事になるから、今はとにかく静観していてくれ。デルも今はなにもしないでくれ)

『分かった』

(セレーネ、いったんここは逃げよう)

『それは出来ません。もしここで下手に逃げてしまったら勇者様達がわたくしを誘拐したことになってしまうと思います』

(なんだそれ!?)

 教会と野良の勇者、どっちの声明を信じるか。そんなもの考えるまでもない。
 どうする。どうすればいい? ここは素直にセレーネの行動に任せるしかないのか。

「勇者様……」

 なんとも辛そうに笑顔を見せるセレーネ。

 彼女はこうやって為政者共の都合に振り回される。聖女として人気が出たら邪魔だからと巡回聖職者にしておいて必要となればこうやって自分達の元に戻す。

 ああ……会社勤めだったときのことを思い出すな。結局、長いものに巻かれるのは何処の世界でも同じなのか。

「聖職者、これは一体何があったのですかな?」

「あら、聖女様?」

 さすがの物々しさに普通の市民達が何事かと不審に思い始めたらしい。

「聖女様……これは、どうかなさったんですか?」

「大丈夫ですので、気になさらないでください」

 お婆さんが、そんな中でも心配そうに声をかけてきた。やはり彼女は人気者だ。

 そりゃそうだ。彼女は教会の言いつけを守らず持たぬ者には無償で治療を施しているのだから。

(デルいける?)

『問題ないけど、そんなのどうするの』

(ちょっと考えがあるんだ。セレーネ、司教の思惑を話でもっと引き出せる?)

『どうかなされるのでしょうか?』

(うん、ちょこっとね)
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