386 / 388
第五話
お帰りなさい<Ⅱ>
しおりを挟む
「聖女様、大変不躾ではありますが急遽お迎えに上がりました次第です」
「こんな街中で戦士団などを出してきて、わたくしは罪人ということなのでしょうか?」
「罪人だなんてとんでもない。私共は聖女様がロンロールで大変危険な目に遭ったと聞き及んでおります。貴女様はアデル教会にとって大変大尊きお方なのですから、今後は我らが身の回りの世話や護衛をさせていただきたく参上致しました」
「その様なご配慮痛み入りますがわたくしは遠慮させていただきます。このような往来で周りを威嚇するようなことをしてそれでも愛を尊ぶ女神の信徒なのですか!」
まだ一日しか経っていない出来事をもう教会は知っているのかよ!? 何かしらの連絡手段を持っているってことは彼らの連絡網も侮れないな。
「司教様より直々に必ず連れてくるとのお達しですので、あまり強引な手は使いたくは有りませぬ。素直に我らと共に来ていただきたい。ほら、お前達も頼まないか!」
「聖女様、どうか教会にお戻りください!」
一斉に戦士団が大きな声を張ってそう訴えた。
メチャクチャ五月蠅いんだけど……。
『主様、これ戦えない』
(さすがに教会勢力と戦ったら大変な事になるから、今はとにかく静観していてくれ。デルも今はなにもしないでくれ)
『分かった』
(セレーネ、いったんここは逃げよう)
『それは出来ません。もしここで下手に逃げてしまったら勇者様達がわたくしを誘拐したことになってしまうと思います』
(なんだそれ!?)
教会と野良の勇者、どっちの声明を信じるか。そんなもの考えるまでもない。
どうする。どうすればいい? ここは素直にセレーネの行動に任せるしかないのか。
「勇者様……」
なんとも辛そうに笑顔を見せるセレーネ。
彼女はこうやって為政者共の都合に振り回される。聖女として人気が出たら邪魔だからと巡回聖職者にしておいて必要となればこうやって自分達の元に戻す。
ああ……会社勤めだったときのことを思い出すな。結局、長いものに巻かれるのは何処の世界でも同じなのか。
「聖職者、これは一体何があったのですかな?」
「あら、聖女様?」
さすがの物々しさに普通の市民達が何事かと不審に思い始めたらしい。
「聖女様……これは、どうかなさったんですか?」
「大丈夫ですので、気になさらないでください」
お婆さんが、そんな中でも心配そうに声をかけてきた。やはり彼女は人気者だ。
そりゃそうだ。彼女は教会の言いつけを守らず持たぬ者には無償で治療を施しているのだから。
(デルいける?)
『問題ないけど、そんなのどうするの』
(ちょっと考えがあるんだ。セレーネ、司教の思惑を話でもっと引き出せる?)
『どうかなされるのでしょうか?』
(うん、ちょこっとね)
「こんな街中で戦士団などを出してきて、わたくしは罪人ということなのでしょうか?」
「罪人だなんてとんでもない。私共は聖女様がロンロールで大変危険な目に遭ったと聞き及んでおります。貴女様はアデル教会にとって大変大尊きお方なのですから、今後は我らが身の回りの世話や護衛をさせていただきたく参上致しました」
「その様なご配慮痛み入りますがわたくしは遠慮させていただきます。このような往来で周りを威嚇するようなことをしてそれでも愛を尊ぶ女神の信徒なのですか!」
まだ一日しか経っていない出来事をもう教会は知っているのかよ!? 何かしらの連絡手段を持っているってことは彼らの連絡網も侮れないな。
「司教様より直々に必ず連れてくるとのお達しですので、あまり強引な手は使いたくは有りませぬ。素直に我らと共に来ていただきたい。ほら、お前達も頼まないか!」
「聖女様、どうか教会にお戻りください!」
一斉に戦士団が大きな声を張ってそう訴えた。
メチャクチャ五月蠅いんだけど……。
『主様、これ戦えない』
(さすがに教会勢力と戦ったら大変な事になるから、今はとにかく静観していてくれ。デルも今はなにもしないでくれ)
『分かった』
(セレーネ、いったんここは逃げよう)
『それは出来ません。もしここで下手に逃げてしまったら勇者様達がわたくしを誘拐したことになってしまうと思います』
(なんだそれ!?)
教会と野良の勇者、どっちの声明を信じるか。そんなもの考えるまでもない。
どうする。どうすればいい? ここは素直にセレーネの行動に任せるしかないのか。
「勇者様……」
なんとも辛そうに笑顔を見せるセレーネ。
彼女はこうやって為政者共の都合に振り回される。聖女として人気が出たら邪魔だからと巡回聖職者にしておいて必要となればこうやって自分達の元に戻す。
ああ……会社勤めだったときのことを思い出すな。結局、長いものに巻かれるのは何処の世界でも同じなのか。
「聖職者、これは一体何があったのですかな?」
「あら、聖女様?」
さすがの物々しさに普通の市民達が何事かと不審に思い始めたらしい。
「聖女様……これは、どうかなさったんですか?」
「大丈夫ですので、気になさらないでください」
お婆さんが、そんな中でも心配そうに声をかけてきた。やはり彼女は人気者だ。
そりゃそうだ。彼女は教会の言いつけを守らず持たぬ者には無償で治療を施しているのだから。
(デルいける?)
『問題ないけど、そんなのどうするの』
(ちょっと考えがあるんだ。セレーネ、司教の思惑を話でもっと引き出せる?)
『どうかなされるのでしょうか?』
(うん、ちょこっとね)
0
お気に入りに追加
103
あなたにおすすめの小説
にいにと一緒に世界をめぐる~奉納スキルでアイテムゲット☆彡~
霧ちゃん→霧聖羅
ファンタジー
村が疫病に侵された。
大人たちは一人また一人と倒れていった。
わたしが『魔神様』から、にぃにが『武神様』から『ご寵愛』を賜ったのが二人だけ助かった理由。
ご寵愛と一緒に賜ったスキルは色々あったんだけど、わたしね、『奉納』スキルが一番ズルっ子だと思います。
※一章が終わるまでは12時&20時の2回更新。
ソレ以降はストックが切れるまで、毎日12時に更新します。
※表紙画像は、『こんぺいとう**メーカー』さんを使わせていただきました。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
異世界で勇者をすることとなったが、僕だけ何も与えられなかった
晴樹
ファンタジー
南結城は高校の入学初日に、クラスメイトと共に突然異世界に召喚される。
異世界では自分たちの事を勇者と呼んだ。
勇者としてクラスの仲間たちと共にチームを組んで生活することになるのだが、クラスの連中は元の世界ではあり得なかった、魔法や超能力を使用できる特殊な力を持っていた。
しかし、結城の体は何の変化もなく…一人なにも与えられていなかった。
結城は普通の人間のまま、元の界帰るために奮起し、生きていく。
俺とエルフとお猫様 ~現代と異世界を行き来できる俺は、現代道具で異世界をもふもふネコと無双する!~
八神 凪
ファンタジー
義理の両親が亡くなり、財産を受け継いだ永村 住考(えいむら すみたか)
平凡な会社員だった彼は、財産を譲り受けた際にアパート経営を継ぐため会社を辞めた。
明日から自由な時間をどう過ごすか考え、犬を飼おうと考えていた矢先に、命を終えた猫と子ネコを発見する。
その日の夜、飛び起きるほどの大地震が起こるも町は平和そのものであった。
しかし、彼の家の裏庭がとんでもないことになる――
続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜
ぽん
ファンタジー
⭐︎書籍化決定⭐︎
『拾ってたものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』
第2巻:2024年5月20日(月)に各書店に発送されます。
書籍化される[106話]まで引き下げレンタル版と差し替えさせて頂きます。
第1巻:2023年12月〜
改稿を入れて読みやすくなっております。
是非♪
==================
1人ぼっちだった相沢庵は小さな子狼に気に入られ、共に異世界に送られた。
絶対神リュオンが求めたのは2人で自由に生きる事。
前作でダークエルフの脅威に触れた世界は各地で起こっている不可解な事に憂慮し始めた。
そんな中、異世界にて様々な出会いをし家族を得たイオリはリュオンの願い通り自由に生きていく。
まだ、読んでらっしゃらない方は先に『拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』をご覧下さい。
前作に続き、のんびりと投稿してまいります。
気長なお付き合いを願います。
よろしくお願いします。
※念の為R15にしています。
※誤字脱字が存在する可能性か高いです。
苦笑いで許して下さい。
悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く
ひよこ1号
ファンタジー
過労で倒れて公爵令嬢に転生したものの…
乙女ゲーの悪役令嬢が活躍する原作小説に転生していた。
乙女ゲーの知識?小説の中にある位しか無い!
原作小説?1巻しか読んでない!
暮らしてみたら全然違うし、前世の知識はあてにならない。
だったら我が道を行くしかないじゃない?
両親と5人のイケメン兄達に溺愛される幼女のほのぼの~殺伐ストーリーです。
本人無自覚人誑しですが、至って平凡に真面目に生きていく…予定。
※アルファポリス様で書籍化進行中(第16回ファンタジー小説大賞で、癒し系ほっこり賞受賞しました)
※残虐シーンは控えめの描写です
※カクヨム、小説家になろうでも公開中です
司書ですが、何か?
みつまめ つぼみ
ファンタジー
16歳の小さな司書ヴィルマが、王侯貴族が通う王立魔導学院付属図書館で仲間と一緒に仕事を頑張るお話です。
ほのぼの日常系と思わせつつ、ちょこちょこドラマティックなことも起こります。ロマンスはふんわり。
欲しいものはガチャで引け!~異世界召喚されましたが自由に生きます~
シリウス
ファンタジー
身体能力、頭脳はかなりのものであり、顔も中の上くらい。負け組とは言えなそうな生徒、藤田陸斗には一つのマイナス点があった。それは運であった。その不運さ故に彼は苦しい生活を強いられていた。そんなある日、彼はクラスごと異世界転移された。しかし、彼はステ振りで幸運に全てを振ったためその他のステータスはクラスで最弱となってしまった。
しかし、そのステ振りこそが彼が持っていたスキルを最大限生かすことになったのだった。(軽い復讐要素、内政チートあります。そういうのが嫌いなお方にはお勧めしません)初作品なので更新はかなり不定期になってしまうかもしれませんがよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる