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第五話
馬がちょっと気の毒だけど<Ⅱ>
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どんっ! がんっ! ごんっ!
壁の向こう側から物凄い音がしている。
「ウソ、壊すつもり!?」
強化された魔法の石壁を破壊しようとしているらしい。
馬車が立て続けにぶつかってもヒビ一つ出来なかった壁を壊せるのだろうか。
「ぬおおお!!」
どんっ! がんっ! ごんっ!
凄い雄叫びを上げながらが何度も打ち付ける音がする。マジか!?
そんな力があるのか? それともサーチで漏らした凄い道具でも持っているのか?
「二人ともお気を付けろ!」
そう言うと3人で迎撃のために身構える。
そしてしばらくすると音が止まり静かになった。
「…………ん、あ、あれ?」
いや、そこは音が静かになった瞬間最後の一撃で壁を破壊するのがセオリーだろ。
「どうした?」
「貴様等か! なんの恨みでこのようなことをする!」
「うわ!?」
静かになって待っていたら、3mを越える壁から顔がぬるっと出てきて怒られた。
叫ぶのはあの全身甲冑の男で壁を破壊しようとしたが失敗したらしい。
「お、重たいっ! は、早くお願いします!」
「ま、待て……鎧が重くて……ぐっ、ぬぐぐっ!」
破壊から壁越えに変えたようだが、相当重いらしく黒タイツの部下達に持ち上げてもらってなんとか顔を出すのが限界のようだった。
「お前等が旅芸人の一座を狙って追いかけりするからだろ! この野郎!」
ぼんっ!
「ぐお!?」
デルは杖からファイアーショットを放つと綺麗に甲冑男の顔に当たった。
当然魔法防御力が高い鎧を身に着けているためほとんど効果はないが、顔が一部黒く焦げた。
「真っ黒になってやんの」
「ぶっ!」
デルの一言で思わず吹き出してしまう俺。
「ゆ、勇者様、そこで笑っては、い、いけませんよ……」
俺につられてセレーネも必死で堪えるが肩が震えている。
「き、貴様等、愚弄するか!!」
肘を壁に掛けて登ろうとしてくる。
「ぐぬぬ!」
「……もうだめ」
ぐちゃ!
「あれ?」
全身甲冑の顔が急に落ちていなくなった。
支えていた黒タイツの人達が限界を迎えたのだろう。
「なんかイヤな音がしたような気がするけど」
「ああ、なんてことだ! 我が部下達が!! おのれぇ……ちょっと待ってろ!」
壁の向こうからそう聞こえる。
「いやいやいや、部下を潰したのはあんただろ! 無茶したのが悪いんじゃんよ」
デルが突っ込むがおそらく相手には聞こえていないだろう。
「どうするのでしょう?」
「多分だけど……」
うおおおおお!!
雄叫びが聞こえるが徐々に遠くなっていく。
「ああ、壁を回って来るのですね」
「そうらしい」
全身甲冑に巨大な斧を持って全速力で魔法の石壁の端から回ると息を切らせてやってきた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
このおっさん、筋力には自信があるようだがスタミナは微妙な感っぽい。
「よ……よ、もや……わ、げほごほ!」
「ああもう分かったから、ちょっと息を整えろよ」
済まないとばかりに手を上げて、しばらく息を整える。
「はあ……ふう……、済まなかった」
「いえ」
「では……よもや我ら結社の存在を知っている者共がいるとは……はぁはぁ……い、生かしてはおけん。覚悟せよ!」
「おいおい、これだけ待たせておいていきなりのそれかよ!?」
おっさんは斧が構えると刃の部分が輝き出す。どうやらそれが凄い武器であることは分かった。
「それで壁を壊せば良かったじゃん!」
「あんな壁如きにこの超絶スーパーウルトラゴールデンハイパーゴージャススラッシュクラッシュを使うのは勿体ないわ!」
「よくいうよ! 壊せないどころか超えることも出来なかったくせに!」
しかしなんだそのコテコテの長いワザ名はしかも、スラッシュなのかクラッシュなのかどっちなんだ?
「問答無用! おうりゃあああ!!」
壁の向こう側から物凄い音がしている。
「ウソ、壊すつもり!?」
強化された魔法の石壁を破壊しようとしているらしい。
馬車が立て続けにぶつかってもヒビ一つ出来なかった壁を壊せるのだろうか。
「ぬおおお!!」
どんっ! がんっ! ごんっ!
凄い雄叫びを上げながらが何度も打ち付ける音がする。マジか!?
そんな力があるのか? それともサーチで漏らした凄い道具でも持っているのか?
「二人ともお気を付けろ!」
そう言うと3人で迎撃のために身構える。
そしてしばらくすると音が止まり静かになった。
「…………ん、あ、あれ?」
いや、そこは音が静かになった瞬間最後の一撃で壁を破壊するのがセオリーだろ。
「どうした?」
「貴様等か! なんの恨みでこのようなことをする!」
「うわ!?」
静かになって待っていたら、3mを越える壁から顔がぬるっと出てきて怒られた。
叫ぶのはあの全身甲冑の男で壁を破壊しようとしたが失敗したらしい。
「お、重たいっ! は、早くお願いします!」
「ま、待て……鎧が重くて……ぐっ、ぬぐぐっ!」
破壊から壁越えに変えたようだが、相当重いらしく黒タイツの部下達に持ち上げてもらってなんとか顔を出すのが限界のようだった。
「お前等が旅芸人の一座を狙って追いかけりするからだろ! この野郎!」
ぼんっ!
「ぐお!?」
デルは杖からファイアーショットを放つと綺麗に甲冑男の顔に当たった。
当然魔法防御力が高い鎧を身に着けているためほとんど効果はないが、顔が一部黒く焦げた。
「真っ黒になってやんの」
「ぶっ!」
デルの一言で思わず吹き出してしまう俺。
「ゆ、勇者様、そこで笑っては、い、いけませんよ……」
俺につられてセレーネも必死で堪えるが肩が震えている。
「き、貴様等、愚弄するか!!」
肘を壁に掛けて登ろうとしてくる。
「ぐぬぬ!」
「……もうだめ」
ぐちゃ!
「あれ?」
全身甲冑の顔が急に落ちていなくなった。
支えていた黒タイツの人達が限界を迎えたのだろう。
「なんかイヤな音がしたような気がするけど」
「ああ、なんてことだ! 我が部下達が!! おのれぇ……ちょっと待ってろ!」
壁の向こうからそう聞こえる。
「いやいやいや、部下を潰したのはあんただろ! 無茶したのが悪いんじゃんよ」
デルが突っ込むがおそらく相手には聞こえていないだろう。
「どうするのでしょう?」
「多分だけど……」
うおおおおお!!
雄叫びが聞こえるが徐々に遠くなっていく。
「ああ、壁を回って来るのですね」
「そうらしい」
全身甲冑に巨大な斧を持って全速力で魔法の石壁の端から回ると息を切らせてやってきた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
このおっさん、筋力には自信があるようだがスタミナは微妙な感っぽい。
「よ……よ、もや……わ、げほごほ!」
「ああもう分かったから、ちょっと息を整えろよ」
済まないとばかりに手を上げて、しばらく息を整える。
「はあ……ふう……、済まなかった」
「いえ」
「では……よもや我ら結社の存在を知っている者共がいるとは……はぁはぁ……い、生かしてはおけん。覚悟せよ!」
「おいおい、これだけ待たせておいていきなりのそれかよ!?」
おっさんは斧が構えると刃の部分が輝き出す。どうやらそれが凄い武器であることは分かった。
「それで壁を壊せば良かったじゃん!」
「あんな壁如きにこの超絶スーパーウルトラゴールデンハイパーゴージャススラッシュクラッシュを使うのは勿体ないわ!」
「よくいうよ! 壊せないどころか超えることも出来なかったくせに!」
しかしなんだそのコテコテの長いワザ名はしかも、スラッシュなのかクラッシュなのかどっちなんだ?
「問答無用! おうりゃあああ!!」
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