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第四話
やっと着いたよ大きな街
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平原の街道を歩いていると街に入る前に、少し離れたところに布や木などを使った簡素な建物がぽつんぽつんと点在し始めた。
「少しだけお待ちいただけますか?」
セレーネが立ち止まって自らの綺麗な金の髪をまとめ始めるとフードを被った。
「デルもマントの前を閉じて、フードを被った方がいいです」
「僕もなの?」
「ここからは沢山の人間が居ますので、デルは珍しいのであらぬ誤解を受けるかもしれません」
そういえば紋様族は悪魔の種族とか言われているんだっけ。彼女は人間との混血なので純粋な紋様族に比べて普段紋様は薄くよく見なければ分からないが、強い感情により浮かび上がってくる。
少しだけ不満そうな顔をしながらデルはセレーネと同じくフードを被った。
「デルは分かるけど、セレーネはなんで?」
アティウラが素朴な疑問を述べた。
「まだ未熟の身でありまして、これだけ大きな街の人々全員に治療を施すのは難しいのです」
「ああ、そういうことね」
彼女が使える回復系の魔法には限界があり、重たい病気や重体の人間は一日に数名しか治せない。
どれだけの人口が居るかは分からないが治すとなったら大変な事になってしまうのだろう。
「あれって……」
この辺りの事は一番詳しいであろう隣で歩くセレーネの方を見る。
「あれは王都に住むことを認めてもらえない難民や移民達です」
「そういう人達もいるのか」
奴隷とかではないが街に住むことが出来ないため、こうやって街の外側に勝手に住処を作って生活をしているらしい。
全てを受け入れることは無理なのは分かる。でも彼らだって必死に生きているのだろうし、せめてもう少しどうにかならないものか。
「まーた何か余計なこと考えている?」
「え、いや何も考えてはいないよ」
言っては悪いがあまりにも見窄らしい家を黙って見ていたら、デルがため息交じりに話しかけてきた。
「まだ国が黙認してるだけマシ」
「そうなの!?」
手を繋いだままのアティウラが俺の顔を覗き込んできた。
「公爵領は難民を本物のゴミ溜めに置いてる」
さらりと言うアティウラだが、なかなか衝撃的な話だった。
「はい……街から少し離れたところに大きな窪地があって、そこには街から出たゴミを捨てる場所で、そこに難民を追い立てているのです」
セレーネが補足説明をしてくれたが、ゴミ溜めというのは比喩などでなく本物のゴミ溜めであった。
「更にあの窪地はそこまで大きくなく周囲を壁で囲ってあって、まるで監獄みたいになっているのです」
「そんなことが許されるのか……」
「もちろん、わたくしとしても決して気分の良いものではありませんが、それぞれの街には許容量というものがありますし、難民が増えると治安の悪化や疫病などの問題も出て来ます」
的確な説明をしてくれるセレーネ。
大量生産が可能な世界じゃないので、食糧から住む場所まで決められたキャパシティというものがある。その限界を超えてしまえば直ぐに経済不和を生む。
具体的には貧困からの犯罪率の上昇に不衛生な環境からの疫病か……。
難民問題て難しいんだな。
「それってやっぱり魔王軍のせいなのかな」
「それがそうでもなくてですね……西方であればそうなのでしょうが、この辺りは距離がかなりあるので理由は別にあるんです」
セレーネが少しだけ困った顔をする。
「それってもしかして亜人戦争のせい?」
少し後ろで歩いていたいきなりデルが話しに割って入った。
「え、ええ……」
突如話し始めたデルにセレーネの表情と声のトーンが更に落ちていく。
どうやら結構重たい話らしい。
「その話なら、紋様族は戦争に加わっていないから気にしなくていいよ」
「悪いが俺としてもそういうところは知っておきたい」
そうですねと、セレーネが旅すがら話を初めてくれた。
“亜人戦争”それはこの辺りの人間が呼ぶ俗称で彼の国では“聖戦”と呼ばれていてセレーネのアルデ神とは、別の神を崇める人々が起こした戦争で相手は亜人達である。
その国は聖都と呼ばれ全知全能の神アリアドサシカエセナグと呼ばれる神。名前が長いな……アリアド神と呼ぼう。
その神が最初に地上に降りた場所としてそこは決して犯してはならない聖地でもある。
あまり詳しい事情は分からないがアリアド神の教義は人間を頂点としたものであり、亜人や獣人に対して非常に排他的な政治を行っているという。
そのことで十年くらい前にアリアド教と複数の亜人との間に国境の問題で小競り合いが生じる。
その小競り合いは徐々に大きくなり、沢山の獣人や亜人を巻き込み最後は大きな戦争へと張ってしていったらしい。
最後は結局数に勝る人間側の圧倒的勝利となるが、亜人達は最後の抵抗として人間達の田畑を焼き払って井戸や水源に毒を入れた。
そのゲリラ戦は功を奏し、広大な穀倉地域と水源を失った人間側も多大なダメージを受けることとなる。いわゆる痛み分けってやつだな。
戦争が終わって十年の時が流れているが食糧事情はなかなか回復せず、今でも難民を生み続けているとのこと。
「なるほど」
「彼らはアリアド教徒ですので、極力近づかないようにしてください」
セレーネはデルやアティウラ、そして俺を見ながらそう警告する。
「頼まれても近づきたくない」
「分かった。僕も気をつけるよ」
当然と言えば当然だがアティウラもデルも彼らに対してあまり良い感情を持ち合わせていない。
「王都にはおおよそ5%程の亜人が住んでいると言われています。もし彼ら難民を受け入れたとしたら軋轢や衝突が生まれ社会問題に発展しかねません」
受け入れたいと思っても元より居る人達と衝突するのが分かっていたら、受け入れがたいところもあるか。
ったく、全知全能とか言ってても、あのつるつる宇宙人に造られた偽物だってのに、そんなものに振り回されるなんてな……。
「少しだけお待ちいただけますか?」
セレーネが立ち止まって自らの綺麗な金の髪をまとめ始めるとフードを被った。
「デルもマントの前を閉じて、フードを被った方がいいです」
「僕もなの?」
「ここからは沢山の人間が居ますので、デルは珍しいのであらぬ誤解を受けるかもしれません」
そういえば紋様族は悪魔の種族とか言われているんだっけ。彼女は人間との混血なので純粋な紋様族に比べて普段紋様は薄くよく見なければ分からないが、強い感情により浮かび上がってくる。
少しだけ不満そうな顔をしながらデルはセレーネと同じくフードを被った。
「デルは分かるけど、セレーネはなんで?」
アティウラが素朴な疑問を述べた。
「まだ未熟の身でありまして、これだけ大きな街の人々全員に治療を施すのは難しいのです」
「ああ、そういうことね」
彼女が使える回復系の魔法には限界があり、重たい病気や重体の人間は一日に数名しか治せない。
どれだけの人口が居るかは分からないが治すとなったら大変な事になってしまうのだろう。
「あれって……」
この辺りの事は一番詳しいであろう隣で歩くセレーネの方を見る。
「あれは王都に住むことを認めてもらえない難民や移民達です」
「そういう人達もいるのか」
奴隷とかではないが街に住むことが出来ないため、こうやって街の外側に勝手に住処を作って生活をしているらしい。
全てを受け入れることは無理なのは分かる。でも彼らだって必死に生きているのだろうし、せめてもう少しどうにかならないものか。
「まーた何か余計なこと考えている?」
「え、いや何も考えてはいないよ」
言っては悪いがあまりにも見窄らしい家を黙って見ていたら、デルがため息交じりに話しかけてきた。
「まだ国が黙認してるだけマシ」
「そうなの!?」
手を繋いだままのアティウラが俺の顔を覗き込んできた。
「公爵領は難民を本物のゴミ溜めに置いてる」
さらりと言うアティウラだが、なかなか衝撃的な話だった。
「はい……街から少し離れたところに大きな窪地があって、そこには街から出たゴミを捨てる場所で、そこに難民を追い立てているのです」
セレーネが補足説明をしてくれたが、ゴミ溜めというのは比喩などでなく本物のゴミ溜めであった。
「更にあの窪地はそこまで大きくなく周囲を壁で囲ってあって、まるで監獄みたいになっているのです」
「そんなことが許されるのか……」
「もちろん、わたくしとしても決して気分の良いものではありませんが、それぞれの街には許容量というものがありますし、難民が増えると治安の悪化や疫病などの問題も出て来ます」
的確な説明をしてくれるセレーネ。
大量生産が可能な世界じゃないので、食糧から住む場所まで決められたキャパシティというものがある。その限界を超えてしまえば直ぐに経済不和を生む。
具体的には貧困からの犯罪率の上昇に不衛生な環境からの疫病か……。
難民問題て難しいんだな。
「それってやっぱり魔王軍のせいなのかな」
「それがそうでもなくてですね……西方であればそうなのでしょうが、この辺りは距離がかなりあるので理由は別にあるんです」
セレーネが少しだけ困った顔をする。
「それってもしかして亜人戦争のせい?」
少し後ろで歩いていたいきなりデルが話しに割って入った。
「え、ええ……」
突如話し始めたデルにセレーネの表情と声のトーンが更に落ちていく。
どうやら結構重たい話らしい。
「その話なら、紋様族は戦争に加わっていないから気にしなくていいよ」
「悪いが俺としてもそういうところは知っておきたい」
そうですねと、セレーネが旅すがら話を初めてくれた。
“亜人戦争”それはこの辺りの人間が呼ぶ俗称で彼の国では“聖戦”と呼ばれていてセレーネのアルデ神とは、別の神を崇める人々が起こした戦争で相手は亜人達である。
その国は聖都と呼ばれ全知全能の神アリアドサシカエセナグと呼ばれる神。名前が長いな……アリアド神と呼ぼう。
その神が最初に地上に降りた場所としてそこは決して犯してはならない聖地でもある。
あまり詳しい事情は分からないがアリアド神の教義は人間を頂点としたものであり、亜人や獣人に対して非常に排他的な政治を行っているという。
そのことで十年くらい前にアリアド教と複数の亜人との間に国境の問題で小競り合いが生じる。
その小競り合いは徐々に大きくなり、沢山の獣人や亜人を巻き込み最後は大きな戦争へと張ってしていったらしい。
最後は結局数に勝る人間側の圧倒的勝利となるが、亜人達は最後の抵抗として人間達の田畑を焼き払って井戸や水源に毒を入れた。
そのゲリラ戦は功を奏し、広大な穀倉地域と水源を失った人間側も多大なダメージを受けることとなる。いわゆる痛み分けってやつだな。
戦争が終わって十年の時が流れているが食糧事情はなかなか回復せず、今でも難民を生み続けているとのこと。
「なるほど」
「彼らはアリアド教徒ですので、極力近づかないようにしてください」
セレーネはデルやアティウラ、そして俺を見ながらそう警告する。
「頼まれても近づきたくない」
「分かった。僕も気をつけるよ」
当然と言えば当然だがアティウラもデルも彼らに対してあまり良い感情を持ち合わせていない。
「王都にはおおよそ5%程の亜人が住んでいると言われています。もし彼ら難民を受け入れたとしたら軋轢や衝突が生まれ社会問題に発展しかねません」
受け入れたいと思っても元より居る人達と衝突するのが分かっていたら、受け入れがたいところもあるか。
ったく、全知全能とか言ってても、あのつるつる宇宙人に造られた偽物だってのに、そんなものに振り回されるなんてな……。
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