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第三話

連行

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 教会への礼拝が終わると、今度は村の出口付近の街道に向かう。
 そこにはアティウラとデル、そして3バカが国に差し出すために今や元となった旦那様と、こっちはポータルに引き渡す卿御洲が鎖の繋がった木製の手枷を付けられていた。

 卿御洲が恨めしそうに俺を睨むように見ているが知ったことではない。
 もうすぐ彼の連れだったオークとノールが村人達の手で公開処刑されるが、さすがにそんなものは見たくもないのでさっさと村を出ようとこっちにいた。

 元旦那様はすっかり憔悴したのか元気なく俯いていて、セレーネが心を入れ替えればきっとまだやり直せますとか言葉をかけていた。

「この度は村、ひいては国の危機を救っていただき主に代わり感謝いたします」

 ミネディアと呼ばれる3バカの中心人物である女騎士が礼儀に則って挨拶をしてきた。

「どうか丁重に移送するようお願いいたします」

 それに対してセレーネも聖職者らしく返答をする。
 その間も、卿御洲は俺の方をずっと見ている。すっかり恨まれているようだが、完全に逆恨みだ。

「もちろん、お任せくださ……」

 どすん……どすんっ!

「なんの音?」

 何か地響きのような重たい音が聞こえた。

「わ、わたくしではありませんよ!」

 そりゃそうだろ。

 条件反射のようにセレーネが否定してきたが彼女がどんなに重くなってもこんな音は出せない。結構と気にするタイプなんだよな。今後は本当に失言しないように気をつけないと。

「“サーチ”……」

 音源を調べてみると、どうやら森の方かららしい。正体は人型の魔物……。

「え……7m級……のトロル……?」

「は? 7mのトロルなんているわけないじゃない。そんなのロードとかキングとかじゃないと……」

 デルは何を馬鹿なといった感じだったが、何かに気付いて最後まで言葉が続かなかった。

「どうやら親玉登場かもしれない」

「親玉にしては大きすぎる」

 アティウラはポールウェポンの保護を外して戦闘の準備を始めていた。

 森にいた鳥達が危険を察したのか一斉に飛び出した。
 更に鹿や猪、狼のような動物たちも森から出て来て一直線に逃げていく。それは人よりも恐ろしいのが森にいるって事だ。

「仕方があるまい。ここは我らが行きましょう!」

「いや、アンタ等じゃ無理だろ」

「なんだと!? 我らでは力不足だというのか!」

 思いっきり不足しているわ! 小さい方のトロルにですら手も脚も出なかったのに何をどうしたら、そういう考えになるんだよ。

【!!!警告!!!】

「なに?」

 ARの如く、目の前に赤い文字が浮かぶと警告音が鳴り響いた。
 よほど危険な生物らしく否応なくレーダーが危険だと反応しやがった。

「うわっ……あれなに……」

 それは高台にある二階建ての建物の屋根から巨大な何かの頭が見えた。

「嘘だろ……、本当に7mあるのかよ」

「……ごくり」

 その場にいる全員の緊張感が伝わってくる。

「セレーネは……重要だから、アティウラ、旦那様の手枷を外してくれ」

「いいの?」

 俺は黙って首を縦に振ると、アティウラは懐から鉈のような小剣を取り出すと手枷を力ませに破壊した。

「なんだと!? 何勝手なことをしている!」

「緊急事態だ! おい旦那様、今なら村の中心でこれからモンスター共の処刑があるから人が集まっているはずだ。そこに行ってとにかく逃げるように言え。昨日とは比べものにならないほどの凶悪なのが近づいている」

「……わ、分かった!」

 俺と3バカを何度か見渡して、意を決すると旦那様は村の中心に向かって走りだした。

「お、おい! 貴様だから何を勝手な……」

「みんな、悪いが相手は相当強い。少なくとも村の人達が逃げるくらいまでの時間稼ぎだけでもしたい」

「ええ、承りました」

「そうね。村人が居なければまたファイアーボールで焼くって方法もあるもんね」

「さすがに斬れるかな……」

 俺が声をかける前から3人は既にやる気になって準備を始めていた。

「な、聖女様!? 何も貴女様が危険な場所に行かなくても……」

 女騎士がセレーネに声をかけて止めようとする。

「大丈夫です。勇者様ならきっと全員が生き残るための方法を考えてくれますから」

「こんな低レベルで無名な勇者など、たまたま幸運が重なっていただけです!」

 むか……。

「それに彼の者は、一切自分の手を汚さず他者に任せきりではありませんか! 幾ら何でも買い被りすぎです!」

 むかむか……。確かに一部自分の手は汚さないってところは少々耳が痛いところではあるが、お前にだけは言われたくない。
 なんの策もなく、周りをに迷惑をかけても高性能な鎧のおかげで助かっているだけのくせに。

「貴女様はとても大切な御身なのです! さあ、我らが護ります故一度撤退……、いえ戦略的な後退をするべきです!」

 後ろに立つ二人の騎士も、黙って首を縦に振った。
 要するにアンタ等でもあれは怖いのね。素直に最初からそう言えば良いと思うが、立場上そうは言えない。なんとも騎士とは面倒な商売である。

 いやそもそも、お前達に戦略なんてあるのかと聞いてみたい……。

「わたくしは大丈夫ですので」

「大丈夫ではありません! さあ二人とも、聖女様をお連れするんだ!」

 ああなんかもう面倒くさい。
 まさか、こんなに早く使うことになるとは。

「お前等3人とも“パージ”!」

 ぱすんっ!

「ん、なんだ?」

 3バカの鎧からパンクしたような破裂音がすると、鎧が次々と剥がれるように外れていく。

「うわぁ!? ちょ……嘘!? きゃ、きゃああ!!」

 昨日彼らの鎧を色々と調べていたら強制的に装備解除のコマンドを見つけていた。
 全てを脱がすには沢山のコマンドが必要だったので、それを1ワードで簡単に出来る様にマクロを組んでおいた。

 意外なことに悲鳴は普通の女の子であり、しかも結構なものをお持ちであった。

「あ、姐さん! そんなに動いたら見えてしまいます!」

 慌てて取り巻きの二人がミネディアを隠すように立ちはだかるが、当然彼らも素っ裸である。

「うわっ、うわっ、うわー!! そんな粗末なものを見せるんじゃない!」

 座り込んだミネディアを覆うように立つ二人。
 そうなると彼女の眼前には、男性のあれが見えるわけで。

「す、すみません!」

 慌てて二人は何故か相方のそれを手で隠した。
 これでもう大丈夫とばかりに二人して親指を立てる。

「こ、この、クソ勇者! 元に戻せ! あ、あれ……?」

 ミネディアが騎士とは思えないほどの汚い言葉遣いをするが、既に彼らはその場から居なくなっていたのだった。
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