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第三話
卿御洲君と話しましょう<Ⅱ>
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「あぐあぐあぐっ! 美味ぇ、美味え!」
「うはっ、これ美味いっすよ! ちゃんと中まで火が通ってて味も付いているし!」
「うん……うん……」
一人と二匹は口々に美味いと連呼しながら食べていた。
どうやら森の中では、あまり食事事情は良くなかったらしいな。
「食べながらでいいんだけど、これって何処で手に入れたものなの?」
雑嚢から一番の問題の光線銃を取りだした。
「……え? あ、そ、それ! い、いや、それは……」
村を襲った件を聞かれると思っていたのだろう。全然違うことを聞かれて困惑したのが見て取れた。
実のところ彼が村を襲った理由などはどうでもよかった。
コイツはただのむっつり野郎でこの銃を使ってテイムしていかがわしいことでもしようしたのだと大体の予想が出来ているからだ。
今のところ俺が把握しているのは勇者に行動の制限は存在しない。悪行を行ってもステータス上のペナルティは多分ない。
魔王を倒すという目的は与えられるが、どのようにして成長して倒すかは自由であり、ある程度の悪行を重ねても罪は問われないっぽい。
だが問題がないのはあくまでもステータス上の話であって、罪のない人を殺せば罪に問われるだろうし、同じ勇者や冒険者仲間からは村八分にされるであろう。そっちはまた別の話である。
それよりも今危険なのはこの光線銃の方だ。これは本来存在してはいけないものであり、どうやって手に入れたのかが大事である。
もしかしたら複数存在しているなどであれば大変なことになりかねない。
「これでトロルを手懐けたんだよね?」
「…………」
俺のこれが耳に入らないのか光線銃をずっと凝視しているケイオスくん。どうやら相当大事なものらしい。
「これを使ってメイドさんにいかがわしいことをしようと画策したとか」
「ええ!? ち、違っ、ぼ、僕は……ただ……」
いつまでも黙っているので少し面倒くさくなって、こちらから話を振ってみた。
「はぁ、ちゃんと話をしてくれたら場合によっては返しても構わないんだけど」
「そ、そうなの!? そ、それは……」
たどたどしく彼は話し始めたが、あまりにも話が途切れがちなので俺の方で内容をまとめておくと。
『何時ものようにボッチのケイオスくんはレベルアップのために森で狩りをしていたら、いきなりボスクラスの魔王軍先遣隊が襲ってきて、今の魔王の言いつけで勇者は殺さずに生け捕りにしているらしく捕まってしまった』
下手に殺すと際限なく何度もやってくるから、捕まえて適当に幽閉とかする方が安全だと判断しているのか。
新しい魔王って勇者が復活するプロセスとかをよく分かっているんだな。
『檻に入れられ森の奥に運ばれると、そこで本拠まで転送待ちの間、どこからともなく光る物体が落下してきてそれが魔王軍先遣隊の司令官に直撃して現場は大混乱になった』
魔王軍の本拠地は本来ここからずっと遠くだが、神出鬼没に現れるのはやはりそういった転送装置があるからなのか。
『落ちてきた光る物体は一瞬だったのでよく見えなかったが、昔テレビで見たUFOに似た形をしていたが中に宇宙人みたいのは見なかった。代わりに女の子の悲鳴がした気がする』
UFO……やはり宇宙人が何かしら絡んでいるのは確実か。
ケイオスくんはその混乱のおかげで逃げ出すことに成功し、その途中で光線銃を拾ったとのこと。
この話を聞く限り魔王軍の持っていたものとは考えづらい。どこまで使えるのかは分からないが、もし彼らが持っていたら勇者とかも仲間に引き入れられただろうし。
つーか、そうなったら完全に世界のバランスが崩れて魔王軍の大勝利になってるだろ。
そうなるとUFOの乗員が落としたのだろうか。それをたまたま彼が見つけて拾った。まあその後のこと聞かなくてもなんとなく分かるから問題ない。
「……だ、大体、そん、な感じ」
「そうか、よく分かったよ」
俺は話をしてくれたのでケイオスくんの縄を外した。
さすがに二匹は魔物なのでそのままにしておく。
「あ、ありがとう……、そ、それで、こ、光線銃は」
「場合によってはって言っただろ。こんな危険な代物はやっぱり返すことは出来ない。これは有るべき場所に戻すよ」
「そ……、そ、そんな……」
「分かってくれ。アンタも大変だったんだろうけど、こんなものを持っていても決して良いことにはならないって」
「……で、でも……わ、分かった」
意外と素直に引き下がるケイオスくんだった。
「俺も色々とあったからさ、君が大変だったのも容易に想像が付くよ」
「……そ、そう?」
「ああ、いきなり見知らぬ土地に放り込まれて魔王を倒せって、しかも俺の場合伝説の武器がないんだぜ」
「え!? そ、そうなんだ……」
驚いた顔で俺を見るケイオスくん。
「ぼ、僕も……貰った武器がステータス不足でちゃんと使えないんだ」
「君もか。結構使えないんだよなあの神様」
「う、うんっ、マジでクソゲーだよね!」
うんうんと彼は同調するように首を上下に振りながらそう言った。
「うはっ、これ美味いっすよ! ちゃんと中まで火が通ってて味も付いているし!」
「うん……うん……」
一人と二匹は口々に美味いと連呼しながら食べていた。
どうやら森の中では、あまり食事事情は良くなかったらしいな。
「食べながらでいいんだけど、これって何処で手に入れたものなの?」
雑嚢から一番の問題の光線銃を取りだした。
「……え? あ、そ、それ! い、いや、それは……」
村を襲った件を聞かれると思っていたのだろう。全然違うことを聞かれて困惑したのが見て取れた。
実のところ彼が村を襲った理由などはどうでもよかった。
コイツはただのむっつり野郎でこの銃を使ってテイムしていかがわしいことでもしようしたのだと大体の予想が出来ているからだ。
今のところ俺が把握しているのは勇者に行動の制限は存在しない。悪行を行ってもステータス上のペナルティは多分ない。
魔王を倒すという目的は与えられるが、どのようにして成長して倒すかは自由であり、ある程度の悪行を重ねても罪は問われないっぽい。
だが問題がないのはあくまでもステータス上の話であって、罪のない人を殺せば罪に問われるだろうし、同じ勇者や冒険者仲間からは村八分にされるであろう。そっちはまた別の話である。
それよりも今危険なのはこの光線銃の方だ。これは本来存在してはいけないものであり、どうやって手に入れたのかが大事である。
もしかしたら複数存在しているなどであれば大変なことになりかねない。
「これでトロルを手懐けたんだよね?」
「…………」
俺のこれが耳に入らないのか光線銃をずっと凝視しているケイオスくん。どうやら相当大事なものらしい。
「これを使ってメイドさんにいかがわしいことをしようと画策したとか」
「ええ!? ち、違っ、ぼ、僕は……ただ……」
いつまでも黙っているので少し面倒くさくなって、こちらから話を振ってみた。
「はぁ、ちゃんと話をしてくれたら場合によっては返しても構わないんだけど」
「そ、そうなの!? そ、それは……」
たどたどしく彼は話し始めたが、あまりにも話が途切れがちなので俺の方で内容をまとめておくと。
『何時ものようにボッチのケイオスくんはレベルアップのために森で狩りをしていたら、いきなりボスクラスの魔王軍先遣隊が襲ってきて、今の魔王の言いつけで勇者は殺さずに生け捕りにしているらしく捕まってしまった』
下手に殺すと際限なく何度もやってくるから、捕まえて適当に幽閉とかする方が安全だと判断しているのか。
新しい魔王って勇者が復活するプロセスとかをよく分かっているんだな。
『檻に入れられ森の奥に運ばれると、そこで本拠まで転送待ちの間、どこからともなく光る物体が落下してきてそれが魔王軍先遣隊の司令官に直撃して現場は大混乱になった』
魔王軍の本拠地は本来ここからずっと遠くだが、神出鬼没に現れるのはやはりそういった転送装置があるからなのか。
『落ちてきた光る物体は一瞬だったのでよく見えなかったが、昔テレビで見たUFOに似た形をしていたが中に宇宙人みたいのは見なかった。代わりに女の子の悲鳴がした気がする』
UFO……やはり宇宙人が何かしら絡んでいるのは確実か。
ケイオスくんはその混乱のおかげで逃げ出すことに成功し、その途中で光線銃を拾ったとのこと。
この話を聞く限り魔王軍の持っていたものとは考えづらい。どこまで使えるのかは分からないが、もし彼らが持っていたら勇者とかも仲間に引き入れられただろうし。
つーか、そうなったら完全に世界のバランスが崩れて魔王軍の大勝利になってるだろ。
そうなるとUFOの乗員が落としたのだろうか。それをたまたま彼が見つけて拾った。まあその後のこと聞かなくてもなんとなく分かるから問題ない。
「……だ、大体、そん、な感じ」
「そうか、よく分かったよ」
俺は話をしてくれたのでケイオスくんの縄を外した。
さすがに二匹は魔物なのでそのままにしておく。
「あ、ありがとう……、そ、それで、こ、光線銃は」
「場合によってはって言っただろ。こんな危険な代物はやっぱり返すことは出来ない。これは有るべき場所に戻すよ」
「そ……、そ、そんな……」
「分かってくれ。アンタも大変だったんだろうけど、こんなものを持っていても決して良いことにはならないって」
「……で、でも……わ、分かった」
意外と素直に引き下がるケイオスくんだった。
「俺も色々とあったからさ、君が大変だったのも容易に想像が付くよ」
「……そ、そう?」
「ああ、いきなり見知らぬ土地に放り込まれて魔王を倒せって、しかも俺の場合伝説の武器がないんだぜ」
「え!? そ、そうなんだ……」
驚いた顔で俺を見るケイオスくん。
「ぼ、僕も……貰った武器がステータス不足でちゃんと使えないんだ」
「君もか。結構使えないんだよなあの神様」
「う、うんっ、マジでクソゲーだよね!」
うんうんと彼は同調するように首を上下に振りながらそう言った。
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