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第二話
戦いが終わって<Ⅱ>
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「おっとそうだった。司祭殿にも大変お世話になったようで、奇跡の力で治療してくれたと先ほど聞きまして、なんと感謝したらよいか」
「気になさらないでください。これがわたくしの仕事ですから」
「誠に感謝致す」
族長は座る姿勢を正して感謝の意を表した。
「一応薬草などを調合してポーションを作ってはいるのじゃが、あまり効果が無くて八方ふさがりだったので本当に助かりました」
「きっと、これも女神のお導きなのでしょう」
「では、今回ばかりはアデルニモカエシエに感謝させていただこう」
セレーネと族長は同じポーズを取り祈りを捧げる。
「さて、こちらが聞いてばかりで申し訳ないが、ワイバーン達はどうやって倒したのじゃ? 見たところ勇者殿は武器の様なものも、魔法の杖や弓なども見受けられませぬが」
「あー……はい。無職です」
「無職?」
「まだポータルってところに行っていないもので職業は付いていないのです」
「なんと!? これまた珍しい事例じゃのう。では親ワイバーンを倒したのは強大な武器でも魔法でもないということないと?」
「いえ、魔法で倒しました」
「では、何か凄いアイテムを持っていらっしゃったのか」
「そういうわけでは……」
「それでは一体?」
大きな瞳が興味深そうに輝いている。
どうするか……、これ以上この族長から誤魔化せる気がしない。
「倒したのは俺ではなく彼女です」
そういって俺はデルを指差した。
「あーん……んんっ!?」
自分は関係ないと肉を頬張っていたデルは指を指されて驚いた。
「ヴェンデルガルトが?」
「そうです」
「ヴェンデルよ。それは誠なのか?」
「そ、それはぁ……」
デルは口の周りにソースを付けたまま返答に困った顔をしていた。
「……い、一応そうなっていますが、でもそれは僕の力じゃありません」
「自分の力ではないが倒したのは本当だと。なかなか興味深い話じゃが、もう少し詳しく説明してもらえぬか?」
「えっと……それは」
「なんじゃ、妾に話せぬようなことなのか?」
「そ、そういうわけでは……」
「なんじゃなんじゃ冷たい奴じゃのう」
「だって……そんなので話しても自慢しているみたいで……」
「ふぅ……やれやれ、勇者殿達におしっこしているところを見られて一皮剥けたかと思ったが、まだまだお子ちゃまじゃの」
「な!? な、な、な、なんで族長がその話を!?」
デルの紋様が一瞬で真っ赤になった。
「ん? 皆で話しておったぞ。妾のところにまで耳にしたのだから既に里中で噂になっておるだろ」
「なんだってー!?」
更に肩などにも色が浮いてきている。
なるほど、紋様は感情も表せるのか。
「あのヴェンデルが人間相手に後れを取って、しかもおしっこしているところをがっちり見られたってところまで聞いておる」
「ぎゃー!! まじですか!? もーさいてーだっ!!」
恥ずかしそうに顔を隠しながら叫んでいる。
「一応言っておくが俺は悪くないからな?」
「黙れ! あう……」
デルは思い切り吠えたが、頭が痛いのか椅子にもたれかかった。
「あんまり激しく動くなって、まだ回復しきっていないんだろ」
「普通に考えれば勇者殿は悪くはないだろうな。こんな僻地まで来てヴェンデルのおしっこを覗くのが目的だったとしたら、それはそれで剛毅なことではあるが」
「だから事故ですって」
「だったらなんであんなにがっちり見ていたんだ! あ、あう……」
「悪かったって……、だからそんなに興奮するなよ」
「そうじゃぞ、事故ならしょうがないことではないか。しょうがないことだが……。ぷ、ぷぷ……ぷぷぷ……」
うわっ族長、必死で笑い堪えてる。
すると今度は肌の方が真っ赤になっていく。
「そ、外は常に危険が付きまとう! って常日頃自分で言っておきながら無防備にも程があるだろ。もしこの御仁にその気が合ったら、どうなっていたかお前なら分かじゃろ……」
「ぐぬっ……。それは、そうなんですけど……」
族長の一言に何も反論出来ないデル。
「あのときは突然だったので隠れたのですが、そしたら直ぐ側でし始めちゃって……それで出づらくなったといいますかね」
「ふっ、そ、そうか……し、しかし……ぶっ! ぶふふ……。お、おしっこするなとは言わんが、どうして人が側にいることに気付かなかったのかのう……」
族長は肩を振るわせて笑いだすと、デルと同じく紋様が濃く浮かび上がる。
「ぞ、族長!!」
「い、今のタイミングで笑い出すなんてずるいよー!」
族長に釣られてカトリナまで笑い出す。一応悪いと思っているのか必死で声を殺して笑っている。
「そ、それに今日の功労者の一人はヴェンデルなんだから、笑っっては悪いよなっ……ふっ……ふふふ……」
族長とカトリナは紋様の色が変わるだけだが、デルの方は紋様が浮かび上がる感じで二人とその辺りが違う。
「しょうがないんじゃないかな、ほら我慢の限界だと注意散漫になって油断するだろうし」
「そんな要らぬフォローをすんな! 余計に惨めになるじゃないか!」
フォローしたつもりが怒られた。
紋様が少し引いたがまた顔の辺りに浮かび上がり今度は桃色っぽくなった。
「気になさらないでください。これがわたくしの仕事ですから」
「誠に感謝致す」
族長は座る姿勢を正して感謝の意を表した。
「一応薬草などを調合してポーションを作ってはいるのじゃが、あまり効果が無くて八方ふさがりだったので本当に助かりました」
「きっと、これも女神のお導きなのでしょう」
「では、今回ばかりはアデルニモカエシエに感謝させていただこう」
セレーネと族長は同じポーズを取り祈りを捧げる。
「さて、こちらが聞いてばかりで申し訳ないが、ワイバーン達はどうやって倒したのじゃ? 見たところ勇者殿は武器の様なものも、魔法の杖や弓なども見受けられませぬが」
「あー……はい。無職です」
「無職?」
「まだポータルってところに行っていないもので職業は付いていないのです」
「なんと!? これまた珍しい事例じゃのう。では親ワイバーンを倒したのは強大な武器でも魔法でもないということないと?」
「いえ、魔法で倒しました」
「では、何か凄いアイテムを持っていらっしゃったのか」
「そういうわけでは……」
「それでは一体?」
大きな瞳が興味深そうに輝いている。
どうするか……、これ以上この族長から誤魔化せる気がしない。
「倒したのは俺ではなく彼女です」
そういって俺はデルを指差した。
「あーん……んんっ!?」
自分は関係ないと肉を頬張っていたデルは指を指されて驚いた。
「ヴェンデルガルトが?」
「そうです」
「ヴェンデルよ。それは誠なのか?」
「そ、それはぁ……」
デルは口の周りにソースを付けたまま返答に困った顔をしていた。
「……い、一応そうなっていますが、でもそれは僕の力じゃありません」
「自分の力ではないが倒したのは本当だと。なかなか興味深い話じゃが、もう少し詳しく説明してもらえぬか?」
「えっと……それは」
「なんじゃ、妾に話せぬようなことなのか?」
「そ、そういうわけでは……」
「なんじゃなんじゃ冷たい奴じゃのう」
「だって……そんなので話しても自慢しているみたいで……」
「ふぅ……やれやれ、勇者殿達におしっこしているところを見られて一皮剥けたかと思ったが、まだまだお子ちゃまじゃの」
「な!? な、な、な、なんで族長がその話を!?」
デルの紋様が一瞬で真っ赤になった。
「ん? 皆で話しておったぞ。妾のところにまで耳にしたのだから既に里中で噂になっておるだろ」
「なんだってー!?」
更に肩などにも色が浮いてきている。
なるほど、紋様は感情も表せるのか。
「あのヴェンデルが人間相手に後れを取って、しかもおしっこしているところをがっちり見られたってところまで聞いておる」
「ぎゃー!! まじですか!? もーさいてーだっ!!」
恥ずかしそうに顔を隠しながら叫んでいる。
「一応言っておくが俺は悪くないからな?」
「黙れ! あう……」
デルは思い切り吠えたが、頭が痛いのか椅子にもたれかかった。
「あんまり激しく動くなって、まだ回復しきっていないんだろ」
「普通に考えれば勇者殿は悪くはないだろうな。こんな僻地まで来てヴェンデルのおしっこを覗くのが目的だったとしたら、それはそれで剛毅なことではあるが」
「だから事故ですって」
「だったらなんであんなにがっちり見ていたんだ! あ、あう……」
「悪かったって……、だからそんなに興奮するなよ」
「そうじゃぞ、事故ならしょうがないことではないか。しょうがないことだが……。ぷ、ぷぷ……ぷぷぷ……」
うわっ族長、必死で笑い堪えてる。
すると今度は肌の方が真っ赤になっていく。
「そ、外は常に危険が付きまとう! って常日頃自分で言っておきながら無防備にも程があるだろ。もしこの御仁にその気が合ったら、どうなっていたかお前なら分かじゃろ……」
「ぐぬっ……。それは、そうなんですけど……」
族長の一言に何も反論出来ないデル。
「あのときは突然だったので隠れたのですが、そしたら直ぐ側でし始めちゃって……それで出づらくなったといいますかね」
「ふっ、そ、そうか……し、しかし……ぶっ! ぶふふ……。お、おしっこするなとは言わんが、どうして人が側にいることに気付かなかったのかのう……」
族長は肩を振るわせて笑いだすと、デルと同じく紋様が濃く浮かび上がる。
「ぞ、族長!!」
「い、今のタイミングで笑い出すなんてずるいよー!」
族長に釣られてカトリナまで笑い出す。一応悪いと思っているのか必死で声を殺して笑っている。
「そ、それに今日の功労者の一人はヴェンデルなんだから、笑っっては悪いよなっ……ふっ……ふふふ……」
族長とカトリナは紋様の色が変わるだけだが、デルの方は紋様が浮かび上がる感じで二人とその辺りが違う。
「しょうがないんじゃないかな、ほら我慢の限界だと注意散漫になって油断するだろうし」
「そんな要らぬフォローをすんな! 余計に惨めになるじゃないか!」
フォローしたつもりが怒られた。
紋様が少し引いたがまた顔の辺りに浮かび上がり今度は桃色っぽくなった。
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