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第二話

そして現場へ<Ⅲ>

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「……これってどういうことなんだ?」

 軍監をサーチで見つけると周りに何かがいるのは分かった。
 それは魔物やモンスターなどの反応ではない。敵意や悪意がない相手とは反応が違うので軍監は一体何に襲われているんだ?

 急いで向かっていると森が切れ、岩が多く露出する場所に出る。
 すると少し離れた場所に変に目立つ色をした軍監の姿が見えた。
 こういうときは便利だな。

「子供!?」

 副長が驚き混じりに言う。
 その声に俺も相手を見ると確かに子供くらいの大きさの何者かが軍監の近くに居た。

「た……たぁ、助けてぇぇ!」

「こんな森に人間の子供がいるわけがない! 相手は魔物の類か!?」

 とにかく助けを求められているので、副長達数名の兵士は剣を抜き軍監の元へ走って行く。
 俺とセレーネは少し遅れて追いかける。

「軍監殿っ! 大丈夫ですか!」

 直ぐさま軍監を守るように隊形を固める兵士達。
 さすがに戦いに慣れていると感心してしまう。

「ま、魔物……魔物がわたしを殺そうと……」

「そこの娘! 何やつだ!」

「ちょ、な、なんなの。いきなり……」

 相手は少女にしか見えない。
 確かにナイフのようなものを持ってはいるが相手は成人男性である。腕力で勝てるとは到底思えない。
 寒い季節であるが彼女は薄着で手や脚は露出していて、その肌に刺青のような模様が入っているのが見える。

「カトリナ、煙幕!」

 大きな岩の上から更に女の子と思われる声がした。
 そこには、やはり同じく子供に見える数名が見下ろしていた。

「その方が良さそうだね……じゃあ」

 副長達と対峙している少女は刺青と思われる模様が首や顔などにも浮かび上がった。

「“ストーンブラスト”!」

 どーんっ!

 詠唱無しに魔法を発動させると轟音と共に地面から小石や砂がはじけ飛び、それらが顔に当たり思わず目を瞑る。

「くそっ!」

 何とか目を開けると今度は砂埃が舞い視界が悪くなる。

「気をつけろ! どこから来るか分からんぞ!」

 守りを固める兵士達。

「勇者様も気をつけてください」

 セレーネも俺を守るように立った。

 だが俺だけは別の考えをしていた。おそらく今の子達は逃げたと。
 砂埃が晴れてくると、予想通り女の子達はいなくなっていた。

「軍監殿、大丈夫ですか?」

 副長も相手は逃げたと判断したのか軍監に話を始めた。

「な、何をしていたのですか!」

「何って……、この人達がノールの相手をしている間に逃げたのはあんただろ……おっと」

 思わず突っ込むように声が出てしまい慌てて口を噤む。
 軍監は俺のことを一瞬ギロリと睨むが、副長が手を差し出すとそれを掴んで立ち上がる。

「痛っ! あ、脚が……」

「脚をやられたのですか?」

「そ、そうです。あの者達にやられたのです!」

「それにしては血も出ていないようですが……」

 今度はセレーネが思わず声を出してしまう。
 そして俺と同じく慌てて口を手で押さえる。

「聖女様、申し訳ありませんが軍監殿は名誉の負傷をしてしまったようでお願い出来ますか」

「承りました」

 セレーネが軍監の足元に手をかざす。

「せ、聖女様! いた、痛いです!」

「この辺りですね……、これは重症ですね」

 少し意地の悪いことをしているセレーネ。ワザと痛い部分に触れたな。
 俺は彼女が治療をしている間、先ほどの子達がいたところを見てみる。

「あの子達は一体……」

「おそらく紋様族でしょう」

「紋様族?」

 結構ファンタジー系のゲームとかやってるけど聞いたことない名前だな。

「彼らは、ああやって身体に無数の紋様があるのが特徴です」

 なるほど、あれって刺青じゃなくて紋様なのか。

「邪神と契約を結んで得た力だと言われています」

「でも見ていた限り、そんな邪悪な存在には見えなかったけど……」

「……確かに相手は圧倒的有利な立場のはずでした。それに軍監殿に一切手を出しておりません」

 目の前にいた少女以外は大きな岩の上にいたのでこちらから直接攻撃は出来ない。
 魔法を使ったあの少女も目眩ましで逃げていっただけだし。

「ですが、もしかしたら援軍を連れてくるかもしれませんし、ここは直ぐに戻った方が懸命でしょう」

「そうですね。本陣に戻りましょう」
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