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第二話
さてさて二話が始まります<Ⅰ>
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「貴様ァ……我が頭を足蹴にするとは……万死に値すると思うがいい……」
全身鎧の巨漢がその体躯に見合った剣を構えてこっちに向かってくる。
よかったぁ……二話があったよ……マジで終わるかと思った。
「ならばこっちも……早速これを使うことになるとはな」
そう今の俺には秘密兵器があるのだよ。
それは女神からもらった一振りの短剣である。
「見た目はただの短剣だが、なんと……」
「なに!?」
俺の言葉に驚く全身鎧。意外と付き合いが良いらしい。
「なんと……なんと、あ、あれ?」
ズボンのベルトに差してあったはずなんだけど……。って、まじ?
「嘘だろ!?」
下げていたはずの場所に鞘ごと無くなっていた。
「……何処かに落としたのか」
慌てて周囲を見渡すがそれらしいものは見当たらない。
「覚悟はいいか?」
「え……ちょ、うそ……、いやあそれ結構大きいですね」
探している間に全身鎧が目の前にまで来ていた。
思った以上に大きく、そして持っている剣はあり得ないほどデカかった。
「え、遠近法……」
身長は軽く2mを超えていて、剣も軽く俺の身長よりも大きい。
「ちょ、ちょっと待った! しばらく、しばらくだけウェイト!!」
「ん、なんだ!?」
俺のリアクションに驚いたのか全身鎧は後ろに少し下がった。
「“サーチ”半径1kmの範囲で俺の武器!」
【見つかりません】
……ウソだろ、反応がない。
それはつまるところ上空から落ちている最中に落としたってこと……なのか?
勘弁してくれっ!!
一応ポータルに行けば自動的に戻ってくるって聞いたけど……。
「この辺りにポータルなんてないよね」
「残念ですが、かなり遠いです」
顔を横に振りながらセレーネが答えてくれた。
ですよねー!
つまり俺は今、こんな巨体を相手に丸腰になったってことか。
はははっ、地上に復帰第一弾にしてはなかなか楽しい状況だな。
全然楽しくなんかねーよ!! どーすんだよこの状況! 思いっきり挑発しちゃったじゃねーか!
「そろそろ武器を持て、武器無き者を斬ったとあっては魔王様の名が汚れてしまう」
俺に焦れたのか鎧さんは武器を構え直して剣先を俺の目線に向ける。
するとカブトの奥の目なのだろうか。不気味に輝きだした。
ど、どうする。この鎧を何とかしないと……そ、そうだ。
「せめて名を名乗らないのか」
「むっ……確かに不作法であったな」
相手は一度剣先を下に向けて名乗り始めた。
「我が名は、魔王軍漆黒の騎士ヘルナイト!」
え……。
騎士でナイト? 夜って意味なのか?
「……もしかしてギャグで言ってる?」
「なんだと、どういう意味だ」
「いやだって……」
「ゆ、勇者様……ふっ、だ、ダメですよ……そういうのは……」
俺の後ろで笑うのをこらえているセレーネ。
「漆黒の騎士が称号でヘルナイトが名前ってこと?」
「な! こ、この名は魔王様より賜った名だぞ! それを愚弄するか!」
少しだけ動揺している様子の漆黒の騎士なヘルナイトさん。
どうやら意味は分かっているらしい。
しかし魔王様のネームセンスはかなりアレだな。中二病でも煩ってんのか?
「済まない。そういうつもりは無かったんだが……ぶふっ!」
「な! き、き、き、貴様ァ!!」
「でも本当は分かっているんじゃないのか?」
「なんだと! そ、それはその……魔王様より賜った大事な名前ではあるが……確かに少し、少しだぞ。ほんの少しだ! ほんの少しだが、な、名乗りづらい……」
ですよねー……。
どうやらヘルナイトさんの方は意味が分かっているらしい。
マズかったかな。そこはスルーしておけば良かった。
「ふ、ふふっ……ふふふ……」
後ろのセレーネは妙なツボに入ったらしく、今だ必死で笑いを堪えていた。
「だったら魔王軍のヘルナイトって名乗ったらいいんじゃないのか」
「なん……だと?」
凄まれてしまう。見た目が見た目なのでかなり怖い。
「……ふむ……我が名は魔王軍のヘルナイト……」
ヘルナイトさんは腕を組んでぶつぶつと呟き始めた。
「貴様!」
「はいっ!?」
「天才か! その案、使わせてもらおう」
「あ、はい……」
この程度で天才になれたら苦労せんわ。
もしかして魔王軍てメチャクチャ脳筋共の集まりだったりするのか?
こんな連中に苦労している人間側ももしかして……。
「もらったぁ!!」
などと考えていたら、いきなりヘルナイトの背後から斬り掛かってくる1人の剣士。
手に持った剣はオーラの如く淡く輝いていて、あり得ないほど高いジャンプをしてデカい騎士の頭の上に向かって斬り掛かる。
「バカがっ!」
だが、それを分かっていたのかヘルナイトは瞬時に巨大な剣を振り回して迎え撃つ。
ザシュッ!
飛び込んできた剣士は文字通り、跳んでいたため避けることも出来ず肩口からお腹に向けて巨大な剣でざっくりと斬られた。
「ぐはっ!!」
うわっ……痛そう。
その剣士はべだんと音を立てて地面にカエルのような形になってうつ伏せに落ちた。
「不意打ちを卑怯とは言わないが、声を出すのはどういった戦法なのだ?」
確かに……、不意打ちなのに大声を出して突っ込んでくればこうなるわな。
しかも明らかにヘルナイトの武器の方がリーチがあるので下手に飛び込んだらそうなるだろ……。
全身鎧の巨漢がその体躯に見合った剣を構えてこっちに向かってくる。
よかったぁ……二話があったよ……マジで終わるかと思った。
「ならばこっちも……早速これを使うことになるとはな」
そう今の俺には秘密兵器があるのだよ。
それは女神からもらった一振りの短剣である。
「見た目はただの短剣だが、なんと……」
「なに!?」
俺の言葉に驚く全身鎧。意外と付き合いが良いらしい。
「なんと……なんと、あ、あれ?」
ズボンのベルトに差してあったはずなんだけど……。って、まじ?
「嘘だろ!?」
下げていたはずの場所に鞘ごと無くなっていた。
「……何処かに落としたのか」
慌てて周囲を見渡すがそれらしいものは見当たらない。
「覚悟はいいか?」
「え……ちょ、うそ……、いやあそれ結構大きいですね」
探している間に全身鎧が目の前にまで来ていた。
思った以上に大きく、そして持っている剣はあり得ないほどデカかった。
「え、遠近法……」
身長は軽く2mを超えていて、剣も軽く俺の身長よりも大きい。
「ちょ、ちょっと待った! しばらく、しばらくだけウェイト!!」
「ん、なんだ!?」
俺のリアクションに驚いたのか全身鎧は後ろに少し下がった。
「“サーチ”半径1kmの範囲で俺の武器!」
【見つかりません】
……ウソだろ、反応がない。
それはつまるところ上空から落ちている最中に落としたってこと……なのか?
勘弁してくれっ!!
一応ポータルに行けば自動的に戻ってくるって聞いたけど……。
「この辺りにポータルなんてないよね」
「残念ですが、かなり遠いです」
顔を横に振りながらセレーネが答えてくれた。
ですよねー!
つまり俺は今、こんな巨体を相手に丸腰になったってことか。
はははっ、地上に復帰第一弾にしてはなかなか楽しい状況だな。
全然楽しくなんかねーよ!! どーすんだよこの状況! 思いっきり挑発しちゃったじゃねーか!
「そろそろ武器を持て、武器無き者を斬ったとあっては魔王様の名が汚れてしまう」
俺に焦れたのか鎧さんは武器を構え直して剣先を俺の目線に向ける。
するとカブトの奥の目なのだろうか。不気味に輝きだした。
ど、どうする。この鎧を何とかしないと……そ、そうだ。
「せめて名を名乗らないのか」
「むっ……確かに不作法であったな」
相手は一度剣先を下に向けて名乗り始めた。
「我が名は、魔王軍漆黒の騎士ヘルナイト!」
え……。
騎士でナイト? 夜って意味なのか?
「……もしかしてギャグで言ってる?」
「なんだと、どういう意味だ」
「いやだって……」
「ゆ、勇者様……ふっ、だ、ダメですよ……そういうのは……」
俺の後ろで笑うのをこらえているセレーネ。
「漆黒の騎士が称号でヘルナイトが名前ってこと?」
「な! こ、この名は魔王様より賜った名だぞ! それを愚弄するか!」
少しだけ動揺している様子の漆黒の騎士なヘルナイトさん。
どうやら意味は分かっているらしい。
しかし魔王様のネームセンスはかなりアレだな。中二病でも煩ってんのか?
「済まない。そういうつもりは無かったんだが……ぶふっ!」
「な! き、き、き、貴様ァ!!」
「でも本当は分かっているんじゃないのか?」
「なんだと! そ、それはその……魔王様より賜った大事な名前ではあるが……確かに少し、少しだぞ。ほんの少しだ! ほんの少しだが、な、名乗りづらい……」
ですよねー……。
どうやらヘルナイトさんの方は意味が分かっているらしい。
マズかったかな。そこはスルーしておけば良かった。
「ふ、ふふっ……ふふふ……」
後ろのセレーネは妙なツボに入ったらしく、今だ必死で笑いを堪えていた。
「だったら魔王軍のヘルナイトって名乗ったらいいんじゃないのか」
「なん……だと?」
凄まれてしまう。見た目が見た目なのでかなり怖い。
「……ふむ……我が名は魔王軍のヘルナイト……」
ヘルナイトさんは腕を組んでぶつぶつと呟き始めた。
「貴様!」
「はいっ!?」
「天才か! その案、使わせてもらおう」
「あ、はい……」
この程度で天才になれたら苦労せんわ。
もしかして魔王軍てメチャクチャ脳筋共の集まりだったりするのか?
こんな連中に苦労している人間側ももしかして……。
「もらったぁ!!」
などと考えていたら、いきなりヘルナイトの背後から斬り掛かってくる1人の剣士。
手に持った剣はオーラの如く淡く輝いていて、あり得ないほど高いジャンプをしてデカい騎士の頭の上に向かって斬り掛かる。
「バカがっ!」
だが、それを分かっていたのかヘルナイトは瞬時に巨大な剣を振り回して迎え撃つ。
ザシュッ!
飛び込んできた剣士は文字通り、跳んでいたため避けることも出来ず肩口からお腹に向けて巨大な剣でざっくりと斬られた。
「ぐはっ!!」
うわっ……痛そう。
その剣士はべだんと音を立てて地面にカエルのような形になってうつ伏せに落ちた。
「不意打ちを卑怯とは言わないが、声を出すのはどういった戦法なのだ?」
確かに……、不意打ちなのに大声を出して突っ込んでくればこうなるわな。
しかも明らかにヘルナイトの武器の方がリーチがあるので下手に飛び込んだらそうなるだろ……。
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