15 / 388
第一話
今夜はパーティダァ! ひゃっはー!
しおりを挟む
「はぁはぁ……さすが……、10代の身体……すげえな。これだけダッシュ出来るなんて……」
しばらくの間砦の周りを走り回っていた。
このくらいの年代のときは、ちょっと休めばいくら走り回れたよな。
とはいえ、さすがに走り疲れてきたところ、ちょうど修復用の木材が重なって置いてあったので、そこに隠れていた。
「とはいえ、さすがに心臓が限界だ……」
元々の肉体だったら全力疾走しようものなら50mも無理だったんじゃないかな。
大分離れたが、そーっと顔を出して砦の様子を見てみる。
「ぎゃーまじか!? なんて冷てーんだよ! まだ俺が外に居るじゃないか!」
砦の門が閉じられていた。松明が掲げられているのでよく見える。
「確かに閉めることが正しいとは思うけどさ……」
おそらくゾンビ達は近くで徘徊しているだろう。
「はぁ……、いくら何でもあんな数で来られたら対応なんて出来るわけがないだろ……どーすんだよ」
なんとか呼吸を整えつつ顔を出してみると、予想通り奴らは周囲をウロウロと徘徊している。どうやら俺を見失ったらしい。
「良かった……」
ゾンビは目はうっすらとしか見えていないし、耳も聞こえないって話だからこうやって隠れて黙っていれば見失うんだろう。
これで少しは時間稼ぎ出来るかな。
「ふう……」
『壁ドーン!』
「ひゃあぁぁ?!」
いつの間にか逆側からゾンビ達に囲まれていた。
その中の一体に、俺は今壁ドンをされてたのだった。
『オイおい、ドウイウつもりだ。思ワセブリだけさせて終ワラセようッテ言ウノカヨ』
声じゃない声が聞こえる。
それにしても生涯初の壁ドンをされてしまった。
よりにも寄って、アンデッド、それもゾンビに、確かに濡れてしまいそうだ。まあ主におしっこの方で……こんなん漏らすわ! 一応なんとか出さずに我慢出来たけど、人生最悪の経験として憶えそうだ。
「じゃ、じゃんけんぽん!」
苦し紛れに思わず口走ってしまった。
だがゾンビ達は素直にじゃんけんの手を出してきた。
当然バラバラだが気にしない。
「あっち向いてホイ!」
『…………、いやニーチャンよ。オレ等はよく見エテないから』
「なんだとぉ!!」
何処かのマンガで見た結構良いネタだと思って使ったのに、全然効果無しだった。
ゾンビはうっすらとしか見えていなかったんだぁ!
『オイオイ、ニーチャンどうしてくれるんだよ』
「わ、分かった……話を聞く。とりあえず一人ずつで良いだろ、俺は一人しか居ないんだ」
『ヲ、じゃあ、俺カラデいいか?』
『フザケンナ!』
『俺カラだ!』
『イイヤ俺からだっ!』
「分かったからケンカすんな。全員ちゃんと聞いてやるから、もし揉めるのなら止めるからな!」
その一言にゾンビ達は黙って従ったのだった。
い、意外と素直なんだな。
「はぁ……」
このままでは暗すぎるので1度砦の近くまで戻り、適当な丸太が転がっていたのでそこに座るとゾンビ達は俺を取り囲むように地面に直座りし始める。
腐敗した死体に囲まれるこの情景。
ある意味地獄よりも酷い光景じゃないだろうか。
ゾンビ同士は何やら会話が出来るようで、俺が呼ばなくても続々とここに集まってきた。
おそらく周囲のゾンビ達は全て来たんじゃないだろうか。
「勇者様、大丈夫ですか」
そうやって待っている間にセレーネがやってきた。
「俺の方はとりあえず大丈夫。それよりあの老人達の方は?」
「はいっ、全員砦の中に収容しました」
「それならよかった。セレーネも此奴がいつ暴れ出すか分からないから砦の方に戻って」
「いいえ、これでも聖職者ですから遠くから見ているだけだなんて出来ません」
「そうなの? でも危なくなったらすぐに逃げるんだぞ」
「それは勇者様にも同じことを言いたいです。武器の一つも持たずに砦から飛び出すなんて無茶をして」
「それを言ったら、そもそもセレーネがいきなり飛び出すからこうなったんじゃないか」
「そ、それはそうですけど……で、ですが……ホーリーライトを使えばアンデッドが嫌うので寄ってこないのです」
「まじ!? そ、そうなんだ……そんな便利のなのがあったのか」
「はい。でも気休め程度ですけど……」
俺は彼女に軽くデコピンをする。
「あいたっ……」
「気休め程度の魔法なんかで無茶をしやがって。君はそうやってなんでもいつも一人で背負い込んでんだろ」
「そ、その様なことは……な、ないと思いますけど……」
セレーネはおでこをさすりながらしょんぼりしてしまう。
「全くもう、何かをするにしてもせめて相談しなさい。下手をしたらあの3バカみたいにただの迷惑になるだけなんだから」
「あう……も、申し訳ありません」
「頼むよ。聖女だからって気負うのは分かるけど、それでも君はか弱い一人の女の子なんだからさ」
「お、女の子? わたくしをその様に心配していただけるのですか……」
「どこをどう見ても女の子だろ」
「は、はいっ……怒られちゃいました」
「怒っちゃいないけど……いや少しは怒ってるけど」
「……えへ」
何故か怒られたのに、嬉しそうなセレーネだった。
『おい、なんか乳繰り合っているみたいだが早くしろ!』
『そーだそーだ!』
いつの間にかゾンビ達の声がはっきりと聞こえるようになっていた。
「いやお前ら、彼女の声が聞こえるのかよ」
『聞こえなくても、あんたの声が甘酸っぱいものだって分かるわ!』
「な!? はぁ……へいへい。じゃあ一人ずつ話を聞こうか」
しばらくの間砦の周りを走り回っていた。
このくらいの年代のときは、ちょっと休めばいくら走り回れたよな。
とはいえ、さすがに走り疲れてきたところ、ちょうど修復用の木材が重なって置いてあったので、そこに隠れていた。
「とはいえ、さすがに心臓が限界だ……」
元々の肉体だったら全力疾走しようものなら50mも無理だったんじゃないかな。
大分離れたが、そーっと顔を出して砦の様子を見てみる。
「ぎゃーまじか!? なんて冷てーんだよ! まだ俺が外に居るじゃないか!」
砦の門が閉じられていた。松明が掲げられているのでよく見える。
「確かに閉めることが正しいとは思うけどさ……」
おそらくゾンビ達は近くで徘徊しているだろう。
「はぁ……、いくら何でもあんな数で来られたら対応なんて出来るわけがないだろ……どーすんだよ」
なんとか呼吸を整えつつ顔を出してみると、予想通り奴らは周囲をウロウロと徘徊している。どうやら俺を見失ったらしい。
「良かった……」
ゾンビは目はうっすらとしか見えていないし、耳も聞こえないって話だからこうやって隠れて黙っていれば見失うんだろう。
これで少しは時間稼ぎ出来るかな。
「ふう……」
『壁ドーン!』
「ひゃあぁぁ?!」
いつの間にか逆側からゾンビ達に囲まれていた。
その中の一体に、俺は今壁ドンをされてたのだった。
『オイおい、ドウイウつもりだ。思ワセブリだけさせて終ワラセようッテ言ウノカヨ』
声じゃない声が聞こえる。
それにしても生涯初の壁ドンをされてしまった。
よりにも寄って、アンデッド、それもゾンビに、確かに濡れてしまいそうだ。まあ主におしっこの方で……こんなん漏らすわ! 一応なんとか出さずに我慢出来たけど、人生最悪の経験として憶えそうだ。
「じゃ、じゃんけんぽん!」
苦し紛れに思わず口走ってしまった。
だがゾンビ達は素直にじゃんけんの手を出してきた。
当然バラバラだが気にしない。
「あっち向いてホイ!」
『…………、いやニーチャンよ。オレ等はよく見エテないから』
「なんだとぉ!!」
何処かのマンガで見た結構良いネタだと思って使ったのに、全然効果無しだった。
ゾンビはうっすらとしか見えていなかったんだぁ!
『オイオイ、ニーチャンどうしてくれるんだよ』
「わ、分かった……話を聞く。とりあえず一人ずつで良いだろ、俺は一人しか居ないんだ」
『ヲ、じゃあ、俺カラデいいか?』
『フザケンナ!』
『俺カラだ!』
『イイヤ俺からだっ!』
「分かったからケンカすんな。全員ちゃんと聞いてやるから、もし揉めるのなら止めるからな!」
その一言にゾンビ達は黙って従ったのだった。
い、意外と素直なんだな。
「はぁ……」
このままでは暗すぎるので1度砦の近くまで戻り、適当な丸太が転がっていたのでそこに座るとゾンビ達は俺を取り囲むように地面に直座りし始める。
腐敗した死体に囲まれるこの情景。
ある意味地獄よりも酷い光景じゃないだろうか。
ゾンビ同士は何やら会話が出来るようで、俺が呼ばなくても続々とここに集まってきた。
おそらく周囲のゾンビ達は全て来たんじゃないだろうか。
「勇者様、大丈夫ですか」
そうやって待っている間にセレーネがやってきた。
「俺の方はとりあえず大丈夫。それよりあの老人達の方は?」
「はいっ、全員砦の中に収容しました」
「それならよかった。セレーネも此奴がいつ暴れ出すか分からないから砦の方に戻って」
「いいえ、これでも聖職者ですから遠くから見ているだけだなんて出来ません」
「そうなの? でも危なくなったらすぐに逃げるんだぞ」
「それは勇者様にも同じことを言いたいです。武器の一つも持たずに砦から飛び出すなんて無茶をして」
「それを言ったら、そもそもセレーネがいきなり飛び出すからこうなったんじゃないか」
「そ、それはそうですけど……で、ですが……ホーリーライトを使えばアンデッドが嫌うので寄ってこないのです」
「まじ!? そ、そうなんだ……そんな便利のなのがあったのか」
「はい。でも気休め程度ですけど……」
俺は彼女に軽くデコピンをする。
「あいたっ……」
「気休め程度の魔法なんかで無茶をしやがって。君はそうやってなんでもいつも一人で背負い込んでんだろ」
「そ、その様なことは……な、ないと思いますけど……」
セレーネはおでこをさすりながらしょんぼりしてしまう。
「全くもう、何かをするにしてもせめて相談しなさい。下手をしたらあの3バカみたいにただの迷惑になるだけなんだから」
「あう……も、申し訳ありません」
「頼むよ。聖女だからって気負うのは分かるけど、それでも君はか弱い一人の女の子なんだからさ」
「お、女の子? わたくしをその様に心配していただけるのですか……」
「どこをどう見ても女の子だろ」
「は、はいっ……怒られちゃいました」
「怒っちゃいないけど……いや少しは怒ってるけど」
「……えへ」
何故か怒られたのに、嬉しそうなセレーネだった。
『おい、なんか乳繰り合っているみたいだが早くしろ!』
『そーだそーだ!』
いつの間にかゾンビ達の声がはっきりと聞こえるようになっていた。
「いやお前ら、彼女の声が聞こえるのかよ」
『聞こえなくても、あんたの声が甘酸っぱいものだって分かるわ!』
「な!? はぁ……へいへい。じゃあ一人ずつ話を聞こうか」
0
お気に入りに追加
103
あなたにおすすめの小説
にいにと一緒に世界をめぐる~奉納スキルでアイテムゲット☆彡~
霧ちゃん→霧聖羅
ファンタジー
村が疫病に侵された。
大人たちは一人また一人と倒れていった。
わたしが『魔神様』から、にぃにが『武神様』から『ご寵愛』を賜ったのが二人だけ助かった理由。
ご寵愛と一緒に賜ったスキルは色々あったんだけど、わたしね、『奉納』スキルが一番ズルっ子だと思います。
※一章が終わるまでは12時&20時の2回更新。
ソレ以降はストックが切れるまで、毎日12時に更新します。
※表紙画像は、『こんぺいとう**メーカー』さんを使わせていただきました。
~前世の知識を持つ少女、サーラの料理譚~
あおいろ
ファンタジー
その少女の名前はサーラ。前世の記憶を持っている。
今から百年近くも昔の事だ。家族の様に親しい使用人達や子供達との、楽しい日々と美味しい料理の思い出だった。
月日は遥か遠く流れて過ぎさり、ー
現代も果てない困難が待ち受けるものの、ー
彼らの思い出の続きは、人知れずに紡がれていく。
聖女なので公爵子息と結婚しました。でも彼には好きな人がいるそうです。
MIRICO
恋愛
癒しの力を持つ聖女、エヴリーヌ。彼女は聖女の嫁ぎ制度により、公爵子息であるカリス・ヴォルテールに嫁ぐことになった。しかしカリスは、ブラシェーロ公爵子息に嫁ぐ聖女、アティを愛していたのだ。
カリスはエヴリーヌに二年後の離婚を願う。王の命令で結婚することになったが、愛する人がいるためエヴリーヌを幸せにできないからだ。
勝手に決められた結婚なのに、二年で離婚!?
アティを愛していても、他の公爵子息の妻となったアティと結婚するわけにもいかない。離婚した後は独身のまま、後継者も親戚の子に渡すことを辞さない。そんなカリスの切実な純情の前に、エヴリーヌは二年後の離婚を承諾した。
なんてやつ。そうは思ったけれど、カリスは心優しく、二年後の離婚が決まってもエヴリーヌを蔑ろにしない、誠実な男だった。
やめて、優しくしないで。私が好きになっちゃうから!!
ブックマーク・いいね・ご感想等、ありがとうございます。誤字もお知らせくださりありがとうございます。修正します。ご感想お返事ネタバレになりそうなので控えさせていただきます。
続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜
ぽん
ファンタジー
⭐︎書籍化決定⭐︎
『拾ってたものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』
第2巻:2024年5月20日(月)に各書店に発送されます。
書籍化される[106話]まで引き下げレンタル版と差し替えさせて頂きます。
第1巻:2023年12月〜
改稿を入れて読みやすくなっております。
是非♪
==================
1人ぼっちだった相沢庵は小さな子狼に気に入られ、共に異世界に送られた。
絶対神リュオンが求めたのは2人で自由に生きる事。
前作でダークエルフの脅威に触れた世界は各地で起こっている不可解な事に憂慮し始めた。
そんな中、異世界にて様々な出会いをし家族を得たイオリはリュオンの願い通り自由に生きていく。
まだ、読んでらっしゃらない方は先に『拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』をご覧下さい。
前作に続き、のんびりと投稿してまいります。
気長なお付き合いを願います。
よろしくお願いします。
※念の為R15にしています。
※誤字脱字が存在する可能性か高いです。
苦笑いで許して下さい。
悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く
ひよこ1号
ファンタジー
過労で倒れて公爵令嬢に転生したものの…
乙女ゲーの悪役令嬢が活躍する原作小説に転生していた。
乙女ゲーの知識?小説の中にある位しか無い!
原作小説?1巻しか読んでない!
暮らしてみたら全然違うし、前世の知識はあてにならない。
だったら我が道を行くしかないじゃない?
両親と5人のイケメン兄達に溺愛される幼女のほのぼの~殺伐ストーリーです。
本人無自覚人誑しですが、至って平凡に真面目に生きていく…予定。
※アルファポリス様で書籍化進行中(第16回ファンタジー小説大賞で、癒し系ほっこり賞受賞しました)
※残虐シーンは控えめの描写です
※カクヨム、小説家になろうでも公開中です
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
美少女だらけの姫騎士学園に、俺だけ男。~神騎士LV99から始める強くてニューゲーム~
マナシロカナタ✨ラノベ作家✨子犬を助けた
ファンタジー
異世界💞推し活💞ファンタジー、開幕!
人気ソーシャルゲーム『ゴッド・オブ・ブレイビア』。
古参プレイヤー・加賀谷裕太(かがや・ゆうた)は、学校の階段を踏み外したと思ったら、なぜか大浴場にドボンし、ゲームに出てくるツンデレ美少女アリエッタ(俺の推し)の胸を鷲掴みしていた。
ふにょんっ♪
「ひあんっ!」
ふにょん♪ ふにょふにょん♪
「あんっ、んっ、ひゃん! って、いつまで胸を揉んでるのよこの変態!」
「ご、ごめん!」
「このっ、男子禁制の大浴場に忍び込むだけでなく、この私のむ、む、胸を! 胸を揉むだなんて!」
「ちょっと待って、俺も何が何だか分からなくて――」
「問答無用! もはやその行い、許し難し! かくなる上は、あなたに決闘を申し込むわ!」
ビシィッ!
どうやら俺はゲームの中に入り込んでしまったようで、ラッキースケベのせいでアリエッタと決闘することになってしまったのだが。
なんと俺は最高位職のLv99神騎士だったのだ!
この世界で俺は最強だ。
現実世界には未練もないし、俺はこの世界で推しの子アリエッタにリアル推し活をする!
司書ですが、何か?
みつまめ つぼみ
ファンタジー
16歳の小さな司書ヴィルマが、王侯貴族が通う王立魔導学院付属図書館で仲間と一緒に仕事を頑張るお話です。
ほのぼの日常系と思わせつつ、ちょこちょこドラマティックなことも起こります。ロマンスはふんわり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる