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第10章 結婚式
ルーママの祝い
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ゲートをくぐった先には沢山の笑顔。
耳が割れそうな程の拍手で俺たちは迎えられた。
おめでとう、の合間に「美しい!」だの「なんと素晴らしい!」だの聞こえるが、俺が美形なのは今更の話だろ?
「あれ、あの冷血公⁈嘘だろ!」の声にはニヤリと笑みを向けておいた。どうだ、俺のフィオは!可愛いだろうがよ!
「遅いぞゲイル!」
クリスが放り投げて来たのをバシッと受け取る。
「?ブーケ?」
「俺からの祝いだ」
白と黄緑のグラデーションが美しい、カラーの花束。
スッキリと纏められており、俺好みだ。
「ゴリラのくせになかなか趣味がいいじゃねえか。
ありがとよ!」
礼を言えば、クリスの横のちびっ子が吠えた。
「おい、クソ嫁!口が悪いぞ!素直に喜べよ!」
「ははは!俺たちはこれでいいんだよ!」
「確かに。素直なゲイルなんぞ鳥肌もんだ」
皆の声援や野次を受けながら正面のステージへ。
本来なら神父の前で愛を誓うのだが、ここには神の使徒である聖獣ルーがいる。
神父より聖獣の方が格上だってんで、神父が遠慮し、ルーに誓うことになった。
ルーがデカいバージョンでものものしく口を開く。
「ゲルリアスとフィオネルは、天の定めた運命の番。しかしながらこの2人は我が何をせずとも、自ら出会いを掴み取り運命をつむいだ」
俺たちを見つめ、その真を問う。
「ゲルリアス、フィオネルを夫とし共に生きることを誓うか?」
「勿論。永遠の愛を誓おう」
「フィオネル、ゲルリアスを夫とし共に生きることを誓うか?」
「はい。未来永劫の愛をゲイルに」
うむ、とルーは満足そうにうなづいた。
「では誓いの口付けを交わすが良い」
フィオがそっと俺のベールをあげる。
目と目を見交わせ、ほう、と息を漏らした。
「とても…とても綺麗です、ゲイル。ああ、ようやくあなたを手に入れた。今すぐ連れ帰りたい」
言うや否や激しく唇を奪われた。
お、おい!こんなとこで舌を入れるな!こら!
あちこちから「やっちまえー!」だの「お熱いねえ!」だのはヒューヒューと唇を鳴らす音まで聞こえる。
フィオ、人前だぞ!いつまでやってんだ、おい!
足が立たなくなる寸前でようやくフィオが離れた。
「ふふ。うっとりした顔。かわいい…」
愛おしげに頬を撫でられ、慌ててあげられていたベールを下げる。きっと今の俺の顔は真っ赤になっているだろうから。
ベール越しにニヤニヤする冒険者どもが見えた。
お前ら後で覚えてろよ!
「これにて2人の婚姻はなされた。この婚姻は世に平和と安寧をもたらすだろう。
2人の未来に祝福を授けよう」
ルーの声が終わったとたん、空に虹がかかり、空から俺たちに向かって花びらが降り注いだ。
まるで雪のように後から後から途切れることなく、真っ白な花弁が降り注ぐ。
思わず手を伸ばせば、それは触れた先からキラキラと光ってパチンと消えた。
消えることなく降ちた花弁は、地に着いたとたん小さな白い花に変わり、あっという間にあたりは一面真っ白に。まるで雲の上にいるみたいだ。
途方もなく幻想的なく光景に、皆心を奪われ子供のように花弁を追う。
「ルーのママの祝い?」
パチパチ弾けて光る花弁を楽しみながら問えば
「そうだよー。これ、小さな祝福が付与されてるから。みんなちょっとラッキーになるんだよー!」
いつもの省エネモードに戻ったルーが呑気に笑う。
いや、さらりと凄いこと言ったな⁈
「もしかして…ルーのママって、フェンリルじゃなきて神⁈参列者全員に小さな祝福が付与されたって認識であってるのか?」
「うん。そうだよー。ここにいるのはゲイルの大事な仲間でしょ?ママがみんなに『聖女をよろしく頼む』ってさ!ゲイルにも『魔王を因果から解き放ってくれて感謝する』って!」
うーん。マジかー!
神の祝福……こりゃ知られたらヤベエな。
まあ「小さな」がついてるから、そこまで大事にはならねえだろ!
それにこのルーママの祝いのおかげで、みんなフィオの熱烈な「誓いの口付け」を忘れてくれたから二重の意味でありがたい。
驚いた衝撃で顔が赤いのも落ち着いたしな。
精霊も出てきて花びらを追いかけ飛び回っている。
みんなには見えないだろう、と思ったら兄貴とエリアナとエリアスがガン見していた。
ありゃあ見えてる。
一斉に俺を見て眉をぐわりと上げて見せるのに、肩をすくめ手を合わせて「すまん」と口パク。
あの様子では精霊はここを新しい棲家と決めたようだ。
何しろ、元々聖獣の守護のおかげか清廉な場所だったサフィール邸。今日の祝福のおかげで、文字通りの「聖場」になっちまったから、精霊にとっては最高の環境なんだろう。
この庭は文字通り「神に祝福された場所」ってわけだ。
一応結婚式だってえのに、キスの後からみんな祝福に度肝抜かれてあちこちをフラフラ彷徨っている。
おい、クリスと冒険者ども!お前ら花びらを追いかけるようなキャラじゃねえだろうが!
もうなあ!楽しんでくれて何よりだ!
「よーし!みんな聞いてくれ!」
パンパンと手を叩いて注目を集める。
「これで俺とフィオは正式な夫夫となった!俺は今日からゲルリアス・G・グランディールだ。よろしくたのむ!」
「私はゲイルのもの、ゲイルは私のものですので!よろしくお願いしますね?」
どこ見て言ってんだ、と思ったら、セルゲイだった。
誤解してきた詫びも含め、式に招待したんだ。
セルゲイは苦笑してうなずく。
あの思い詰めたような色は鳴りを顰めいい顔になった。
エリアナと話がはずんでいたようだし、もうこいつは大丈夫だろう。
ちなみに、セルゲイは名産のワインを10樽も寄越してきた。空にする勢いで既に冒険者が群がっている。
耳が割れそうな程の拍手で俺たちは迎えられた。
おめでとう、の合間に「美しい!」だの「なんと素晴らしい!」だの聞こえるが、俺が美形なのは今更の話だろ?
「あれ、あの冷血公⁈嘘だろ!」の声にはニヤリと笑みを向けておいた。どうだ、俺のフィオは!可愛いだろうがよ!
「遅いぞゲイル!」
クリスが放り投げて来たのをバシッと受け取る。
「?ブーケ?」
「俺からの祝いだ」
白と黄緑のグラデーションが美しい、カラーの花束。
スッキリと纏められており、俺好みだ。
「ゴリラのくせになかなか趣味がいいじゃねえか。
ありがとよ!」
礼を言えば、クリスの横のちびっ子が吠えた。
「おい、クソ嫁!口が悪いぞ!素直に喜べよ!」
「ははは!俺たちはこれでいいんだよ!」
「確かに。素直なゲイルなんぞ鳥肌もんだ」
皆の声援や野次を受けながら正面のステージへ。
本来なら神父の前で愛を誓うのだが、ここには神の使徒である聖獣ルーがいる。
神父より聖獣の方が格上だってんで、神父が遠慮し、ルーに誓うことになった。
ルーがデカいバージョンでものものしく口を開く。
「ゲルリアスとフィオネルは、天の定めた運命の番。しかしながらこの2人は我が何をせずとも、自ら出会いを掴み取り運命をつむいだ」
俺たちを見つめ、その真を問う。
「ゲルリアス、フィオネルを夫とし共に生きることを誓うか?」
「勿論。永遠の愛を誓おう」
「フィオネル、ゲルリアスを夫とし共に生きることを誓うか?」
「はい。未来永劫の愛をゲイルに」
うむ、とルーは満足そうにうなづいた。
「では誓いの口付けを交わすが良い」
フィオがそっと俺のベールをあげる。
目と目を見交わせ、ほう、と息を漏らした。
「とても…とても綺麗です、ゲイル。ああ、ようやくあなたを手に入れた。今すぐ連れ帰りたい」
言うや否や激しく唇を奪われた。
お、おい!こんなとこで舌を入れるな!こら!
あちこちから「やっちまえー!」だの「お熱いねえ!」だのはヒューヒューと唇を鳴らす音まで聞こえる。
フィオ、人前だぞ!いつまでやってんだ、おい!
足が立たなくなる寸前でようやくフィオが離れた。
「ふふ。うっとりした顔。かわいい…」
愛おしげに頬を撫でられ、慌ててあげられていたベールを下げる。きっと今の俺の顔は真っ赤になっているだろうから。
ベール越しにニヤニヤする冒険者どもが見えた。
お前ら後で覚えてろよ!
「これにて2人の婚姻はなされた。この婚姻は世に平和と安寧をもたらすだろう。
2人の未来に祝福を授けよう」
ルーの声が終わったとたん、空に虹がかかり、空から俺たちに向かって花びらが降り注いだ。
まるで雪のように後から後から途切れることなく、真っ白な花弁が降り注ぐ。
思わず手を伸ばせば、それは触れた先からキラキラと光ってパチンと消えた。
消えることなく降ちた花弁は、地に着いたとたん小さな白い花に変わり、あっという間にあたりは一面真っ白に。まるで雲の上にいるみたいだ。
途方もなく幻想的なく光景に、皆心を奪われ子供のように花弁を追う。
「ルーのママの祝い?」
パチパチ弾けて光る花弁を楽しみながら問えば
「そうだよー。これ、小さな祝福が付与されてるから。みんなちょっとラッキーになるんだよー!」
いつもの省エネモードに戻ったルーが呑気に笑う。
いや、さらりと凄いこと言ったな⁈
「もしかして…ルーのママって、フェンリルじゃなきて神⁈参列者全員に小さな祝福が付与されたって認識であってるのか?」
「うん。そうだよー。ここにいるのはゲイルの大事な仲間でしょ?ママがみんなに『聖女をよろしく頼む』ってさ!ゲイルにも『魔王を因果から解き放ってくれて感謝する』って!」
うーん。マジかー!
神の祝福……こりゃ知られたらヤベエな。
まあ「小さな」がついてるから、そこまで大事にはならねえだろ!
それにこのルーママの祝いのおかげで、みんなフィオの熱烈な「誓いの口付け」を忘れてくれたから二重の意味でありがたい。
驚いた衝撃で顔が赤いのも落ち着いたしな。
精霊も出てきて花びらを追いかけ飛び回っている。
みんなには見えないだろう、と思ったら兄貴とエリアナとエリアスがガン見していた。
ありゃあ見えてる。
一斉に俺を見て眉をぐわりと上げて見せるのに、肩をすくめ手を合わせて「すまん」と口パク。
あの様子では精霊はここを新しい棲家と決めたようだ。
何しろ、元々聖獣の守護のおかげか清廉な場所だったサフィール邸。今日の祝福のおかげで、文字通りの「聖場」になっちまったから、精霊にとっては最高の環境なんだろう。
この庭は文字通り「神に祝福された場所」ってわけだ。
一応結婚式だってえのに、キスの後からみんな祝福に度肝抜かれてあちこちをフラフラ彷徨っている。
おい、クリスと冒険者ども!お前ら花びらを追いかけるようなキャラじゃねえだろうが!
もうなあ!楽しんでくれて何よりだ!
「よーし!みんな聞いてくれ!」
パンパンと手を叩いて注目を集める。
「これで俺とフィオは正式な夫夫となった!俺は今日からゲルリアス・G・グランディールだ。よろしくたのむ!」
「私はゲイルのもの、ゲイルは私のものですので!よろしくお願いしますね?」
どこ見て言ってんだ、と思ったら、セルゲイだった。
誤解してきた詫びも含め、式に招待したんだ。
セルゲイは苦笑してうなずく。
あの思い詰めたような色は鳴りを顰めいい顔になった。
エリアナと話がはずんでいたようだし、もうこいつは大丈夫だろう。
ちなみに、セルゲイは名産のワインを10樽も寄越してきた。空にする勢いで既に冒険者が群がっている。
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