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第10章 結婚式

俺とフィオの結婚式

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さて。王城での公表から1週間。
今日は俺とフィオの結婚式である。
俺の中では、これが正式な式だ。

式はサフィール家の庭で行うことになっている。
ウチグリフィス邸フィオんとこグランディール邸でやるのが本筋なんだが、義姉さんとエリアナがタッグを組んでこう言い放ったのだ。

「何を言っているの?あなたとフィオくんの式なのよ?
うちの子の式なのだからサフィールでやります!これは決定事項です!」

兄貴も「……ということだ」というのでサフィールになった。
フィオに申し訳ないと思ったが、フィオ自身が「うちの子……」と嬉しそうにしていたからまあ良しとしよう。

料理に関してはサフィールの料理人の独断場だ。
自家製の野菜や肉のうまさには定評があるし、料理人もその素材を活かす最高の腕を持っている。
俺の結婚式となって、結婚の報告をした時にはメニューを考え始めていたそうだ。
ということで、式の料理はサフィールの料理人が腕を振るいまくった。
物凄い量を作っていたが、冒険者や下街で世話になっている連中も呼んでいるから、料理は多すぎるくらいでちょうどいいだろう。
奴らびっくりするくらい食うからな。


サフィール家はもちろん、グランディールのいつも世話になっている古参の使用人も今日は客。みんな大切な俺の家族だから。
料理人以外は仕事の手を休め安心して参列してもらえるよう、領内にある孤児院の子供たちに給金を払い臨時の給仕を頼んだ。
普段はシンプルな服を好む彼らも、今日は見たこともないくらいビシっとした衣装を身に着けそわそわと庭をうろついている。
みんな朝からいろいろなプレゼントをくれた。ひとつひとつが心のこもった素晴らしい贈り物。「フィオさまにも」「お幸せに」とペアのものが多く、フィオも涙ぐんでいた。

「……こんな気持ちのこもった贈り物を私にまで…。嬉しいです。ありがとうございます」



使用人の中には式が始まる前から泣いている者もいる。俺の乳母だ。

「私の目の黒いうちにこのような幸せがあるなんて……!」

乳母は本当に苦労して俺の世話をしてくれた。
親父たちも俺が5歳になるまでは精一杯子育てしてくれたんだが……何しろ独特な人たちだったもんで、逆に大変だったらしい。
5歳で親父たちがとっとと引退し田舎に引っ込んでからは、俺の養育は結婚し侯爵を継いだ兄夫婦が受け継いだ。
(新婚早々よくぞそんな面倒を引き受けたな、と兄貴夫婦には頭が上がる気がしない。)兄貴夫婦に主導権が移り、ようやく乳母も安心して見守れるようになったんだそうな。
そのあとは使用人として俺に仕えてくれていたが、まあ俺が規格外だったもんで心配のかけどおしだ。
乳母にとっては俺はまだまだ「手のかかるお坊ちゃま」のようで、いまだにサフィールに行くたび手作りのクッキーを大量に持たされる。
俺は結婚しないものとあきらめていたようで、フィオを連れて行ったときにもそっと涙をぬぐっていた。


ちなみに、両親も田舎の別荘から戻ってきている。
だがこちらは涙もなくご機嫌な様子で会場を見回っていた。
両親的には「もう独立した立派な大人なんだから、好きに生きればいい。生きていてくれたらそれで十分!」くらいの感覚らしい。

俺が聖女だと報告し、フィオを紹介、さらにはフィオとの結婚を伝えた時も、驚きもせずただにこにこしていた。
あまりの通常仕様に、フィオのほうが心配して聞いていたくらいだ。

「あの……男同士だということはよろしいのでしょうか?」

だよなあ?普通はそう思うよな?
でも、こいつら違うんだよ。普通じゃねえの。だからこそ、こんな風に兄貴たちに報告した後になっちまったんだし。

案の定、親父はけろっとしたものだった。

「私だって、グランディールの男とそうなる可能性があったんだ。良いも悪いもないだろう。まあ、相手が相手だったから逃げ回ったんだがな。おかげでこんな素晴らしい妻を得たし、素晴らしい息子がふたりもできた。
しかしなあ、グランディールがフィオくんだって分かっていたなら、ゲイルは逃げ回る必要なかったのになあ!はっはっは!
まあなるようになったということさ!お互いに幸せならいいじゃないか。それ以外に大切なことなどないだろう?」

母ものんびりと笑っていた。

「ゲイルが選んだ相手なんだもの間違いないでしょ。
こおんなに可愛らしい息子が増えるのよ?いいに決まってるじゃないの。
フィオちゃん、私のことはお母様って呼んでね?はい、言ってごらんなさい?」

「…お、お母様?」

「なあに?」

「いや、なあに、じゃねえよ。母さんが呼べっつったんだろうが。フィオが困ってんだろ。からかうなよ」

「うふふふふ。だって可愛らしいんだもの」

フィオ、すまん。こういう人たちなんだって!




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