95 / 101
第10章 結婚式
俺とフィオの結婚式
しおりを挟む
さて。王城での公表から1週間。
今日は俺とフィオの結婚式である。
俺の中では、これが正式な式だ。
式はサフィール家の庭で行うことになっている。
ウチかフィオんとこでやるのが本筋なんだが、義姉さんとエリアナがタッグを組んでこう言い放ったのだ。
「何を言っているの?あなたとフィオくんの式なのよ?
うちの子の式なのだからサフィールでやります!これは決定事項です!」
兄貴も「……ということだ」というのでサフィールになった。
フィオに申し訳ないと思ったが、フィオ自身が「うちの子……」と嬉しそうにしていたからまあ良しとしよう。
料理に関してはサフィールの料理人の独断場だ。
自家製の野菜や肉のうまさには定評があるし、料理人もその素材を活かす最高の腕を持っている。
俺の結婚式となって、結婚の報告をした時にはメニューを考え始めていたそうだ。
ということで、式の料理はサフィールの料理人が腕を振るいまくった。
物凄い量を作っていたが、冒険者や下街で世話になっている連中も呼んでいるから、料理は多すぎるくらいでちょうどいいだろう。
奴らびっくりするくらい食うからな。
サフィール家はもちろん、グランディールのいつも世話になっている古参の使用人も今日は客。みんな大切な俺の家族だから。
料理人以外は仕事の手を休め安心して参列してもらえるよう、領内にある孤児院の子供たちに給金を払い臨時の給仕を頼んだ。
普段はシンプルな服を好む彼らも、今日は見たこともないくらいビシっとした衣装を身に着けそわそわと庭をうろついている。
みんな朝からいろいろなプレゼントをくれた。ひとつひとつが心のこもった素晴らしい贈り物。「フィオさまにも」「お幸せに」とペアのものが多く、フィオも涙ぐんでいた。
「……こんな気持ちのこもった贈り物を私にまで…。嬉しいです。ありがとうございます」
使用人の中には式が始まる前から泣いている者もいる。俺の乳母だ。
「私の目の黒いうちにこのような幸せがあるなんて……!」
乳母は本当に苦労して俺の世話をしてくれた。
親父たちも俺が5歳になるまでは精一杯子育てしてくれたんだが……何しろ独特な人たちだったもんで、逆に大変だったらしい。
5歳で親父たちがとっとと引退し田舎に引っ込んでからは、俺の養育は結婚し侯爵を継いだ兄夫婦が受け継いだ。
(新婚早々よくぞそんな面倒を引き受けたな、と兄貴夫婦には頭が上がる気がしない。)兄貴夫婦に主導権が移り、ようやく乳母も安心して見守れるようになったんだそうな。
そのあとは使用人として俺に仕えてくれていたが、まあ俺が規格外だったもんで心配のかけどおしだ。
乳母にとっては俺はまだまだ「手のかかるお坊ちゃま」のようで、いまだにサフィールに行くたび手作りのクッキーを大量に持たされる。
俺は結婚しないものとあきらめていたようで、フィオを連れて行ったときにもそっと涙をぬぐっていた。
ちなみに、両親も田舎の別荘から戻ってきている。
だがこちらは涙もなくご機嫌な様子で会場を見回っていた。
両親的には「もう独立した立派な大人なんだから、好きに生きればいい。生きていてくれたらそれで十分!」くらいの感覚らしい。
俺が聖女だと報告し、フィオを紹介、さらにはフィオとの結婚を伝えた時も、驚きもせずただにこにこしていた。
あまりの通常仕様に、フィオのほうが心配して聞いていたくらいだ。
「あの……男同士だということはよろしいのでしょうか?」
だよなあ?普通はそう思うよな?
でも、こいつら違うんだよ。普通じゃねえの。だからこそ、こんな風に兄貴たちに報告した後になっちまったんだし。
案の定、親父はけろっとしたものだった。
「私だって、グランディールの男とそうなる可能性があったんだ。良いも悪いもないだろう。まあ、相手が相手だったから逃げ回ったんだがな。おかげでこんな素晴らしい妻を得たし、素晴らしい息子がふたりもできた。
しかしなあ、グランディールがフィオくんだって分かっていたなら、ゲイルは逃げ回る必要なかったのになあ!はっはっは!
まあなるようになったということさ!お互いに幸せならいいじゃないか。それ以外に大切なことなどないだろう?」
母ものんびりと笑っていた。
「ゲイルが選んだ相手なんだもの間違いないでしょ。
こおんなに可愛らしい息子が増えるのよ?いいに決まってるじゃないの。
フィオちゃん、私のことはお母様って呼んでね?はい、言ってごらんなさい?」
「…お、お母様?」
「なあに?」
「いや、なあに、じゃねえよ。母さんが呼べっつったんだろうが。フィオが困ってんだろ。からかうなよ」
「うふふふふ。だって可愛らしいんだもの」
フィオ、すまん。こういう人たちなんだって!
今日は俺とフィオの結婚式である。
俺の中では、これが正式な式だ。
式はサフィール家の庭で行うことになっている。
ウチかフィオんとこでやるのが本筋なんだが、義姉さんとエリアナがタッグを組んでこう言い放ったのだ。
「何を言っているの?あなたとフィオくんの式なのよ?
うちの子の式なのだからサフィールでやります!これは決定事項です!」
兄貴も「……ということだ」というのでサフィールになった。
フィオに申し訳ないと思ったが、フィオ自身が「うちの子……」と嬉しそうにしていたからまあ良しとしよう。
料理に関してはサフィールの料理人の独断場だ。
自家製の野菜や肉のうまさには定評があるし、料理人もその素材を活かす最高の腕を持っている。
俺の結婚式となって、結婚の報告をした時にはメニューを考え始めていたそうだ。
ということで、式の料理はサフィールの料理人が腕を振るいまくった。
物凄い量を作っていたが、冒険者や下街で世話になっている連中も呼んでいるから、料理は多すぎるくらいでちょうどいいだろう。
奴らびっくりするくらい食うからな。
サフィール家はもちろん、グランディールのいつも世話になっている古参の使用人も今日は客。みんな大切な俺の家族だから。
料理人以外は仕事の手を休め安心して参列してもらえるよう、領内にある孤児院の子供たちに給金を払い臨時の給仕を頼んだ。
普段はシンプルな服を好む彼らも、今日は見たこともないくらいビシっとした衣装を身に着けそわそわと庭をうろついている。
みんな朝からいろいろなプレゼントをくれた。ひとつひとつが心のこもった素晴らしい贈り物。「フィオさまにも」「お幸せに」とペアのものが多く、フィオも涙ぐんでいた。
「……こんな気持ちのこもった贈り物を私にまで…。嬉しいです。ありがとうございます」
使用人の中には式が始まる前から泣いている者もいる。俺の乳母だ。
「私の目の黒いうちにこのような幸せがあるなんて……!」
乳母は本当に苦労して俺の世話をしてくれた。
親父たちも俺が5歳になるまでは精一杯子育てしてくれたんだが……何しろ独特な人たちだったもんで、逆に大変だったらしい。
5歳で親父たちがとっとと引退し田舎に引っ込んでからは、俺の養育は結婚し侯爵を継いだ兄夫婦が受け継いだ。
(新婚早々よくぞそんな面倒を引き受けたな、と兄貴夫婦には頭が上がる気がしない。)兄貴夫婦に主導権が移り、ようやく乳母も安心して見守れるようになったんだそうな。
そのあとは使用人として俺に仕えてくれていたが、まあ俺が規格外だったもんで心配のかけどおしだ。
乳母にとっては俺はまだまだ「手のかかるお坊ちゃま」のようで、いまだにサフィールに行くたび手作りのクッキーを大量に持たされる。
俺は結婚しないものとあきらめていたようで、フィオを連れて行ったときにもそっと涙をぬぐっていた。
ちなみに、両親も田舎の別荘から戻ってきている。
だがこちらは涙もなくご機嫌な様子で会場を見回っていた。
両親的には「もう独立した立派な大人なんだから、好きに生きればいい。生きていてくれたらそれで十分!」くらいの感覚らしい。
俺が聖女だと報告し、フィオを紹介、さらにはフィオとの結婚を伝えた時も、驚きもせずただにこにこしていた。
あまりの通常仕様に、フィオのほうが心配して聞いていたくらいだ。
「あの……男同士だということはよろしいのでしょうか?」
だよなあ?普通はそう思うよな?
でも、こいつら違うんだよ。普通じゃねえの。だからこそ、こんな風に兄貴たちに報告した後になっちまったんだし。
案の定、親父はけろっとしたものだった。
「私だって、グランディールの男とそうなる可能性があったんだ。良いも悪いもないだろう。まあ、相手が相手だったから逃げ回ったんだがな。おかげでこんな素晴らしい妻を得たし、素晴らしい息子がふたりもできた。
しかしなあ、グランディールがフィオくんだって分かっていたなら、ゲイルは逃げ回る必要なかったのになあ!はっはっは!
まあなるようになったということさ!お互いに幸せならいいじゃないか。それ以外に大切なことなどないだろう?」
母ものんびりと笑っていた。
「ゲイルが選んだ相手なんだもの間違いないでしょ。
こおんなに可愛らしい息子が増えるのよ?いいに決まってるじゃないの。
フィオちゃん、私のことはお母様って呼んでね?はい、言ってごらんなさい?」
「…お、お母様?」
「なあに?」
「いや、なあに、じゃねえよ。母さんが呼べっつったんだろうが。フィオが困ってんだろ。からかうなよ」
「うふふふふ。だって可愛らしいんだもの」
フィオ、すまん。こういう人たちなんだって!
214
お気に入りに追加
750
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
待鳥園子
恋愛
グレンジャー伯爵令嬢ウェンディは父が友人に裏切られ、社交界デビューを目前にして無一文になってしまった。
父は異国へと一人出稼ぎに行ってしまい、行く宛てのない姉を心配する弟を安心させるために、以前邸で働いていた竜騎士を頼ることに。
彼が働くアレイスター竜騎士団は『恋愛禁止』という厳格な規則があり、そのため若い女性は働いていない。しかし、ウェンディは竜力を持つ貴族の血を引く女性にしかなれないという『子竜守』として特別に採用されることになり……。
子竜守として働くことになった没落貴族令嬢が、不器用だけどとても優しい団長と恋愛禁止な竜騎士団で働くために秘密の契約結婚をすることなってしまう、ほのぼの子竜育てありな可愛い恋物語。
※完結まで毎日更新です。
最後に、お願いがあります
狂乱の傀儡師
恋愛
三年間、王妃になるためだけに尽くしてきた馬鹿王子から、即位の日の直前に婚約破棄されたエマ。
彼女の最後のお願いには、国を揺るがすほどの罠が仕掛けられていた。
双子の妹を選んだ婚約者様、貴方に選ばれなかった事に感謝の言葉を送ります
すもも
恋愛
学園の卒業パーティ
人々の中心にいる婚約者ユーリは私を見つけて微笑んだ。
傍らに、私とよく似た顔、背丈、スタイルをした双子の妹エリスを抱き寄せながら。
「セレナ、お前の婚約者と言う立場は今、この瞬間、終わりを迎える」
私セレナが、ユーリの婚約者として過ごした7年間が否定された瞬間だった。
婚約者が義妹を優先するので私も義兄を優先した結果
京佳
恋愛
私の婚約者は私よりも可愛い義妹を大事にする。いつも約束はドタキャンされパーティーのエスコートも義妹を優先する。私はブチ切れお前がその気ならコッチにも考えがある!と義兄にベッタリする事にした。「ずっとお前を愛してた!」義兄は大喜びして私を溺愛し始める。そして私は夜会で婚約者に婚約破棄を告げられたのだけど何故か彼の義妹が顔真っ赤にして怒り出す。
ちんちくりん婚約者&義妹。美形長身モデル体型の義兄。ざまぁ。溺愛ハピエン。ゆるゆる設定。
繋がれた絆はどこまでも
mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。
そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。
ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。
当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。
それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。
次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。
そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。
その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。
それを見たライトは、ある決意をし……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる