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第八章 これから
クリスのペット
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クリスに叱られしゅんとしたチビの様子はまさに子犬。
垂れた耳と尻尾が見える気がする。
「とにかく、上に来い。カイト、お前もだ」
俺たちはとりあえずカイトと一緒に上に連行された。
「いや、改めてすまんゲイル。ほら、カイト!謝れ」
「ええ?!俺は悪くないですよね?悪いのはこいつじゃん。クリスさんをもてあそびやがって!」
ゴン、と頭に拳を入れられるカイト。しぶしぶ俺に頭を下げた。
「…………悪かったな!」
ぷう、と頬を膨らませ「俺は悪くない」と顔に書いてある。ガキかよ。
でもまあ、ある意味こいつはクリスにとっては忠犬だ。
こいつから見たら俺がクリスをもてあそんだように見えたんだろう。
クリスを慕ってのことだとおもえば、な。
「いや、いいけどよ。確かに俺も無神経だったしな。わりいなクリス」
子供をいじめているようでちと気が咎めるし。
するとフィオが冷気を発し始めた。
「あなたなんて言われたか分かっていますか⁈尻軽ですよ⁈駄犬、訂正しなさい。ゲイルは処女でした。私が証人です」
「だあああ!フィオ!黙れ!!」
するとまた子犬が剣呑な表情に。
「え?……お前、あんなにクリスさんと一緒にいたくせにヤッてなかったのかよ!クリスさんの何が不満なんだ!」
キャンキャンわんわんと吠えだした。おいおい……勘弁しろよ……。
ウンザリしてきた。
「どうしろってんだ?!おい、クリス。もう一発入れとけ」
ゴツン!
「痛いっ!酷いですよ、クリスさん!!」
涙目で頭を押さえながら抗議する駄犬に、クリスがひとこと。
「もう一度言う。黙れ」
ようやく駄犬は大人しくなった。
「とりあえず、お前に事情を説明する義理はねえとおもうぞ?だが、これだけは言っておく。俺はクリスと付き合ったことはない。もちろん寝たこともねえぞ?俺とクリスは親友だ。クリスは俺が背を預けられる唯一のダチなんだ」
「だって…………クリスさん、アンタのこといつも気にしてた。アンタのために動いてるのに……」
「それに関しては有難いと思ってる。でも、俺だってそれなりにギルドに貢献していると思うんだがなあ……?」
「それはそうだけど……」
「とにかく。俺の恋人はフィオだ。見てみろ、最高に可愛いだろ?俺の可愛いフィオは焼きもちやきなんだよ。だから尻軽なんて言うな。マジで凍らされるぞ?俺にはフィオだけなんだから」
「ってことだ。納得したか、カイト。……確かに、俺はゲイルに惚れている」
「やっぱり!!ゲイル、クリスさんの何が不満なんだよ!強いし、カッコいいし、優しいんだぞ!その怖えやつなんかよりよっぽどいいじゃねえか!」
「ああん?!てめえ、俺のフィオをなんつった?」
ビリビリっと何かが溢れたのが分かる。
「ひ!」
みるみる青ざめ、小刻みに震えだすクソ犬に俺は容赦なく圧を浴びせた。
「てめえなあ、クリスがいい奴だなんてとっくに知ってんだよ!それとこれとは別だろうが!俺が愛してんのはフィオだ!フィオを貶める奴を俺は許さん!」
あーあ、とクリスが顔を手で覆った。
「クリス!てめえの犬だから我慢してやってんだ。ペットのしつけくらいしっかりしとけ!」
「…………すまん。こいつ、俺のファンってやつでな。それなりに見込みがあったんで面倒をみてやってたんだが……。思い込みが激しいんだよ」
俺は容赦なく犬の頭を鷲掴みにして、フィオの前に突き出した。
「げ、ゲイル!」
クリスと犬の顔色が真っ青になった。
俺は容赦なく言い募る。
「ほらみろ!髪だってサラッサラ!美人ってのはフィオのことだろうが!このクールな面ではにかまれたらすげえ可愛いんだぞ!青い瞳は夜空見てえだし、それがウルウル上目遣いしてみろ、たまらねえだろうがよ!おまけになあ、俺のフィオは魔法だってスゲぞ。アイススピアーをバカスカ打ってきやがる。一騎当千だ。しかも宰相やるくらい頭もいい。最高だろうが!」
「なんでもできそうなのに、間抜けなとこも可愛い!寝ぼけて甘えてくるとこなんか最高なんだよ!俺が拾って大事に育てた俺のフィオのどこが悪い!よーくこの面見ろ!天使だろ!そのゴリラより可愛いに決まってんだろうが!!!」
どうだ、分かったか!とドヤってやれば、さっきまで青ざめていたはずの駄犬がまるで残念なものを見るような眼で俺を見返した。
「…………十分理解した。アンタ……この怖いのがそう見えてんのか……ヤベエな……。悪かった。尻軽ってのは取り消す。クリスさんの横恋慕だったんだな」
「おいカイト!うるせえ!人の失恋蒸し返すなよ!」
「おう!分かればいいんだ!」
急に聞き分けの良くなった子犬と、急にがっくりしてしまったクリス。
対照的な師弟だよなあ、とフィオを見れば……
「どうした?フィオ」
フィオが真っ赤になって膝に顔をうずめていた。
「……だ、大丈夫です……。ちょっと……ゲイルの愛が大きすぎて……衝撃が……」
「は?別に普通だろ」
「だからノロケんなら帰れって!」
垂れた耳と尻尾が見える気がする。
「とにかく、上に来い。カイト、お前もだ」
俺たちはとりあえずカイトと一緒に上に連行された。
「いや、改めてすまんゲイル。ほら、カイト!謝れ」
「ええ?!俺は悪くないですよね?悪いのはこいつじゃん。クリスさんをもてあそびやがって!」
ゴン、と頭に拳を入れられるカイト。しぶしぶ俺に頭を下げた。
「…………悪かったな!」
ぷう、と頬を膨らませ「俺は悪くない」と顔に書いてある。ガキかよ。
でもまあ、ある意味こいつはクリスにとっては忠犬だ。
こいつから見たら俺がクリスをもてあそんだように見えたんだろう。
クリスを慕ってのことだとおもえば、な。
「いや、いいけどよ。確かに俺も無神経だったしな。わりいなクリス」
子供をいじめているようでちと気が咎めるし。
するとフィオが冷気を発し始めた。
「あなたなんて言われたか分かっていますか⁈尻軽ですよ⁈駄犬、訂正しなさい。ゲイルは処女でした。私が証人です」
「だあああ!フィオ!黙れ!!」
するとまた子犬が剣呑な表情に。
「え?……お前、あんなにクリスさんと一緒にいたくせにヤッてなかったのかよ!クリスさんの何が不満なんだ!」
キャンキャンわんわんと吠えだした。おいおい……勘弁しろよ……。
ウンザリしてきた。
「どうしろってんだ?!おい、クリス。もう一発入れとけ」
ゴツン!
「痛いっ!酷いですよ、クリスさん!!」
涙目で頭を押さえながら抗議する駄犬に、クリスがひとこと。
「もう一度言う。黙れ」
ようやく駄犬は大人しくなった。
「とりあえず、お前に事情を説明する義理はねえとおもうぞ?だが、これだけは言っておく。俺はクリスと付き合ったことはない。もちろん寝たこともねえぞ?俺とクリスは親友だ。クリスは俺が背を預けられる唯一のダチなんだ」
「だって…………クリスさん、アンタのこといつも気にしてた。アンタのために動いてるのに……」
「それに関しては有難いと思ってる。でも、俺だってそれなりにギルドに貢献していると思うんだがなあ……?」
「それはそうだけど……」
「とにかく。俺の恋人はフィオだ。見てみろ、最高に可愛いだろ?俺の可愛いフィオは焼きもちやきなんだよ。だから尻軽なんて言うな。マジで凍らされるぞ?俺にはフィオだけなんだから」
「ってことだ。納得したか、カイト。……確かに、俺はゲイルに惚れている」
「やっぱり!!ゲイル、クリスさんの何が不満なんだよ!強いし、カッコいいし、優しいんだぞ!その怖えやつなんかよりよっぽどいいじゃねえか!」
「ああん?!てめえ、俺のフィオをなんつった?」
ビリビリっと何かが溢れたのが分かる。
「ひ!」
みるみる青ざめ、小刻みに震えだすクソ犬に俺は容赦なく圧を浴びせた。
「てめえなあ、クリスがいい奴だなんてとっくに知ってんだよ!それとこれとは別だろうが!俺が愛してんのはフィオだ!フィオを貶める奴を俺は許さん!」
あーあ、とクリスが顔を手で覆った。
「クリス!てめえの犬だから我慢してやってんだ。ペットのしつけくらいしっかりしとけ!」
「…………すまん。こいつ、俺のファンってやつでな。それなりに見込みがあったんで面倒をみてやってたんだが……。思い込みが激しいんだよ」
俺は容赦なく犬の頭を鷲掴みにして、フィオの前に突き出した。
「げ、ゲイル!」
クリスと犬の顔色が真っ青になった。
俺は容赦なく言い募る。
「ほらみろ!髪だってサラッサラ!美人ってのはフィオのことだろうが!このクールな面ではにかまれたらすげえ可愛いんだぞ!青い瞳は夜空見てえだし、それがウルウル上目遣いしてみろ、たまらねえだろうがよ!おまけになあ、俺のフィオは魔法だってスゲぞ。アイススピアーをバカスカ打ってきやがる。一騎当千だ。しかも宰相やるくらい頭もいい。最高だろうが!」
「なんでもできそうなのに、間抜けなとこも可愛い!寝ぼけて甘えてくるとこなんか最高なんだよ!俺が拾って大事に育てた俺のフィオのどこが悪い!よーくこの面見ろ!天使だろ!そのゴリラより可愛いに決まってんだろうが!!!」
どうだ、分かったか!とドヤってやれば、さっきまで青ざめていたはずの駄犬がまるで残念なものを見るような眼で俺を見返した。
「…………十分理解した。アンタ……この怖いのがそう見えてんのか……ヤベエな……。悪かった。尻軽ってのは取り消す。クリスさんの横恋慕だったんだな」
「おいカイト!うるせえ!人の失恋蒸し返すなよ!」
「おう!分かればいいんだ!」
急に聞き分けの良くなった子犬と、急にがっくりしてしまったクリス。
対照的な師弟だよなあ、とフィオを見れば……
「どうした?フィオ」
フィオが真っ赤になって膝に顔をうずめていた。
「……だ、大丈夫です……。ちょっと……ゲイルの愛が大きすぎて……衝撃が……」
「は?別に普通だろ」
「だからノロケんなら帰れって!」
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