【完結】俺が聖女⁈いや、ねえわ!全力回避!(ゲイルの話)  ※番外編不定期更新

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第7章 三つ巴の攻防

クリスと俺の話し合い

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話はなんとか落ちるとこに落ちた。

「んじゃ、ま、そういうことだ!」

フィオを連れて帰ろうとすると…フィオが俺を留めた。

「今日は……クリスに貸し一つです。ゲイル、2人でよく話し合って下さい。私は帰ります。……明日の朝迎えに来ますので」

「はあ?何日振りだと思ってんだよ⁈」

「ゲイル。黙って。私はこれでもギリギリなのです。あなたを閉じ込め離したくありません。でも、私は10日待ちましたが…クリスは10年です。これ以上は保ちません。あなたも…分かっていますよね?逃げないで向き合って下さい。…私にこんなことを言わせないで?」

言葉を失う俺の肩を掴む手。クリスだ。

「……ボルゾイ…いや、フィオ。ゲイルは預かる。無体は働かないと約束しよう」

「預けるだけです。朝には返して貰いますから。……ゲイル、愛しています。あなたは私のものだ」

俺の前髪をかきあげ優しいキスを額に落とし、フィオは帰った。




立ち尽くす俺に、クリスが苦笑。バリバリと頭を掻き、いつもの口調で俺を招いた。

「あー……酒でも飲むか?秘蔵のやつ出してやる。昔、手を貸してやった隣国のギルド長から貰ったんだ」

何気ない台詞の奥に僅かに混じる懇願。
ふう。
ため息ひとつで頭を切り替え、俺もいつもの口調で乗った。

「お前そんなん隠してやがったのかよ!」

ずかずかと部屋に戻り、いつもの席にどかりと座る。ニヤニヤしながら指先でテーブルをトントンと叩き催促してやった。

「ほら、さっさと出せ。新しい出発の祝い酒といこうぜ?」

一瞬クリスに泣きそうな表情が浮かび、すぐさま喜色に塗り替わる。

「祝い酒か。浴びるほど飲ませてやる」





俺たちは馬鹿みたいに飲んで笑って悪態をつきあった。

「てか、テメェ俺に惚れてんじゃねえよ」
「そりゃ、命救われた挙句、そいつがすげえ美形の貴族様なんだぞ?天使かと思ったわ!お人好しで誰にでも手を差し伸べる。なのに口を開けば悪態つきやがるし、オマケに態度も悪いときた。人懐こくて誰とでもすぐに仲良くなる、その癖一定の距離を取るしなかなか懐かねえ。そんなんが俺だけに懐いてんだぞ?かわいいだろうがよ!」
「誰が天使だ!寒くなるからやめろ!」
「フィオだって、ギルドでお前がいない時『私の天使はどこですか?』とか当たり前みてえに言ってるぞ?」
「だああああ!天使は俺じゃねえ、フィオだろが!みろ、ほら、鳥肌!」
「お。マジか!」

腕を捲って見せたら、その腕を掴みそのまらまベロリと舐められた。

「ぎゃああああ!」
「甘いな」
「甘いわけあるか!冷や汗かいてんだからしょっぺえわ!舌腐ってんのか?」
「お前は…どこもかしこも甘い」

グイッとそのまま腕を引かれ、テーブルに乗り上げるようにしてヒタと目を覗き込まれる。

ヤベエ!

「お、おい。離せよ」

さりげなく逃げを打つが、空いた手で顎をとられ目を逸らすことは許されなかった。
そのまま耳をするっと撫でられ、ピクリと身体が跳ねる。
頸の毛がビリビリと逆立ち危険を伝えてくる。
クリスの口元には柔らかな笑みすら浮かんでいるというのに、まるで強者と対峙したかのように背筋がぞくっとした。
まさか、俺は怯えているのか?コイツに?

それに気付いたクリスの目がすうっと獲物を狙う獣のように細められる。

「……俺が怖いのか?」

これは、獲物を追い詰め囲い込むハンターの目だ。
獲物はこの俺。

思わずグイッと空いた方の手をクリスの眼前に突き出す。
するとその手も難なく掴まれ、完全にクリスに囚われてしまった。

「お、お前、変わりすぎなんだよ!!ちったあ待てよ!」

「10年待った。10年だ」

いうなり力任せに机の上に引っ張り上げられた。
そのまま容赦なく俺をその身体で抑え込み、天板に縫い付けるクリス。
マジか!このままやる気じゃねえだろうな?
上にいるクリスの表情が逆光で見えないだけに、ブルリと身体が震えた。
とたん、クリスの腕の力が緩んだ。

「……頼む。怖がらないでくれ」

その強引な行為とは裏腹なあまりにも弱気な言葉に、力が一気に抜けた。こんな時なのにブハッと笑いが漏れる。

「……怖かねえよ。お前だぞ?ただ……お前とこんなん、慣れねえんだよ」

言いながらかああっと赤くなった顔を少しでも隠したくてクリスから顔を背けた。なんだよこれ!くそ恥ずかしいぞ!

グウっと喉を鳴らしたクリスが、ドサリと俺に倒れ込んできた。

「お、おい!どうした!」

焦って起きあがろうとすると、耳元で震える声が。

「ヤベエ。心臓をやられた」

ま、マジか⁈ヒール…

「お前が可愛すぎ。ヤベエわ。無理だわこれ」

「はあ?なんだよそりゃ。……お前……マジで馬鹿だよなあ……」

笑いながらクリスの頭を撫でてやる。

「フィオより俺のほうが忠犬だろ?耐えた俺を褒めろ」

「はいはい。ヨーシヨーシ!かわいいな、お前」

「好きになったか?」

「悪友としてはな?フィオのことは愛してるんだよ。俺が持つもんならなんだってやりたい、フィオの子供なら、と思うくらいにな。だが……すまん。お前には……学生が寮でやる程度の仲間内の抜き合い、そこまでだ。無茶言ってんのは承知の上でいう。それも我慢できるなら全力で我慢しろ。
お前が俺に向ける愛と、俺がお前に向ける愛は違う。お前に俺がやれるのはそこまでなんだよ。お前にフィオにやるのと同じもんは返してやれねえ。…………それでもいいか?お前に無理を言っている自覚はある」

「いきなり弱気じゃねえか。……しゃーねーな。一生耐えるつもりだったんだ。それを思えば十分だ。お前は俺の命を救った。俺の命はお前のモンだしな。異論は認めねえんだろ?」

「ああ。認めねえ」

「キスくらいはさせろ」

「……たまに、な。前払いしてやったろ?」

「触れただけのやつか?ガキかよ」

「俺からしてやっんだ。価値あるだろうが」

「まあな」

ほら、と手を引いて起こされた。
ボリボリ、と頭を掻きながらクリスが笑った。

「俺だってなんでもしてやりたいくらいに惚れてんだ。お前が望むならギリギリまでは我慢してやる。惚れた弱みだ」



















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