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第7章 三つ巴の攻防
複雑な心境
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あと少しで王城につく。待望のフィオとの再会だ。
……だというのに、俺の気持ちは複雑である。
少なくとも、愛馬の頑張りさえ「い、いや、無理しなくていいんだぞ?ゆっくり行こうぜ?」といってしまうくらいには。
フィオになんて言えばいいんだ!
あんなに「親友だ」だの「信じろ」だの言ったにもかかわらずこの体たらく。
俺は流されやすいのだろうか……。
「うーん。お前、誰とでもすぐに親しくなる割には、懐には入れねえだろ?家族と、ボルゾイとハルトと俺くらいか。その分、一度懐に入れちまった奴は切れねえんだよ」
確かに。知り合いや友人は多いが、特別なのは身内以外ではそんくらいだもんなあ……。フィオは別として、クリスとハルトを切れるかって言われたら……無理だ。
特にクリスは、一緒に馬鹿やって飲んだくれて、助けて助けられてきたもんなあ……。
正直、あちこちから余計な周波を寄せられてうんざりしていた俺には、クリスとの気の置けない付き合いは救いだった。あの頃クリスがいなきゃ、俺は人間不信にでもなっていたかもしれん。
「そうか。そりゃ光栄だ。俺も、ギルマスだの元S級だの関係なく平気でどつき回すお前には、気が抜けたんだ。お前の前では単なる『クリス』で居られる。同じだな」
兄貴はどっちかっつーと親父みてえなもんだからな。お前、俺にとっては兄弟みてえなもんなんだよなあ……。居て当たり前っつーかよお……。はぁ……。
「くっそ、お前なんで俺に惚れちまったんだよ……。俺の気持ちはどうしてくれるんだ……」
「そりゃ、しょうがねえだろ。想像してみろ。愛想がいいわりに誰にもなつかない猫が、せっせと通ってきて俺の前だけは腹見せて眠るんだぜ?可愛いだろうがよ。そこにいきなり現れた奴がそいつを連れて行こうとする。大人しくやれるか?」
「はあ?俺の猫だぞ!なにしやがる!……………あ!」
「だろ?」
「…………すまん。俺が甘えすぎたんだな……って、あれ?なんで会話になってんだ?俺、口に出してたか?」
「口に出してたぞ」
そ、そうか。なんてこった!
「ああ……フィオになんて言ったらいいんだよ……。フィオに泣かれたら俺は病む!病む自信がある!」
「聖女なんだろ?自己ヒールでなんとかしろよ!」
「ヒールする気力すら失うわ!あのフィオだぞ?可愛い俺のフィオに泣かれるんだぞ?無理だろ!」
「あいつ、そんなに可愛かねえっつってんだろ?意外とふてぶてしいぞ。その可愛いフィルターなんとかしろよ。もうボルゾイだって出会ったときの子供じゃねえんだ」
「年齢じゃねえんだって。あの可愛さは」
「その言葉、まるっとお前に返すわ」
城壁に近づくにつれ徐々に遅くなっていた歩みは、ついに止まった。
「…………なあ、クリス。俺、どうしたらいいんだ?もしかして俺、認めたくねえが…………悪女ってやつ?」
ぶっふぉお!
クリスが吹き出した。
「あ、悪女?!お前が?!お前、お前のケツ触った男をどうした?」
「ああ?投げ飛ばしたり、ぶちのめした」
「お前に迫ったやつは?」
「二度とそんなことを考えられねえように、説得した」
「そんなんが悪女なわけあるか!…………お前は情に厚いんだよ。俺がそこに付け込んだんだ。友情を捨てるか俺を取るか選べと迫った。ボルゾイにはそういえばいい」
「お前にだけ責を負わせられっか。俺だって……お前を捨てらんねえくらいにはお前を大事に想ってんだよ。同罪だろうが」
…………はあ…………。
「俺……フィオに捨てられたりしねえかなあ……。捨てられたらすがろう!」
「あいつが捨てるわけねえだろうが!逆だ逆!あいつが縋ってくるって!」
「フィオ……会いてえのに会いたくねえ……」
自分がこんな恋だの愛だのに翻弄されるとは思ってもみなかった。
これまで振った奴ら、すまん。こりゃキツイわ。もう少し優しくしやるんだった。
「ああ、もう、お前そんなウジウジするようなヤツじゃねえだろうが!シャキッとしろシャキッと!悪い意味でもいい意味でも、思い切りがいいのがお前だろ?いつまでもぐちぐちいってっとまたキスするぞ!悪い意味でもいい意味でも、思い切りがいいのがお前だろ?」
「……だな!ここでウジウジしててもしょうがねえ!なるようになる!いくぞ、クリス!」
……だというのに、俺の気持ちは複雑である。
少なくとも、愛馬の頑張りさえ「い、いや、無理しなくていいんだぞ?ゆっくり行こうぜ?」といってしまうくらいには。
フィオになんて言えばいいんだ!
あんなに「親友だ」だの「信じろ」だの言ったにもかかわらずこの体たらく。
俺は流されやすいのだろうか……。
「うーん。お前、誰とでもすぐに親しくなる割には、懐には入れねえだろ?家族と、ボルゾイとハルトと俺くらいか。その分、一度懐に入れちまった奴は切れねえんだよ」
確かに。知り合いや友人は多いが、特別なのは身内以外ではそんくらいだもんなあ……。フィオは別として、クリスとハルトを切れるかって言われたら……無理だ。
特にクリスは、一緒に馬鹿やって飲んだくれて、助けて助けられてきたもんなあ……。
正直、あちこちから余計な周波を寄せられてうんざりしていた俺には、クリスとの気の置けない付き合いは救いだった。あの頃クリスがいなきゃ、俺は人間不信にでもなっていたかもしれん。
「そうか。そりゃ光栄だ。俺も、ギルマスだの元S級だの関係なく平気でどつき回すお前には、気が抜けたんだ。お前の前では単なる『クリス』で居られる。同じだな」
兄貴はどっちかっつーと親父みてえなもんだからな。お前、俺にとっては兄弟みてえなもんなんだよなあ……。居て当たり前っつーかよお……。はぁ……。
「くっそ、お前なんで俺に惚れちまったんだよ……。俺の気持ちはどうしてくれるんだ……」
「そりゃ、しょうがねえだろ。想像してみろ。愛想がいいわりに誰にもなつかない猫が、せっせと通ってきて俺の前だけは腹見せて眠るんだぜ?可愛いだろうがよ。そこにいきなり現れた奴がそいつを連れて行こうとする。大人しくやれるか?」
「はあ?俺の猫だぞ!なにしやがる!……………あ!」
「だろ?」
「…………すまん。俺が甘えすぎたんだな……って、あれ?なんで会話になってんだ?俺、口に出してたか?」
「口に出してたぞ」
そ、そうか。なんてこった!
「ああ……フィオになんて言ったらいいんだよ……。フィオに泣かれたら俺は病む!病む自信がある!」
「聖女なんだろ?自己ヒールでなんとかしろよ!」
「ヒールする気力すら失うわ!あのフィオだぞ?可愛い俺のフィオに泣かれるんだぞ?無理だろ!」
「あいつ、そんなに可愛かねえっつってんだろ?意外とふてぶてしいぞ。その可愛いフィルターなんとかしろよ。もうボルゾイだって出会ったときの子供じゃねえんだ」
「年齢じゃねえんだって。あの可愛さは」
「その言葉、まるっとお前に返すわ」
城壁に近づくにつれ徐々に遅くなっていた歩みは、ついに止まった。
「…………なあ、クリス。俺、どうしたらいいんだ?もしかして俺、認めたくねえが…………悪女ってやつ?」
ぶっふぉお!
クリスが吹き出した。
「あ、悪女?!お前が?!お前、お前のケツ触った男をどうした?」
「ああ?投げ飛ばしたり、ぶちのめした」
「お前に迫ったやつは?」
「二度とそんなことを考えられねえように、説得した」
「そんなんが悪女なわけあるか!…………お前は情に厚いんだよ。俺がそこに付け込んだんだ。友情を捨てるか俺を取るか選べと迫った。ボルゾイにはそういえばいい」
「お前にだけ責を負わせられっか。俺だって……お前を捨てらんねえくらいにはお前を大事に想ってんだよ。同罪だろうが」
…………はあ…………。
「俺……フィオに捨てられたりしねえかなあ……。捨てられたらすがろう!」
「あいつが捨てるわけねえだろうが!逆だ逆!あいつが縋ってくるって!」
「フィオ……会いてえのに会いたくねえ……」
自分がこんな恋だの愛だのに翻弄されるとは思ってもみなかった。
これまで振った奴ら、すまん。こりゃキツイわ。もう少し優しくしやるんだった。
「ああ、もう、お前そんなウジウジするようなヤツじゃねえだろうが!シャキッとしろシャキッと!悪い意味でもいい意味でも、思い切りがいいのがお前だろ?いつまでもぐちぐちいってっとまたキスするぞ!悪い意味でもいい意味でも、思い切りがいいのがお前だろ?」
「……だな!ここでウジウジしててもしょうがねえ!なるようになる!いくぞ、クリス!」
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