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第六章 ゲイルの狩り

アイスドラゴンの鱗

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改めてみると、すごく美しいドラゴンだ。銀色の鱗は光によって色を変え、時に虹色に光る。
常に発せられる冷気でその身体を覆うようにアイスダストがキラキラと輝き、夢のようだ。

「ブリード……奇麗だな……お前は美しい」

手を伸ばすと、すり、と鼻先を擦り付けられた。ひんやりとした身体は、以外としっとりと滑らかな触感。撫でてやれば気持ちよさそうに目を細める。

【ゲイル、お前も強く美しい。それにとても良い匂いがする】

「そうか?自分じゃわかんねえなあ……」

クリスを振り返ると呆れたように首を振られた。

「いや、嗅がねえぞ?俺がお前を嗅ぐってのは問題だろうが」

ブリードを撫でる俺を羨ましそうに見ているクリス。

「なあ、ブリード。クリスにも触れさせてやってもらえるか?」
【よいぞ】
「いいってさ!クリス、触れてみろよ!」
「マジかよ!…………じゃあ、触れるぞ……」

恐る恐る手を伸ばすクリス。触れた瞬間、驚いたように目を見張る。

「え?もっとゴワゴワしてるのかと思ったぜ。すげえ!つるつるしてるぞ、おい!」
「ブリード、クリスも喜んでる。滑らかで素敵だ。ありがとな」

するとブリードがフン、と鼻を鳴らした。

【もっと撫でるがよい。我も心地よい。翼の付け根なども頼む】

なんだよ、おい!かわいいじゃねえか!
俺とクリスで体中を撫でまわしてやった。ついでに何か所かうろこが剥がれていたところを見つけたので、全身にヒールをかけてやる。おまけでクリーンも。あっという間にピッカピカだ。

【おおおおお!身体が軽いぞ!ゲイル!しかも、鱗がツヤツヤではないか!素晴らしいぞゲイル!】

大喜びで尻尾をビタンビタン翼をバサバサ言わせるので、慌てて風壁を張る。犬かよ!

ゲラゲラ笑いながら「おい。寒いからやめろって!」といえばとたんにしょんぼりと尾を下げた。

【す、すまぬ】

やっぱ犬だな!かわいいなあ、おい!


胸の前の鱗が一番デカいというので、そこの鱗を3枚ほどはがしてもらった。そこもすかさずヒールしたので、剥がしたところにもすぐに新しいうろこが再生する。

【器用なものだな。もっと多くとっても良いのだぞ?】

「ははは!ありがとな。だが、痛みはあるだろ?気持ちだけもらっておくよ」


貰った鱗は手のひらよりも大きかった。暑さも7ミリほどあり、まるで美しい鉱石のようだ。
これなら素晴らしいカフスになるだろう。なんならブローチもできそうだ。

クリスも鱗を見て驚いたようだった。

「いや、これ、ギルドで稀に入るのよりもでけえぞ。……こんなん剣で倒すのとか無理だろ」

【ははは!剣で?おかしなことを言う人間だ。人間に倒されるものなど、まだまだ子供よ。我はもう数百年は生きておるでな】

「雷とかじゃねえと無理だよな。魔法攻撃しかねえだろ」

【さすがにあの雷は食らいたくはない。こちらの攻撃が届くのならば戦いようもあるが、ゲイルには攻撃が通じぬからなあ】

「もう攻撃しねえって。あれはお互いデモンストレーションだったろ?」

「あれをデモンストレーションだっていうのお前だけだって!」
【あれをデモンストレーションというから怖いのだ】

クリスとブリードが同じことを言うのが可笑しくて腹を抱えて笑っちまった。

「クリス、ブリード、同じこと言ってんぞ?お前ら気が合うんじゃねえの?」

「いや、ドラゴンごか?ねえわ!」
【我が人間と?あり得ぬ!】

「ハハハハ!またかぶってんじゃねえか!」

人間とドラゴンが並んで同時に同じことを言うってどういう状況だよ!どんだけ気が合ってんだよ!
ああ、腹が痛え!




せっかくなので、ブリードにも俺の料理をふるまってやることにした。
ちょうど来る途中に狩ってきた肉もあるしな。
人間の料理なんて食ったことねえだろ。

とりあえず、火は苦手だろうから少し離れて待っていてもらう。
色々なハーブも取ってきたし、積んできたから、肉に各種スパイスとハーブをよく揉みこんで焼く。
油があれば揚げてもいいんだがなあ。さすがに持ってねえ。

腹をすかせたクリスとブリードが並んで鼻をひくひくさせながら「マテ」をしているのがすげえおかしい。
やっぱこいつらそっくりじゃねえか。





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