【完結】俺が聖女⁈いや、ねえわ!全力回避!(ゲイルの話)  ※番外編不定期更新

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第六章 ゲイルの狩り

ゲイル大人気!

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通常アイスドラゴンは北の国の最深部にいる。そうするとここからだと片道1か月はかかっちまう。
だから冒険者に依頼しようと思っていたんだが、なかなか高ランク冒険者が戻ってこないもんだから、自ら行っちまうことにした。
ちょうどこの時期は繁殖期。アイスドラゴンは繁殖期の前になると北からこっちに降りてきて、巣ごもりようの餌を狩るんだ。

その狩場はここから1週間ほどの場所。隣国の魔物の森だ。
ここは冒険者がポイントをためるためによく狩りをする場所なんだが、この時期だけは行くのを避ける。
アイスドラゴンと獲物の奪い合いになって勝てるわけねえからな。

だた……俺は話が別だ。
聖女になってからの俺には、害意が奴は近づけない。それはアイスドラゴンも同様だろう。俺より上位は例外らしいが、まあ、ギリってところ。
俺のほうが上位なら、ヤツの魔法攻撃は俺にはきかねえ。物理は通すかもしれないが、それはそれ。こっちが遠隔攻撃を繰り出せばいいのだ。水は雷をよく通す。アイスドラゴンの氷の元は水なわけだから、雷を落としてやればいい。

だが、いくら俺でも「結婚のプレゼントのために死んでくれ」とは言えない。祝い事なのだ。よけいな殺生は避けたいと思う。できれば友好的に話を進めたい。
というわけで、あくまでも生かさず殺さず、友好的にうろこを頂戴するよう善処するというのが今回の目標だ。

万が一俺よりアイスドラゴンのほうが高位だった時の保険としてクリスにも同行してもらった。
その場合説得は難しいが、クリスと俺なら十分倒せると見込んでいる。


てなわけで、俺はドラゴン狩りにいくというのに普通の旅気分。急ぎの旅ではあるが、久しぶりの遠出を満喫する気も十分なのだ。




実は俺は乗馬が得意だ。馬との相性がいいらしく、いちいち指示をしなくともまるで俺の意思が分かるかのように馬が動いてくれる。自分で言うのもなんだが人馬一体という言葉がふさわしい騎乗っぷりなのだ。
対して、クリスのほうはなぜか馬に嫌われる。そもそも、騎乗する段階から「嫌だけど仕方ないから上に乗せてやる」と言わんばかりの馬。ふん、と鼻を鳴らされ身をかがめてももらえない。そこを力業で飛び乗り、これまた力業で走らせるのがクリスだ。
今日も途中で走るのを渋りだした馬にクリスが苦戦している。

「おい、クリス!あんまり馬をいじめんなよ!」
「どこ見ていってんだ?俺のほうがいじめられてるんだよ!」

仕方ねえなあ。
俺はクリスの馬に近寄り、その顔を撫でてやった。

「なあ、すまんが協力してくれるか?急ぎの旅なんだよ。後でブラッシングしてやるから。な?」

俺の頼みにブルル、鼻を鳴らして応えたあと、スリ、と頭を押し付けてくるのが可愛い。

「お前、馬までたらしこめるのか……」
「はあ?失礼な奴。誠意を込めて頼めばいいだけだろ?なあ?」

そうだそうだ、というように背を揺らした馬にクリスが慌てて手綱を握りなおす。



心を入れ替えたかのようにスムーズに走り出した馬を駆り、クリスがわめく。

「お前のその力ってのはさあ、やっぱ聖女だからなのか?どう考えてもお前いろんなのに好かれすぎだろ!」

「はあ?動物なんてのは、こっちがきちんと敬意と愛情を示せば応えてくれるもんなんだよ。サフィールでは当たり前だぞ?」

「聖女の力ってより、サフィール力か……やっぱヤベエなお前んとこ。そのうち魔物まで手なずけちまいそうだ」

庭の一角で角ウサギを育てだしたことは黙っていた方がいいのだろうか。生え変わるときには角が採れるし、あまりもんの野菜の葉なんかを喜んで食ってくれるし、なにより懐くと可愛いんだよ。動物は心を癒してくれるから好きだ。



3時間ほど馬を走らせ最初の街についた。

「おい、一旦飯にしようぜ。この町の名物はビーフシチューだ。すんげえ美味いんだよ」
「お前、旨いもんにはうるさいよな。そのくせ何かに夢中になると平気で飯を抜きやがるし。意味が分からん」
「せっかく食うんだ、美味くて栄養があるもんがいいだろ?」
「まあそりゃそうだ」




馬を預けて街を探索。
馬には水と餌を与えてもらうように頼んでおいた。
ついでに通りすがりに狩った魔獣をギルドに売りに行く。

「ロックバードと、ホーングリズリーですね」

冒険者証を出すと、受付の女性がなぜか歓声をあげた。

「え?まさか、ゲイルって……医師のゲイル先生?そちらはクリスギルド長?!どうしてこの街に?」

どうやら俺たちのことを知っているようだ。

「いやあ、久しぶりに狩がしたくなってな。友人の結婚祝いにアイスドラゴンのうろこを取りに行くんだ」

「まあ!お二人で?ゲイル先生もお強いとは聞いていますが……パーティーじゃなくて大丈夫なんですか?」

俺はクリスの背に腕を回し、ニヤリ。

「俺とクリスだぜ?」

クリスの俺の背に腕を回し、ニヤニヤ。

「俺一人でもいいくらいなんだけど、こいつがどうしてもっていうもんだからさ」
「はぁ?俺のセリフだっての!」

やいのやいの言っていると、女性に笑われてしまった。

「うふふふ!仲がおよろしいのですね。では、もし人手が必要だったらお声がけくださいね。無理はなさいませんように」




「いやあ、俺って有名人なんだな」

王国でしか治療してねえんだけど、どこから伝わったんだろうな。

「はあ?今さら何言ってんだ?!冒険者を治療しまくってりゃ当たり前だろ。やつらあちこちに散ってお前のこと『命を救ってくれた恩人』だの『ヒールも薬草も使える奇跡の医者』だの言ってるぞ?」
「ああん?いつもデカい顔して悪態つきやがるやつらがか?」
「そりゃお前、そうでもしなきゃ警戒心バリバリじゃねえか。しかも、お前にいい顔してみろ、番犬がうるせえだろうが!奴らなりに気をつかってんだよ」
「お、おう、そうか。それはすまん。まあ、褒められて悪い気はしねえな」
ここで俺の腹がグウと鳴った。
「ほら、さっさと飯にしようぜ。まだ先は長い」



















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