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第五章 ゲイルは聖女
式に向けてのいろいろ
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衣装選びの他にもいろいろとやることができた。
王城でのお披露目で貴族連中への義理は果たすことになるだろう。てか、果たすことにする。
だから結婚式には俺の身内、サフィール家の連中と、お忍びでハルト、それと俺の病院を手伝ってくれている孤児院の子供たちと、ギルドの奴らを呼ぶつもりだ。
貴族平民入り混じるが、それは俺たちの式なんだから好きにさせてもらう。
一応、俺が聖女だとか孕めるってのは王家からの公表までは秘密。招待客には「結婚式」じゃなく「俺とフィオのお披露目パーティー」ってことにして招待状を出すことにした。
ギルド長のクリスにはなんだか世話になったような気がしなくもねえから、俺が直々に持って行ってやることにしよう。
結婚するにあたって、気になることがひとつあった。……元俺のストーカークソ男、セルゲイ・オーレン。俺と同じ爵位のオーレン伯爵家当主だ。こいつの親は反王家筆頭、権威主義のアイクリッド・フィラー公爵。グランディール家の次に高位な貴族なのだ。
フィラー公爵には二人息子がいる。
ひとりはシュバイツ。彼はいわゆるアルビノの一種で、漆黒の髪に真っ赤な瞳をもつ。その真っ赤な瞳が気持ち悪いとフィラー家には受け入れられず、劣勢遺伝子は不要だとして、魔法や魔道具を研究する魔塔の魔塔主のもとに養子にだされた。魔力が非常に多く、王国では俺の次くらいの魔力量を誇り、今では若くして魔塔の塔主だ。
俺も魔道具開発に協力したことがあり、シュバイツとはわりと親しくさせてもらっている。ちょっと言動がふんわりしているが非常に頭はいい。変わり者の気のいいヤツなのだ。
問題はもう一人のほう。劣勢遺伝子を持つ長男の代わりにと、事実上の嫡男として育てられたセルゲル・オーレンだ。奴は、廃嫡されたのに非常に優秀だった長男に歪んだ劣等感を持っていた。そしてそれをごまかすためにか、常に尊大な態度をとり自分の優位を主張する嫌な奴に育った。
幸いというべきか、不幸にもというべきか、セルゲイは非常に見目の良い男だ。波打つような金髪に紫の瞳をもつ神秘的な容姿の美丈夫。その優れた容貌と、高位貴族の嫡男という立場が、彼の横暴をまるで当たり前のように周囲に受け入れさせた。そのせいで、奴は自分が望んだものはすべて自分の手に入るものだと勘違いしていた。
多くの女や時には男と浮名を流していたセルゲイ。俺はたまたま「グランディールは参加しないから、たまには出ろ」とハルトに言われしぶしぶ参加した晩餐会で奴に目をつけられてしまった。
自慢じゃないが、俺の名はそれなりに知られている。だが、俺の名を知ってはいても、姿は知らないものも多い。特にグランディールに近いものにはかかわらないようにしていたから、同じ公爵家であったセルゲイとも会ったことはなかった。
セルゲイも俺も、実家を出てそれぞれ伯爵位にあった。俺は次男だから公爵家を継ぐことはない。伯爵家が正式な爵位になる。だが、セルゲイにとっての伯爵家は公爵家を継ぐまでの一時的な爵位にすぎない。
そのせいか、彼は同じ伯爵位であっても俺のほうを「格下」だと判断したようだ。
自信満々な顔で近づいてきて、勝手に俺の手を取ると手の甲に口付けしてきやがった。同性で対等の相手にしていいことではない。そのうえでこの俺にこうのたまったのだ。
「やあ、きみがゲイルかな? 噂にたがわずお美しい。私はフィラー公爵家が嫡男であり、オーレン伯爵家当主のセルゲイだ。私のことはルーグと呼んでくれ」
この挨拶を聞いただけでこいつはクソだと思った。そもそも、親の爵位をわざわざ口にするところがクソだ。
で、俺はクソにはクソな対応をすることにしている。
「あなたがオーレン伯爵か? すまないが、あなたの噂はろくでもないものしか聞いたことがないんだ。俺はサフィール侯爵家の次男であり、グリフィス伯爵家の当主でもある、ゲルリアス。俺のことはグリフィスと呼んでくれ」
全く同じセリフで、さらに通称で呼ぶことは拒否してやり、「大抵のことはこれで通る」という必殺の笑顔で挨拶を返す。そして、おもむろに懐からハンカチを取り出す。
「失礼」
セルゲイの目の前でヤツの唇のふれた個所を丁寧にふき取る俺に、セルゲイの顔が歪んだ。
「は、ははは! 面白い方だ! 美しいバラにはトゲがあるというが……。私はね。欲して手に入らなかったものはないのだ。モノでも……人でもね」
「それはお幸せな人生でいらっしゃる。挫折があるからこその人生なのですよ。苦みも味わってこそ、人間の深みがでる。私は人生の苦みを知りそれでも立ち上がる人間というものが好きなんです」
暗に「お前みてーな奴は好きじゃねえ」と伝えたつもりだったのだが、自信過剰なセルゲイには伝わらなかったようだ。彼は挑戦的に目をギラリと光らせた。
「では、何度でも立ち上がろうではないか。私はあなたが欲しい」
「 晩餐会に出たのは失敗だったようだ。私はモノではない。
それに私は男ですよ? 目の検査をされたほうが良いのでは? それとも脳の検査が必要でしょうか?」
「おかしなことを言う! あなたのその輝きの前には性別などささいなこと。この場は引きましょう。でも諦めませんよ、私は」
その言葉通り、伯爵家には翌朝豪華なバラの花束が届いた。恋人でもない男にバラを送る神経ってもんが俺には信じられん。せめて寄越すなら食えるものか酒を寄越すべきだ。そういう気障なところも俺がヤツを嫌いな理由のひとつだ。
連日のように花束が贈りつけられ、受け取り拒否しようがしまいが、翌日また新しいものが届く。
そんな毎日に辟易した俺は、先ぶれを出してオーレン家に直接向かった。
オーレン家につくと客間に通され、めったに流通しない珍しい茶葉の紅茶が供された。
「私の商会でもなかなか手に入れられない代物です。どうぞ。あなたのために用意させました。」
こういう恩着せがましいところがなあ。だが、紅茶に罪はない。遠慮なく頂こう。
さすがの高級茶葉。程よい苦みの後に残る果実にも似た甘みとふくよかな香り。セルゲイのところでしか買えないのなら、もうこれを飲むことはねえのか。少し残念に思う。
「オーレン伯爵。どういうおつもりですか? 誘いを断った相手に対してしつこくするのはマナー違反では? それともそこまでお相手がいらっしゃらないのか? 申し訳ないが、私の恋愛の対象は女性だ。君は論外。諦めてくれ」
すると奴は意外にも殊勝な表情を浮かべた。
「私の誘いを断ったのはあなたが初めてだ」
「それはよかった。誰にでも初めてはあるものです」
「私はね、その美しい外見はもちろん、その内から出る輝きに惹かれたのだ。激しい気性すら好ましい。あなたのすべてが欲しいのです」
熱っぽく俺の手をつかむセルゲイの目に、ゾっとした。
と、くらり、とめまいを感じる。
「ふふふ。効いてきましたか? 言ったでしょう? 欲しいものは必ず手に入れると。心配なさらなくても、あなたのことは大切に致しますよ? あなたの望みは全てかなえましょう。あなたは誰とも比べようもない唯一の人だ」
「…………何をした?」
「少々薬を入れさせていただきました。副作用もなにもないものですのでご安心を。身体が敏感になるだけですよ。最高の時間をお約束します。ああ……ようやくあなたが手に入る……」
セルゲイの顔がどんどん近づいてきた。おいおい。俺は男だぞ?
まさか薬まで使って俺を犯すつもりか? 冗談じゃねえ!
「ヒール! 」
俺は自己ヒールで一気に薬剤を分解、汗として排出させた。
と同時に躊躇なくセルゲイのこめかみに一撃を入れてやる。
ゴッ!
「!!」
こめかみは人間の急所だ。ここに衝撃を与えられると脳と三半規管が揺さぶられ、しばらく起き上がれなくなる。
無様に床に崩れ落ちたセルゲイの股間に足を乗せ、俺はほほ笑んだ。
「これ、制御不能みたいだからさ。いらねえよな? 」
貴族的対応?知るか!この俺に薬を盛った時点で有罪だ。
少し力を込めればふにゃりとした感触が靴底に伝わる。気持ち悪いが仕方ねえ。セルゲイの顔が紙のように真っ白になった。まるで壊れた機械のようにぶるぶると左右に首を振る。
「俺が最強のゲイルって言われてんの知らねえのか? 最強のヒーラー、最強の医者なんだよ。薬なんて効くわけねえだろ? それとな。それだけじゃねえ。魔法も戦闘力もギルド仕込みで最強なんだ! 」
徐々に足の力を強める俺に、セルゲイは必死で懇願した。
「わ、私に好かれて迷惑だというものはいない! それにあなただけは特別なんだ!大切にするつもりだった!だから、だからあなたも私に堕ちるものと……」
「あのさ、アンタ自分が美形だとか思ってんだろ? 自分が迫った奴はみんな堕とせるとでも勘違いしてんだろ? 俺はそういうやつが一番嫌いなんだよ! 迫るなら花なんて送らずに正々堂々と俺んちに通って来い! 嫌がることをするような奴を好きになるわけねえだろ? 薬なんて論外なんだよ! 」
ダン!
足を振り上げて股間の間に落とせば、セルゲイは泡を吹いて失神した。
全くなさけねえ。色男も形無しだぜ。
それ以来、セルゲイは俺を諦めた……というわけではなく、俺のうちに酒を手土産に通ってきた。そのたびに俺は「女が好きだ」「男は対象外」だと言い続け、やがて諦めたのかようやく来なくなったのだが……。
ここで俺が男であるフィオと結婚すると公表すれば、セルゲイがまた動き出す可能性があるのだ。
王城でのお披露目で貴族連中への義理は果たすことになるだろう。てか、果たすことにする。
だから結婚式には俺の身内、サフィール家の連中と、お忍びでハルト、それと俺の病院を手伝ってくれている孤児院の子供たちと、ギルドの奴らを呼ぶつもりだ。
貴族平民入り混じるが、それは俺たちの式なんだから好きにさせてもらう。
一応、俺が聖女だとか孕めるってのは王家からの公表までは秘密。招待客には「結婚式」じゃなく「俺とフィオのお披露目パーティー」ってことにして招待状を出すことにした。
ギルド長のクリスにはなんだか世話になったような気がしなくもねえから、俺が直々に持って行ってやることにしよう。
結婚するにあたって、気になることがひとつあった。……元俺のストーカークソ男、セルゲイ・オーレン。俺と同じ爵位のオーレン伯爵家当主だ。こいつの親は反王家筆頭、権威主義のアイクリッド・フィラー公爵。グランディール家の次に高位な貴族なのだ。
フィラー公爵には二人息子がいる。
ひとりはシュバイツ。彼はいわゆるアルビノの一種で、漆黒の髪に真っ赤な瞳をもつ。その真っ赤な瞳が気持ち悪いとフィラー家には受け入れられず、劣勢遺伝子は不要だとして、魔法や魔道具を研究する魔塔の魔塔主のもとに養子にだされた。魔力が非常に多く、王国では俺の次くらいの魔力量を誇り、今では若くして魔塔の塔主だ。
俺も魔道具開発に協力したことがあり、シュバイツとはわりと親しくさせてもらっている。ちょっと言動がふんわりしているが非常に頭はいい。変わり者の気のいいヤツなのだ。
問題はもう一人のほう。劣勢遺伝子を持つ長男の代わりにと、事実上の嫡男として育てられたセルゲル・オーレンだ。奴は、廃嫡されたのに非常に優秀だった長男に歪んだ劣等感を持っていた。そしてそれをごまかすためにか、常に尊大な態度をとり自分の優位を主張する嫌な奴に育った。
幸いというべきか、不幸にもというべきか、セルゲイは非常に見目の良い男だ。波打つような金髪に紫の瞳をもつ神秘的な容姿の美丈夫。その優れた容貌と、高位貴族の嫡男という立場が、彼の横暴をまるで当たり前のように周囲に受け入れさせた。そのせいで、奴は自分が望んだものはすべて自分の手に入るものだと勘違いしていた。
多くの女や時には男と浮名を流していたセルゲイ。俺はたまたま「グランディールは参加しないから、たまには出ろ」とハルトに言われしぶしぶ参加した晩餐会で奴に目をつけられてしまった。
自慢じゃないが、俺の名はそれなりに知られている。だが、俺の名を知ってはいても、姿は知らないものも多い。特にグランディールに近いものにはかかわらないようにしていたから、同じ公爵家であったセルゲイとも会ったことはなかった。
セルゲイも俺も、実家を出てそれぞれ伯爵位にあった。俺は次男だから公爵家を継ぐことはない。伯爵家が正式な爵位になる。だが、セルゲイにとっての伯爵家は公爵家を継ぐまでの一時的な爵位にすぎない。
そのせいか、彼は同じ伯爵位であっても俺のほうを「格下」だと判断したようだ。
自信満々な顔で近づいてきて、勝手に俺の手を取ると手の甲に口付けしてきやがった。同性で対等の相手にしていいことではない。そのうえでこの俺にこうのたまったのだ。
「やあ、きみがゲイルかな? 噂にたがわずお美しい。私はフィラー公爵家が嫡男であり、オーレン伯爵家当主のセルゲイだ。私のことはルーグと呼んでくれ」
この挨拶を聞いただけでこいつはクソだと思った。そもそも、親の爵位をわざわざ口にするところがクソだ。
で、俺はクソにはクソな対応をすることにしている。
「あなたがオーレン伯爵か? すまないが、あなたの噂はろくでもないものしか聞いたことがないんだ。俺はサフィール侯爵家の次男であり、グリフィス伯爵家の当主でもある、ゲルリアス。俺のことはグリフィスと呼んでくれ」
全く同じセリフで、さらに通称で呼ぶことは拒否してやり、「大抵のことはこれで通る」という必殺の笑顔で挨拶を返す。そして、おもむろに懐からハンカチを取り出す。
「失礼」
セルゲイの目の前でヤツの唇のふれた個所を丁寧にふき取る俺に、セルゲイの顔が歪んだ。
「は、ははは! 面白い方だ! 美しいバラにはトゲがあるというが……。私はね。欲して手に入らなかったものはないのだ。モノでも……人でもね」
「それはお幸せな人生でいらっしゃる。挫折があるからこその人生なのですよ。苦みも味わってこそ、人間の深みがでる。私は人生の苦みを知りそれでも立ち上がる人間というものが好きなんです」
暗に「お前みてーな奴は好きじゃねえ」と伝えたつもりだったのだが、自信過剰なセルゲイには伝わらなかったようだ。彼は挑戦的に目をギラリと光らせた。
「では、何度でも立ち上がろうではないか。私はあなたが欲しい」
「 晩餐会に出たのは失敗だったようだ。私はモノではない。
それに私は男ですよ? 目の検査をされたほうが良いのでは? それとも脳の検査が必要でしょうか?」
「おかしなことを言う! あなたのその輝きの前には性別などささいなこと。この場は引きましょう。でも諦めませんよ、私は」
その言葉通り、伯爵家には翌朝豪華なバラの花束が届いた。恋人でもない男にバラを送る神経ってもんが俺には信じられん。せめて寄越すなら食えるものか酒を寄越すべきだ。そういう気障なところも俺がヤツを嫌いな理由のひとつだ。
連日のように花束が贈りつけられ、受け取り拒否しようがしまいが、翌日また新しいものが届く。
そんな毎日に辟易した俺は、先ぶれを出してオーレン家に直接向かった。
オーレン家につくと客間に通され、めったに流通しない珍しい茶葉の紅茶が供された。
「私の商会でもなかなか手に入れられない代物です。どうぞ。あなたのために用意させました。」
こういう恩着せがましいところがなあ。だが、紅茶に罪はない。遠慮なく頂こう。
さすがの高級茶葉。程よい苦みの後に残る果実にも似た甘みとふくよかな香り。セルゲイのところでしか買えないのなら、もうこれを飲むことはねえのか。少し残念に思う。
「オーレン伯爵。どういうおつもりですか? 誘いを断った相手に対してしつこくするのはマナー違反では? それともそこまでお相手がいらっしゃらないのか? 申し訳ないが、私の恋愛の対象は女性だ。君は論外。諦めてくれ」
すると奴は意外にも殊勝な表情を浮かべた。
「私の誘いを断ったのはあなたが初めてだ」
「それはよかった。誰にでも初めてはあるものです」
「私はね、その美しい外見はもちろん、その内から出る輝きに惹かれたのだ。激しい気性すら好ましい。あなたのすべてが欲しいのです」
熱っぽく俺の手をつかむセルゲイの目に、ゾっとした。
と、くらり、とめまいを感じる。
「ふふふ。効いてきましたか? 言ったでしょう? 欲しいものは必ず手に入れると。心配なさらなくても、あなたのことは大切に致しますよ? あなたの望みは全てかなえましょう。あなたは誰とも比べようもない唯一の人だ」
「…………何をした?」
「少々薬を入れさせていただきました。副作用もなにもないものですのでご安心を。身体が敏感になるだけですよ。最高の時間をお約束します。ああ……ようやくあなたが手に入る……」
セルゲイの顔がどんどん近づいてきた。おいおい。俺は男だぞ?
まさか薬まで使って俺を犯すつもりか? 冗談じゃねえ!
「ヒール! 」
俺は自己ヒールで一気に薬剤を分解、汗として排出させた。
と同時に躊躇なくセルゲイのこめかみに一撃を入れてやる。
ゴッ!
「!!」
こめかみは人間の急所だ。ここに衝撃を与えられると脳と三半規管が揺さぶられ、しばらく起き上がれなくなる。
無様に床に崩れ落ちたセルゲイの股間に足を乗せ、俺はほほ笑んだ。
「これ、制御不能みたいだからさ。いらねえよな? 」
貴族的対応?知るか!この俺に薬を盛った時点で有罪だ。
少し力を込めればふにゃりとした感触が靴底に伝わる。気持ち悪いが仕方ねえ。セルゲイの顔が紙のように真っ白になった。まるで壊れた機械のようにぶるぶると左右に首を振る。
「俺が最強のゲイルって言われてんの知らねえのか? 最強のヒーラー、最強の医者なんだよ。薬なんて効くわけねえだろ? それとな。それだけじゃねえ。魔法も戦闘力もギルド仕込みで最強なんだ! 」
徐々に足の力を強める俺に、セルゲイは必死で懇願した。
「わ、私に好かれて迷惑だというものはいない! それにあなただけは特別なんだ!大切にするつもりだった!だから、だからあなたも私に堕ちるものと……」
「あのさ、アンタ自分が美形だとか思ってんだろ? 自分が迫った奴はみんな堕とせるとでも勘違いしてんだろ? 俺はそういうやつが一番嫌いなんだよ! 迫るなら花なんて送らずに正々堂々と俺んちに通って来い! 嫌がることをするような奴を好きになるわけねえだろ? 薬なんて論外なんだよ! 」
ダン!
足を振り上げて股間の間に落とせば、セルゲイは泡を吹いて失神した。
全くなさけねえ。色男も形無しだぜ。
それ以来、セルゲイは俺を諦めた……というわけではなく、俺のうちに酒を手土産に通ってきた。そのたびに俺は「女が好きだ」「男は対象外」だと言い続け、やがて諦めたのかようやく来なくなったのだが……。
ここで俺が男であるフィオと結婚すると公表すれば、セルゲイがまた動き出す可能性があるのだ。
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