【完結】俺が聖女⁈いや、ねえわ!全力回避!(ゲイルの話)  ※番外編不定期更新

をち。

文字の大きさ
上 下
50 / 111
第五章 ゲイルは聖女

保護者同伴だった件

しおりを挟む
 王城へは俺とフィオで向かうつもりだった。が、がっつりと兄貴がついてきた。

「おいおい。いい歳して保護者同伴なんて勘弁してくれよ」

 渋る俺に、兄貴はこうのたまった。

「聖女だの聖獣だのの件は、サフィール家に関することだろう。当主の私が同席しなくてどうする?」
「俺の監視じゃなくてか?」
「一石二鳥なのは確かだ」
「ほらみろ!いいかげん弟離れしろよな、兄貴」
「お前こそ、もう少し兄を敬え」

 ポンポンと飛び交う悪態にフィオが目を丸くした。

「……兄弟とはこのように仲がよいものなのですね」
「……お前、俺たちの会話の中身、ちゃんと聞いてたか?」
「もちろんです。ゲイルは兄上にとても愛されているのですね」
「はあ?こっぱずかしいこと言うなよ」
「兄上もゲイルにとても愛されていますし。……とても羨ましいです」

 どうやら俺たちを茶化してるわけじゃなく本気で言っているようだ。

「あのな。フィオだって愛してるぞ?だからこうして行くんだろ?」
「ふふふ、そうですね。私も愛していますよ?」

 兄貴がため息をつく。

「……別の馬車にすればよかった。仲が良いのは結構だが、私の前では控えるように。もちろん陛下の前でもだ」
「いいじゃねえかよこれくらい。ちゅーしてるわけじゃねえんだから」
「こら!控えろと言っただろう!開き直るんじゃない!」
「俺はこれくらいでちょうどいいんだって。こいつ、ちょっと目を離すとすぐ自己肯定感無くすからさ」
「……全くお前はタチが悪い。誰に似たんだか」

 わざとらしくこぼす兄貴に、教えてやる。

「兄貴に似たんだよ」

 すると兄貴は矛先を変えやがった。

「フィオはこうなるんじゃないぞ?一人くらいは可愛い弟が欲しい」
「俺だってかわいいじゃねえか!」
「昔はな。すっかりやさぐれてしまって……」
「私が……弟……ですか?」
「ゲイルと添い遂げるのだろう?ならば弟だろう。妻もそのつもりでいるぞ。うちのものはみなそのつもりだが」
「……迷惑ではありませんか?」
「君は私が思っていたグランディールとは違ったからな。君ならば歓迎だ。嫌でなければ私のことは兄と思ってほしい。どうだ?」
「嫌ではありません!嬉しいです!……とても、嬉しいです」
「そうか。ただし、それ以上ゲイルに似るなよ?こいつはタチの悪い男だからな。素直なフィオのままでいてくれ」
「俺だって素直じゃねえか。なあ。フィオ?」
「そうですね。ゲイルはとても素直で伸びやかな方だと思います」
「ほおらな?兄貴、実の弟をなんだとおもってやがるんだ」
「かわいい弟だ」

 思わぬまじめな答えに言葉を失う。
 すると兄貴は真面目な顔でもう一度言った。

「かわいい弟だと思っているぞ。いくつになってもな。だから……陛下の前では無礼な物言いを改めろ。たとえ親しくとも、だ。かわいい弟たちの未来がかかっているのだ。妥協するつもりはないぞ。慎重に慎重を期すように」

 こういうところだ。兄貴には敵わないと思うのは。いくつになっても、俺がどれだけ力をつけても兄貴には敵わない。

「わかってるよ。…………いつもありがとう。兄貴」

 フィオも横で黙って頭を下げている。
 うん。俺の兄貴、すげえだろ?これからはお前の兄貴でもあるんだぜ?

 向かいの席から兄貴が手を伸ばしてきた。俺とフィオの頭を犬にでもするかのように無造作に撫でる。
 あーあ。「ゲイル」も「冷血宰相」も兄貴の前じゃ形無しだ!




 王城についた俺たちは控えの間に。ここで先ぶれの返事を待つのだ。
 それほど待たぬうちに、遣いが俺たちを呼びに来た。

「宰相閣下。サフィール侯爵さま。グリフィス伯爵さま。陛下がお待ちです。どうぞこちらに」

 さあ。始めようか!





「フィオネル、サフィール侯、ゲイル、よう来たな」

 ようブリュクハルト!スマンが俺はこれから爆弾を落とすぜ?覚悟してくれ。

「陛下、先ぶれを出しは致しましたが、お約束がないにも関わらず御前に立つご無礼をお許しください」
「よい。それだけ重要なことなのだろう。許そう」
「感謝いたします。失礼を重ね申し訳ないのですが……少し込み入った話になりますので……」
「では、人払いをしよう」

 ブリュクハルトはそう言ってこっそり俺にウインクし、人払いをしてくれた。

「ありがとう!ああ、これで楽に話せる」
「ははは!今日は一体どうしたのだ?わざわざ先ぶれを寄越すから驚いたぞ。何があった?して、なぜ宰相と一緒におるのだ?」
「ああ。そのことで話があるんだ」

 俺はフィオを呼んだ。

「フィオ、いいか?」

 俺の「フィオ」呼びとそれに素直に頷くフィオを見てブリュクハルトが目を丸くする。

「おぬしらそのように仲が良かったか?ゲイルはグランディールを避けておったのではなかったか?」
「まあな。いろいろ事情があってな。その事情を話すために来たんだ」

 ここで俺は、まず聖獣について触れた。

「サフィール家に聖獣の守護があるというのは知っているな?」
「ああ。そう言われておる。有名な話ではないか」

 兄貴がその詳細を説明する。

「サフィール家の先祖が聖獣を助けたことがあるからだと伝えられておりました。しかし、それだけではなかったのです。ゲイル、頼めるか?」
「ああ。……陛下、あとは本人から直接話を聞いてほしい。驚くなよ?」

「ルー!来てもらえるか?うちの国の王を紹介したいんだ」



しおりを挟む
感想 107

あなたにおすすめの小説

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

処理中です...