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混乱困惑大混雑
俺たちのこれから
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なんだか良い感じになってしまったが、いや待て、よく考えろ。
心地よい木漏れ日の中、手に手を取り合う男が2人…
絵面が酷い。
「おい!ボルゾイ!
分かったから、いい加減手を離せ!」
「……放し難くて…。私に手を取られるのは嫌ですか?」
「い、いや、別に嫌ってわけじゃねえけど…」
そういう風な言い方はズルイだろうが!
てか、こいつってこんな奴だっけ?
もっとこう…俺のあとを尻尾振って付いてくるような…
いや今も見えないはずの伏せられたわんこ耳が見えるわ。
うーん…なんか……なんか…
「ねえ、お兄様?わんこさん?
あのね。仲が良いのはいいのだけれど、私のことを忘れてないかしら?」
ぎゃああああ!!
「は、放せ!」
俺は慌ててボイルドから手を取り戻した。
「エ、エリアナ!忘れてたわけじゃねえぞ?
あ!飯は食ったか?
皿に並べておいたんだが…」
「もう!いまさら慌てないでちょうだいな!
ほら。お食事はちゃんと並んでいますから。
私は先にいただいたわ。
ボルゾイさんも誘ったんですけど、彼はまだよ。
この方ったら、お兄様に夢中なんですもの。
飼い主が食べるまでは食事に手を付けない忠犬みたいね」
呆れたように言うエリアナに、俺たちは黙って頭を下げた。
いや、俺のわんこがマジですまん。
「さあ。ゲイルお兄様の面白いお顔も見れたことだし。
私はそろそろ退散しようかしら?
あなた方はお食事がまだでしょう?
2人でゆっくりしたらどう?」
「え?お前もゆっくりしていけよ。久しぶりなんだし」
俺が言えば、エリアナは眉をくいっと引き上げる。
「まあ!お兄様ったら、いつまで私を当て馬にしておくおつもり?
いい加減観念してお2人で話し合いなさい!私を巻き込まないで!
あと、今日の貸しは高くつきますからね?」
当て馬という身も蓋もないもの言いに俺は心底情けなくなった。
言われてみればその通りだ。
全く俺ってやつは…!!
自省の念にかられていれば、何故かボルゾイがエリアナに頭を下げた。
「申し訳ない。
後日改めてお礼をさせていただきます」
俺も慌てて謝罪する。
「すまん。そんなつもりで呼んだんじゃないんだ。
エリアナは自慢の姪だから、エリアナなら、と思って…」
「ボルゾイさんを押し付けようと思ったのね?」
「………すまん………」
「もういいわ。ゲイルには色々お世話になっているしね」
エリアナはそう言って立ち上がり、パンパンとスカートをはたいた。
「じゃあ、私、先に帰るわね」
「いや、お前馬に…」
乗れないだろ、という前にひらりと馬にまたがりさっそうと手綱を握って見せるエリアナ。
「え?!」
「驚いた?もう子供じゃないのよ!
ゲイルのお陰ですっかり健康なんですから。馬ぐらい乗れるわよ!
じゃあね!」
あっという間に駆けていく背中を俺は呆然と見送ったのだった。
「………エリアナ、すげえだろ?」
「ええ。本当に素晴らしい女性ですね。
さすがゲイルの姪御さんなだけはある」
「俺、もうこれからあらゆる意味であいつには頭が上がらねえわ…」
「ふふ。私も……また一人恩人が増えてしまいました」
「恩人?」
「ゲイルと、エリアナさんですよ。
ゲイルが居なければ今の私は居ません。
エリアナさんが居なければ大切な人を失うところでした」
ぎゅっと後ろから抱きしめられた。
「お、おい!」
「………黙って。大丈夫。誰も見ていませんから。
少しでいいのです。少しだけ…こうしていてもいいですか?」
俺が本気で嫌がればこいつは離れるのだろう。
こんなに…上着越しにも伝わるくらいに胸を高鳴らせているくせに。
俺はふっと肩の力を抜き、ため息をついた。
「……ちょっとだけだぞ?
飯もまだなんだからな。
10数えたら、飯にするぞ」
耳元で漏らされる熱い吐息。
「………60秒」
「30秒」
「では50秒」
「40秒……って、こう言ってるうちに時間がたってんじゃねえか!」
「バレましたか?」
くすくすと笑うボルゾイ。
「…お前もこんな冗談を言うんだな」
「実は…少し浮かれているんです。
………ゲイルが私の腕の中にいてくれるので」
ああああ!!もう!!!もう!!!!
ぎゅーんと何かがこみあげてきた俺は、ぐるりと向きを変えぎゅうっとボイルドを抱きしめてやった。
「おまえなあ!あんまりかわいいことを言うな!
可愛すぎるだろうがよ!!」
「…出会った頃からすると…かなり大きくなってしまいましたが…。
それでもまだあなたの『かわいいわんこ』にしてくれるのですか?」
「まあ、俺よりデカイのは正直悔しいが…。
俺が育てたって思えば嬉しくもあるんだ」
ペタペタと身体に触れてみると、あの細く折れそうだった身体にしっかりと筋肉がついている。
お?おお?!
コイツ、腹にしっかりと割れ目作ってんじゃねえかよ!
む!ひとつふたつみっつ…6つがっつりと割ってやがる!くそう!
俺より割れてるじゃねえかよ!!
夢中になってペタペタしていたら、その腕をギュウっと掴まれてしまった。
「おい!まだ調べてんだろ!」
「………無理です」
「はあ?!」
イラっとして見上げれば、ボイルドの顔は真っ赤に染まっていた。
あ。
やっちまった。
俺は慌てて触るのをやめ、謝罪した。
「あの…いや……マジですまん」
心地よい木漏れ日の中、手に手を取り合う男が2人…
絵面が酷い。
「おい!ボルゾイ!
分かったから、いい加減手を離せ!」
「……放し難くて…。私に手を取られるのは嫌ですか?」
「い、いや、別に嫌ってわけじゃねえけど…」
そういう風な言い方はズルイだろうが!
てか、こいつってこんな奴だっけ?
もっとこう…俺のあとを尻尾振って付いてくるような…
いや今も見えないはずの伏せられたわんこ耳が見えるわ。
うーん…なんか……なんか…
「ねえ、お兄様?わんこさん?
あのね。仲が良いのはいいのだけれど、私のことを忘れてないかしら?」
ぎゃああああ!!
「は、放せ!」
俺は慌ててボイルドから手を取り戻した。
「エ、エリアナ!忘れてたわけじゃねえぞ?
あ!飯は食ったか?
皿に並べておいたんだが…」
「もう!いまさら慌てないでちょうだいな!
ほら。お食事はちゃんと並んでいますから。
私は先にいただいたわ。
ボルゾイさんも誘ったんですけど、彼はまだよ。
この方ったら、お兄様に夢中なんですもの。
飼い主が食べるまでは食事に手を付けない忠犬みたいね」
呆れたように言うエリアナに、俺たちは黙って頭を下げた。
いや、俺のわんこがマジですまん。
「さあ。ゲイルお兄様の面白いお顔も見れたことだし。
私はそろそろ退散しようかしら?
あなた方はお食事がまだでしょう?
2人でゆっくりしたらどう?」
「え?お前もゆっくりしていけよ。久しぶりなんだし」
俺が言えば、エリアナは眉をくいっと引き上げる。
「まあ!お兄様ったら、いつまで私を当て馬にしておくおつもり?
いい加減観念してお2人で話し合いなさい!私を巻き込まないで!
あと、今日の貸しは高くつきますからね?」
当て馬という身も蓋もないもの言いに俺は心底情けなくなった。
言われてみればその通りだ。
全く俺ってやつは…!!
自省の念にかられていれば、何故かボルゾイがエリアナに頭を下げた。
「申し訳ない。
後日改めてお礼をさせていただきます」
俺も慌てて謝罪する。
「すまん。そんなつもりで呼んだんじゃないんだ。
エリアナは自慢の姪だから、エリアナなら、と思って…」
「ボルゾイさんを押し付けようと思ったのね?」
「………すまん………」
「もういいわ。ゲイルには色々お世話になっているしね」
エリアナはそう言って立ち上がり、パンパンとスカートをはたいた。
「じゃあ、私、先に帰るわね」
「いや、お前馬に…」
乗れないだろ、という前にひらりと馬にまたがりさっそうと手綱を握って見せるエリアナ。
「え?!」
「驚いた?もう子供じゃないのよ!
ゲイルのお陰ですっかり健康なんですから。馬ぐらい乗れるわよ!
じゃあね!」
あっという間に駆けていく背中を俺は呆然と見送ったのだった。
「………エリアナ、すげえだろ?」
「ええ。本当に素晴らしい女性ですね。
さすがゲイルの姪御さんなだけはある」
「俺、もうこれからあらゆる意味であいつには頭が上がらねえわ…」
「ふふ。私も……また一人恩人が増えてしまいました」
「恩人?」
「ゲイルと、エリアナさんですよ。
ゲイルが居なければ今の私は居ません。
エリアナさんが居なければ大切な人を失うところでした」
ぎゅっと後ろから抱きしめられた。
「お、おい!」
「………黙って。大丈夫。誰も見ていませんから。
少しでいいのです。少しだけ…こうしていてもいいですか?」
俺が本気で嫌がればこいつは離れるのだろう。
こんなに…上着越しにも伝わるくらいに胸を高鳴らせているくせに。
俺はふっと肩の力を抜き、ため息をついた。
「……ちょっとだけだぞ?
飯もまだなんだからな。
10数えたら、飯にするぞ」
耳元で漏らされる熱い吐息。
「………60秒」
「30秒」
「では50秒」
「40秒……って、こう言ってるうちに時間がたってんじゃねえか!」
「バレましたか?」
くすくすと笑うボルゾイ。
「…お前もこんな冗談を言うんだな」
「実は…少し浮かれているんです。
………ゲイルが私の腕の中にいてくれるので」
ああああ!!もう!!!もう!!!!
ぎゅーんと何かがこみあげてきた俺は、ぐるりと向きを変えぎゅうっとボイルドを抱きしめてやった。
「おまえなあ!あんまりかわいいことを言うな!
可愛すぎるだろうがよ!!」
「…出会った頃からすると…かなり大きくなってしまいましたが…。
それでもまだあなたの『かわいいわんこ』にしてくれるのですか?」
「まあ、俺よりデカイのは正直悔しいが…。
俺が育てたって思えば嬉しくもあるんだ」
ペタペタと身体に触れてみると、あの細く折れそうだった身体にしっかりと筋肉がついている。
お?おお?!
コイツ、腹にしっかりと割れ目作ってんじゃねえかよ!
む!ひとつふたつみっつ…6つがっつりと割ってやがる!くそう!
俺より割れてるじゃねえかよ!!
夢中になってペタペタしていたら、その腕をギュウっと掴まれてしまった。
「おい!まだ調べてんだろ!」
「………無理です」
「はあ?!」
イラっとして見上げれば、ボイルドの顔は真っ赤に染まっていた。
あ。
やっちまった。
俺は慌てて触るのをやめ、謝罪した。
「あの…いや……マジですまん」
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