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飼い犬が牙を剥きました

ため息の数だけ幸せが逃げるって?上等だ!

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はあ…。

俺は机に伏せながら何度目かのため息を漏らした。

あー。ついに明日か…。
シェフにもピクニック用の料理を頼んだし、この調子なら天気も問題ない。
絶好のピクニック日和だ。

領地の森に子ウサギが生まれたっていうから、それを見に行ってみるか?
湖で釣りをして採れたての魚を……
楽しそうじゃねえか!

はあ………。



「おい」


きっと2人は気が合うはずだ。
なんてったって俺が見込んだ2人なのだ。


「おい!」
「なんだよ!」

思考を遮られ俺は、不機嫌なのを隠そうともせずにギルド長を睨んだ。

「なんだよはこっちのセリフだ!
さっきから辛気臭えため息ばかりつきやがって!
そんなに嫌ならやめたらいいじゃねえか!」
「はあ?嫌じゃねえし!むしろ俺が望んでのことだし!」

机に伏せたまま言ってやれば、ギルド長がフンと鼻を鳴らす。

「聞いて呆れるぜ!
じゃあなんでそんな顔してため息ついてんだよ」
「ああん?どんな顔だよ?
このサフィールの美の結晶と言われた俺に言ってんのか?」
「おごりやがって!鏡見せてやろうか?
萎れた草みてえになってんぞ?」
「ふん。毎朝見てるっつーの!
ぴっかぴかのご尊顔だわ!」

はあ…。



くしゃ。
らしくもなく優しく頭に触れる手。

「なあ…。
マジで後悔することになるぞ?
今ならまだ間に合う。
………やめておけ」

その声音がことのほか真面目て真摯なものだったから。
俺はつい零しちまった。

「それができればこうなってねえってえの!
……俺はさあ。ずっとグランディールを避けてきたんだよ。
それなのに、なんでこんなことになっちまったんだろうなあ…。
なあ、血にかけられた呪いとかってあると思うか?」
「うーん。呪いか。
呪術があるんだからあるんだろうなあ。
だが、お前のはそうじゃねえと思うぞ?」
「なんだよ」
「単なる初恋だろ」

許容しがたい言葉に、俺はガバリと身を起こした。

「はあ?!」

「違うのか?
お前らのやってること、付き合いたての初々しいカップルそのものじゃねえか。
少なくともギルドではお前らはそう認識されてるぞ?」

がーん!

バタリと机に倒れ込む。

「…………マジかあ………」
「マジだな」

そいつは恥ずかしい。
穴があったら入りたい。

「俺ら、単にギルドでイチャつくカップルだと思われてたってことか?」
「まあ、そうだな。ボルゾイは狭量な彼氏ってやつだ」
「俺が女役なのかよ!俺の方が年上だぞ!」
「お前、本気で言ってんのか?どう見たってお前が女役だろうが!
お前がボルゾイ押し倒せるとでも思ってんのか?
ボルゾイだぞ?」

脳内で想像してみた。
確かにボルゾイは可愛い。
だが俺よりも15センチ以上身長があり(俺が低いんじゃない。ボルゾイがでかすぎなんだ!)ガタイのいい男を……

「………無理だな」
「だろ?」

どういう意味だよ!
ドヤ顔のギルド長の腹に一発くれてやった。

「だからって俺が押し倒されるのも嫌だ!

それに……俺は良くてもあいつは後継ぎを残さなきゃならんだろ?
どのみち無理なんだよ」

「そうか…。
まあ、お前が納得してるんなら、俺は何も言わん。
何かあれば相談にのるぞ?」
「はは。まあそんときは頼む」

有難いお言葉に俺は右手を軽く振ることで答えたのだった。


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