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一路王国へ!
さようなら帝国
しおりを挟むこうして俺たちの帝国訪問は終わった。
「サフィ……本当に……本当にありがとう。サフィと出会わなければどうなっていたか……。感謝する。私にできることがあればいつでも声をかけてくれ」
「王国の助力に感謝する。帝国はこの恩を忘れぬぞ。関税も撤廃すると約束しよう。今後は王国とよりよい関係を築いていけたらと思っておる。よろしく頼む」
「王国の皆様、本当にありがとうございました。息子のわがままに突き合わせてしまってごめんなさいね。お陰でこの国は救われました。おかげで私も回復し、ナージャと共に過ごす未来を手にすることができました。本当にありがとう」
そして聖女様は最後に俺の手をぎゅっと握っていった。
「母親にとっては子が元気で幸せでいてくれることが何よりの喜びなの。子供を守るためになら自分の命など惜しくはないの。サフィちゃんのお母様も、きっと私と同じ。サフィちゃんが元気に生まれたことを、こんなに素晴らしい子に育ったことを喜んでいらっしゃるはずよ。こんなに素敵なお子さんを生んでくださったサフィちゃんのお母様に、私からも感謝を」
そしてふんわりと俺の身体を抱きしめた。
「生まれてくれてありがとう。ナージャを、私を助けてくれてありがとう」
ぽろぽろぽろっと涙がこぼれた。
俺はもう一組のお母様と自分を助けることができたんだ。
まるでエリアナお母様と幼い自分が救われたみたいな気がした。
「……幸せになってね。ナージャと、王様と、家族で幸せになってね」
「ええ。サフィちゃんも、ゲイル様とお幸せに。とても良いお父様ね?」
「うん。ゲイルは最高のお父様なんだよ!」
いつの間にか傍に来てくれたゲイルが俺を抱き上げた。
「サフィは最高の息子なんだ」
お兄様とミカミカ、キースやリオ、オルガ団長さんが「良かったなあ!」「本当に良かった」と鼻をすすっている。
結果的には王国の利益になったけど、もとはといえば俺のわがままに付き合って何も言わずにここまで付いて来てくれた、大切な人たち。
「それにね、聖女様。ほら、俺には最高の仲間もおりますのでね。どんなときも幸せなのです!」
ちなみに側妃様は公国に送り返し、慰謝料をぶんどることに。
アウトな人たちなんだけど…。
爵位降格、罰金となりました。それ以上の処分はなし。
宰相さんは爵位も地位も剥奪の上で、監視付きでこき使うのだそう。
王様は沙汰を言い渡す前に、頭を下げたんだって。
「私が腑抜けたばかりに叛意を抱かせる事となった。すまぬ。これからは王妃とナージャと共に新しい帝国を目指す。商業の力で国を豊かにし、国民を幸せにすると誓おう」
「しかし、処罰はせねばならぬ。爵位降格、罰金を言い渡す。その罰金は新たな事業に役立てるつもりだ。
皆、改めて頼む。再び我に力を貸して欲しい」
これにはさすがに皆言葉を失った。
だって、反逆企てたのに、謝罪されたんだもん。また力を貸せっていうんだもん。
なんか、凄い。
俺もこれを聞いて、帝国が脳筋なのにここまで大きくなった理由が分かった気がした。この王様、懐がデカいんだ。
こんな信頼を見せられたら、そりゃ熱くなるよ。頑張っちゃうよね。
元々は王様絶対だった国。アウトな人も一斉に王の前にひざまづき再度忠誠を誓ったのだそうな。
なんか帝国、前よりがっちり固まったんじゃない?
さあ、俺たちは王国に帰りましょう!
みんな待ってる!
学園にも行きたいし。みんなきっと心配してるよね。
「それでは皆さま、さようならです!またお会いしましょー!」
さらばさらば帝国!
帰りにもまたイカ獲れたらいいなあ。
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