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聖女を救え!

はじめまして聖女様!

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 俺たちの訪国前にナージャからある程度話は伝えてあったようで、屋敷に到着するとすぐに中に通された。

 扉を開けたそこにいたのは……巨大なトラ!
 いきなり3メートルくらいのトラがお座りして待っていたもんだから、ゲイルはすかさず俺とリオを背に庇い、キースは剣を構えて前に飛び出した。

 するとナージャが慌てたように叫んだ。

「待って待って待って!彼は私の聖獣だ!」
「よく来たな!俺はガリウスだ!この国を守護している」
「はあああああ?」

 なんでこんなとこにいるの?!

 話を聞けば、この屋敷には、聖女様のお世話係数名を残し、人払いしてあるそうな。その代わりにナージャの聖獣さんが見張っていたのだそう。

「うむ。フェンリルの聖女は2人か。さすがに……凄い力だ。残念だが、俺の力はパワー増強。力に特化している。癒しの力はないのだ。俺では聖女を助けられん。まだ次代聖女も幼い。他国の聖女に言うことではないが……それでも、頼む、力を貸してくれ」

 ゲイルに下ろしてもらった俺は、そおっとガリウスに手を伸ばす。
 するとガリウスは俺の手に鼻を押し付けてきた。

「ガリウス安心して。モフモフは正義だから」

「ん?」

「モフモフの頼みを断るなど言語道断!ナージャのお母様だし、もちろん力を貸しまするぞ!」
「サフィ、言い方!」
「それだと、ナージャのお母様だからじゃなくって、モフモフのお願いだから、になっちゃうよ」

 ゲイルとリオがつっこんだ。

「ナージャのお母様だから助けるけど、モフモフは正義」

 キースがとても爽やかな笑顔で纏めてくれた。

「王国としても、ぜひ聖女様をお助けしたいと思っております」





 聖女様のお部屋は一番奥。
 風とおしのよい、暖かなお部屋なのだそう。

 大きな扉を前に深呼吸。いよいよい聖女様にご対面だ。

「母上。ナージャが参りました。王国から来てくれた私の友も一緒です。ご挨拶をしたいとのことなのですが、よろしいでしょうか?」

「ええ、どうぞ」

 穏やかな声が聞こえた。


 そこは16畳ほどの広さのお部屋。
 窓際にベッドがあり、線の細い女性がベッドヘッドを背に半身を起こしていた。
 なんというか……とてもきれいな人だ。
 腰まであルサラサラのストレートヘアはシルバーグレー。小作りな顔には金の瞳が。
 ナージャはオレンジの髪に金の瞳というまるで獅子のような容姿なんだけど、その金の瞳はお母様譲りだったみたい。

 たしかに弱っているのだろう。全体的に痩せていて、顔色も良くない。だけど、その瞳の輝きはまだ失っていなかった。今も好奇心をたたえてキラキラと輝いている。

「サフィ。母だ」

「このような姿で申し訳ございません。王国の方ですね。私はジンジャー・ベルクリフト。ナージャの母です。息子が大変お世話になったそうですね。ありがとうございます」

「お会い出来て光栄です。王国でナージャ殿下とご一緒させて頂きました、サフィラス・グリフィスと申します。隣は生徒会長のリオネル、僕のお父様のゲイル、護衛のS級冒険者キースです」
「グランディール公爵が次男、リオネル・グランディールと申します。殿下とはサフィを通じて知り合い、親しくさせて頂いておりました」
「まあ、会長さん?ナージャが迷惑をかけていないと良いのだけれど」
「大丈夫ですよ」

迷惑かけていないとは言わず、リオは苦笑した。
ここでさりげにゲイルもご挨拶。

「グリフィス伯爵家当主、ゲルリアス・グリフィスと申します。突然の訪問をお許しくださり、感謝いたします。どうか、ゲイルとお呼びください」

当たり前のように聖女様の手を取り手の甲にエアキス。

「遠路はるばるお越しいただきありがとうございます。ナージャがご無理を言ったのではないかしら?」

 ユーモアに満ちた声音に、ゲイルは軽やかな笑い声をあげた。

「ご家族想いの大変素晴らしいお子様ですね」
「うふふ。ありがとう。サフィラス様もとてもお可愛らしいわね。それにお二人ともとても美しい空気を身に纏っていらっしゃるのね」
「ありがとうございます」
「そちらの方が…」
「キースと申します」
「キース、あなた、冒険者と言われたかしら?」
「はい」
「そう。今は冒険者なの…。冒険者はとてもあなたに合っているようね。笑えるようになったのね。良かったわ」

え?まさかの知り合い?








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