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聖女を救え!

ついに本題!

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全員のご紹介が終わったところで、ナージャ殿下がさりげなあく王様にオネダリ。

「父上。サフィが母上にぜひ会いたいというのですが、許可を頂けますでしょうか?」

側妃と宰相がピクリと反応した。そこで俺はすかさずナージャを援護。

「口を開いてもよろしいでしょうか?」
「うむ。許可しよう」
「実は……私には母がおりません。伯爵は私の本当の父ではないのです。母上は私を産む際に……。お恥ずかしいのですが、そのため実の父とは折り合いが悪く、色々ございまして……親族である伯爵の息子となったのです」

ここでわざとらしく俯いて見せる。
ゲイルはそんな俺をそっと抱きしめ、耳元で小さく「やりすぎだぞ。サフィ大丈夫か?」とささやいた。もう俺にとっては過去のことだから言えるんだよ。大丈夫。
嘘の中に真実を。それが話を信じさせるコツだから。
エリアナお母様、ごめんね。お友達のお母様を助けるために、利用させてね。

「おお……」「なんと!」

同情の声が集まるのを待ち、切なげな笑みを浮かべて見せた。

「殿下はよくお母様のことをお話して下さいました。私はそんなナージャ殿下のお話に出る『お母様』がとても羨ましくて……。お母様というのはそのように素晴らしく優しい存在なのかと、憧れを抱いておりました。それで……ご病気だと伺ったので心配で……。私が言うのもなんですが、父は非常に高名な医者なのです。父のヒールは王国でも歴代最強だといわれております。医師としての腕も確かで王宮でもご信頼を頂いております。どうか、どうか父にナージャ殿下のお母様を診させてはいただけないでしょうか?」

すかさずナージャも頭を下げる。

「父上!私からもお願いいたします!これはまたとないチャンスです!ゲルリアス様のご高名は他国にまで届いております。私もサフィラスと知り合う前から存じ上げておりました。お忙しい方ゆえ、めったに他国にはでられません。その伯爵の力を貸していただけるのであれば……!」

そこで団長ズが参戦した。

「王よ!我々からもぜひお頼みしたい!道中、運悪くクラーケンの襲撃にあい、撃退は致しましたが負傷したものも多く。伯爵に船中で治療していただいたのです。素晴らしいお力には驚かされました。聖女様は我々の希望なのです。ご病気ならば、ぜひとも治療願いたい!」

うわ!フィガロ団長もうまいこと真実に嘘をぶちこみましたなあ!
リアム団長も負けてはいない。

「軍にとっては、聖女様のご病気は死活問題なのです。みな、聖女様がここ数年お姿を現さないことに不安を感じております。またとない機会ではありませぬか!どうか、この機会にぜひ!」

劣勢を察して宰相が口を開こうとした。そのタイミングで、ゲイルが大げさに驚いて見せる。

「なんと!王妃様は聖女様でございましたか!聖女様は国の宝です。民の希望です。大変ご心配なことでしょう。ナージャ殿下は息子のご学友でもあります。ぜひお力になれたらと思うのですが…。レオンハルト殿下、よろしいでしょうか?」
「そうだね。そのような事情であれば、ぜひとも協力させて頂こうではないか。私の大切な婚約者の願いでもあるしね。ゲルリアス伯爵、私のことはよいから全力で当たってくれ。カージャ王、ゲルリアス伯爵は王国でも随一の腕を誇り、王である父上も母上も、もちろんこの私も何度も伯爵に救われております。非常に信頼できる医師ですので、ご安心ください」

「王国の王族のお墨付き」が協力するといったら、なかなか断れないよねー。

「あ、あの!陛下」

すると今度は焦ったように側妃が口を開こうとしたので、今度は俺が聞こえぬふりで声を上げた。

「やったー!ナージャ殿下!よかったです!僕、僕、殿下のことが心配で……。母を失う辛さはよく分かるから。せめて殿下のお母様だけでもお助けできればって……」

エリアナお母様のことを思い出してほんとに涙がでちゃった。
するとナージャ殿下が目に涙を浮かべながら俺のところに走ってきて俺の両手をしっかりと握りしめた。

「サフィ!我が友!ありがとう。君の気持ちが嬉しいよ」
「ナージャ!」

ついにここまで来たよ。これは本当の気持ち。良かったね、ナージャ。絶対に絶対に治して見せるからね。
最後まで気は抜けない。

俺はここでハッとしたように目を見開く。

「ご、ごめんなさい、我を忘れてしまって……。ご無礼を……っお許しください……っ」

しゃくりあげながら慌てて王様に頭を下げる。
広間のあちこちから鼻をすする音がした。

リオとナージャが両側で俺をそっと支えてくれる。リオの目にも少し涙が光っていた。リオ、思い出させてごめんね。利用してごめん。だけど、効果あったでしょ?だから許してね。

どう?王様。この状況なら断れないよね?おぜん立てはしたよ。後は王様が乗っかるだけだよ。ねえ、王様。
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