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聖女を救え!

いざ王宮!

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ナージャと騎士団長が馬で先導し、その後ろに王国勢を乗せた馬車、その左右と後ろに馬に乗った陸軍の皆さん、という形でぞろぞろと王国からの外交使節団は帝国を移動。港町からは王城までは馬なら1時間半程度。馬車なら2時間くらいなんだって。
ほとんどの使節団は船でというだけあり、港から王都までの道はきちんと整備されていた。途中の街も観光などで栄えているそうな。
やっぱり外国なだけあって、建物の造りとか素材とかが王国とは違う。王国の建物は三角屋根とかのレンガや石造りの家が多いんだけど、帝国は……モルタルっぽい白い建物が多い。壁に貝殻とかを埋め込んで飾りにしていたりして、それが日の光に反射しキラキラしている。

「おお。港にはいろいろな建物があったけど、奥に入ると異国って感じするねー!」

そして、帝国人はやっぱりマッチョ。子供ですら、もう骨からして太い感じ。こうしてみると、体格って遺伝によるものが大きいのかもね。(俺は絶対にゲイルからの遺伝をもらっているはず。血がつながってるんだし。美人系エリアスとかエリアナお母様じゃなくて、絶対にカッコいいゲイルの遺伝!)
ナージャも将来は細マッチョになったりするんだろうか。想像してひとりでくふふと笑う。

一応外交として来ているのだからと、帝国の人と交流すべく窓越しに街の人に「こんにちはー」「よろしくー」とにこにこと手を振ってみた。
そうしたらみんな気さくに「こんにちわー!」と手を振り返してくれたり、笑顔を返してくれる。
衰退しつつあるって聞いたから心配してたんだけど、街の人とかはそれなりに満足して暮らしてる感じ。よきよき。
軍隊とか戦闘に関連した事業とかで徐々に衰退がはじまっているだけで、建築だとかモノづくりだとかそういった伝統技術的なものはきちんと機能しているんだろうね。

これならまだ十分間に合うよ。きっと。



せっかくなので、帝国の人に王国のいいものを見せてあげようと、俺はゲイルとお兄様をぎゅうっと両手で捕まえて、窓に押し付けた。

「こっちは俺のお父様ゲイル!かっこいいでしょー!」
「……なんか昔もこんなことあったな……」
「こっちは王国のレオン殿下!キレイでしょー!」
「ゲイルはかっこよくて私はキレイなのか……」
「ふたりとも、にっこりにこにこ!手を振って!」

二人がほほ笑んだら街道から「キャー!」だの「ギャー」だの可愛らしかったり野太かったりな悲鳴が。

うんうん。俺の自慢の二人なんだから。王国のお宝。

あ、こっちも見せてあげよう!
今度はキースをグイっと。

「あのねー!なんとS級冒険者のキース!ドラゴン倒した人ー!」

今度は「おおーーー!!」これは軍の皆さんの声も混じっている。


オルガ団長とリオ、ミカミカにも反対の窓から手を振って貰った。
カッコいい、かわいい、美しいが揃って抜かりなし!

王国についてかなりないい感じを印象付けたのでは?俺ってば凄い!





王宮についた時には、何人かの街の人も付いてきてた。
俺とゲイルには悪意ある人は近寄れない特性があるから、せっかくなのでふたりでご挨拶。
お兄様たちは普通に危ないので、馬車で待機です。

「王国から文化交流に来ましたー。冒険者のサフィです。あのね、最強の冒険者なの!」

宣言したら「かわいいのに偉いわあ!」だの「凄いなあ、坊ちゃん!」だの拍手してくれたんだけど、絶対にこれ信じてない。
俺はちょっとお茶目心を出して、「スノー」と目の前に小さな雪を降らして見せてあげた。
それを風を起こしてひらひらとみんなの上に舞わせて見せる。

「うわあああ!」
「え?これって、魔法?!」
「ぼっちゃんがやったのか?すげえじゃねえか!」
「あはははは!きれーい!冷たい!」

うんうん。喜んでくれて何より何より。

「ね?信じてくれた?これはちっちゃな魔法なの。王国の貴族はみんな魔法が使えるんだよー」
「そんな凄いところから何をしに帝国に?」
あのね、帝国の凄いお道具を作る技術とか、カッコいい剣術とか、素晴らしい芸術作品だとかを学びたいと思ってこちらに来たのです。帝国の技術や文化はすごいって有名ですのでね!」
「おお!分かってんなあ!そうなんだよ、代々受け継いだ道具作りの技術には自信があるんだ!」
「それぞれ秘伝のやり方があったりするんだぜ。まあ、教えてやれねえがな」「秘伝だからな!」
「そういうのって、いいよね!なんか、最高にカッコいい!」
「そうかそうか!いやあ、坊主、いい子だなあ!帰りに寄れたらガルボの店に寄ってくれ。工房を見せてやるよ」
「秘伝とは?!」
「ははは!ちょっと見せたところでそう簡単には盗めやしねえよw」

ゲイルはゲイルで囲まれていた。
必死で子供を負ぶって走ってきた叔父さんが、汗だくでゲイルにすがる。

「噂で高名なお医者さんが来ると聞いたのですが……」
「ああ、俺かな?」
「実は、息子がもうずっと寝込んでいるのです。一日中咳き込んでいて、夜になると息が苦しくなり眠れません。どんな薬も効かなくて……」

背負った子はぐったりとしている。

「その子か?」

ゲイルはそおっとその子の顔を覗き込む。
背中に耳を当てて胸の音を聞いて……

うん、と頷いた。

「毎年この時期になると同じような症状が出ていないか?呼吸がゼイゼイいっているだろう?」
「そうです!毎年数か月ぐったりと苦しんでいます!そうなんです。おかしな音がします!」
「おそらく……喘息という病だな。息をするときに空気が通る部分が、狭まってしまっているんだ」

馬車に行ってかばんをあさり、何かの薬草を持って戻ってくる。

「これは気管支を拡張する作用のある薬草だ。ミームという。コップ3杯分の水でよく煎じて飲ませてみてくれ。一日3回、3匙飲ませるといい。足りなくなったら、薬局でミームと言って取り寄せてもらうといい」

こんな感じで数人に薬草を手渡していた。

みんな口々に「ありがとうございます!」「ああ!王国から救いの神がいらした!」と叫んでいる。
帝国の全員を治療することはできないけど、せめて必死にここにやってきた人だけでも。

俺もこっそり、ふらついているひとにちょびっとヒール。
足が痛そうなおじいさんにもミニヒール。
せっかくの出会いだもの、よきものになりますように。



ちょっとご挨拶のつもりが、みんなにバイバイして馬車に乗ったときには30分くらいたってた。

「ごめんね?」

と謝罪しながら乗り込むと、みんなすごく優しい表情。

「いや、サフィらしいよ。私はサフィとゲイルを誇りに思う。サフィたちのしたこと、これこそが交流なんだと思うよ?」
「どんな外交よりも効果あるんじゃねーか?」
「サフィって、どこに行っても楽しく生きていけそうだよねえ。また何か約束してたでしょお?」
「帰りに寄れよ、って声をかけられてたな。あれ、鍛冶屋だぞたぶん」
「え?キース,なんで分かるの?」
「指先がかすかに黒かっただろう?あれは鉄だ。それに、耐火機能のついたエプロンをしていただろう?」

あの一瞬で!しかも馬車の中から!すごい観察力!

「おお!せっかくだ、剣を研いでもらってはどうだ?」

オルガ団長、自分こそが見たそう。すんごい目がキラキラしてる。

満場一致で帰りにガルボの店に寄ることになりました。


一応、俺たちを囲むようにして警護してくれてた軍のみんなにも「お待たせしてごめんね」って言ったら、逆に感謝されちゃった。

「外からのお客様にあんな風に面と向かって褒められることはあまりありませんからね。職人には何よりの褒美なんです」
「治療までしていただきありがとうございました。あの嬉しそうな顔、見ました?最高ですよ、ゲイルさん!」

王城近くでいろいろしちゃったけど、みんな笑顔でよきよき。





余談だけど。あの海軍さんたちしっかりやってくれてたみたい。高名なお医者さんが来るって知ってたもん!
計画はじゅんちょーですぞ!
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